新時代の誓い
ルフィは小船に乗って漁に出ていた。釣竿の糸を海に垂らすと楽な姿勢で待つことにした。
ゆらりゆらりと心地よい波に揺られルフィの瞼は重くなり…
『五億で買うえ〜』
『もうお前はいらないえ〜』
『…天竜人は…この世界の神に等しい…!!』
小舟に大きな影が落ちる。海王類が大きな口を開け小舟を飲み込もうとするが…
「……失せろ」
ルフィが一睨みすると海王類は急いで水中に潜って行った。
「ハァ…嫌なモン思い出した…覇王色を使ったせいで魚もいなくなっちまったし…帰るか」
ルフィは釣竿を片付けると小舟を漕いだ。
「ルフィ〜おかえり〜」
港に着いたルフィを出迎えたのは喜色満面のウタだった。
「えへへ…まるで夫婦みたいだね、私たち♡」
「いいとこ兄妹だと思うぞ」
「むぅ〜!」
ウタは膨れるが、機嫌を治すとルフィに抱きつく。
「ルフィ〜遊んでよ〜」
「…赤髪と遊べ」
「だってシャンクス達酒場にいてつまらないもん」
「また昼から飲んでいるのか…」
ルフィは酔っ払ったシャンクスの顔を思い浮かべて肩を落とす。
「しかたねぇ…ウタいい舞台教えてやる。おれのお気に入りの場所の一つだ」
「それってマキノさんも知らない…?」
「?ああ。誰にも教えてないからな。ウタが初めてだ」
「!そっか…えへへ♡二人だけの秘密ってことね♡」
「あーそうそう」
ルフィは古ぼけ蔦の這った風車の中に入る。
窓を開けるとそこから水平線と夕陽が見えた。
「……」
「ししし、どうだ?」
「…私の舞台はここにある…」
二人は一時の間静かに夕陽を眺めていた。
「決めた!私は世界を回ってたくさんの曲を作って、最高のステージと私の歌で世界を幸せにする。」
「私は新しい時代を創るの!」
ウタは振り向いてルフィに宣言する。
「その時は夫として私の隣で一緒に見届けてね♡」
その時ルフィの頭によぎったのは子供の頃夢見た自分の“夢の果て”と残酷な世界の現実だった。
「結婚はしねェ」
「もう!」
二人の姿を夕焼けが照らす。ウタの姿をルフィは見つめていた。
(きっとこれから先お前はいろいろな奴と出会う。お前が新時代を作る時、隣には一度諦めたおれなんかより相応しい奴がいるだろう。それでも、隣にいなくてもおれはお前を守り続ける。それが…おれの“誓い”だ)