明日の塔の夢
1%後
ドレホ🥗
ドレークが死んだ後、なんやかんやで海賊団に戻ってるホーキンス🥗です。
題材が題材だから地獄
白いカーテン、子守唄、優しい布、涙を拭う三日月、明日、明日の夢、明日の彼女の夢、明日も夢を見る。
天国、地獄、黄泉、人の終わり、墓もなく棺もなく、無かったことになった生きた証、知っている。知りたくないと、心から思う。
まだ心の中では生きている。
まだ生きている。
ウェーブの髪はなだらかに揺れた。無慈悲な海風が肌に恐る恐る触れて、そそくさと逃げ、振り返ることなくそのまま遠くへ。
あなただけが支えだった。
椅子に座って青い空の中に溶け込むホーキンスの姿を、船員の一人は遠目に心配そうに見て、そして、耐え切れず下を向く、己の不甲斐なさを罵るために。誰も彼も、船長が船長としての仕事を果たさないことに不満は無く、ホーキンスの身を案じ、そして自らに出来ることを果たさんとしている。
ホーキンスはその細い手を、顔を寄せ、涙で潤した。時間が止まり、繰り返し、何処でだってそうして、ホーキンスは目覚めた頃から、今に至るまではらはらと悲しみの雫に浸して、すなわち、ホーキンスの心は現在からの逆行を試みている。悲しいことに、それが出来る人間は少なくとも、この船内に居ないことが分かっていた。船員達はそれを知っても、知らずとも、ただ彼女のために動き続けている。
痛みの中に体温のようなものを、微かに感覚として拾い上げた彼女はうっすらと目を開け、ドレークの姿を見た。ドレークは脇目も振らず、ホーキンスをその胸に抱き、ふらりふらりと今にも崩れそうな足を進めていた。どうしてあなたが、と、声を出すことはおろか口さえ動かないホーキンスは、疲労に思考までも堰き止められ、再び眠りについた。
海賊を助けていた、愛する人を助けていた、自分の命よりも目の前の命が消えることが許せなかった。生きてほしい、確かに生きることは地獄だ、それでも、2年前の不可思議な生命力に溢れていた彼女の姿を追想すると、どうか、どうか、お前だけは、と。変わり果てた彼女を、それでも自らを保とうとしていた姿を追想すると、どうか、どうか、その努力だけは……、
「ホーキンス……お前は、必ず報われる。だから今は……今は耐え忍んでくれ……生きろホーキンス。たとえおれが死んでも、お前だけでも……」
生きてくれ。
「ドレーク」
濡れに濡れた手が見える。確かに、聴こえた。ホーキンスは立ち上がった。闇に堕ち続けていると思われていた空は、青かった。
「私……」
青い。
「どうして」
涙が落ちる。ホーキンスの耳に、ひどく現実めいた海の音が入って、
「それでも、私は生きるのね」
私が死んで、ドレークが助かる。その方がずっと良かったのに……と、確かに思い続けた、どうしようもない後悔。彼女は今、その思いが彼のためにもならない、と気づく。その瞬間、その空、青い空は本当に明るく、
「ドレーク、ありがとう」
ホーキンスは眩しげに目を細め、太陽の光で煌めく涙をまた落とす。だが、それ以上はもう無いだろう……。
鳴き声と共に、彼女の船を渡り鳥が1羽、通り過ぎていった。