新時代がやってきた
「ビンクスの酒を~・・・ってあれ?」
私はいつも通り海岸を散策していると一隻の船がやってきた。
「あれって・・・もしかして!?」
私はいそいで船場へと駆け出す。あの船は新聞で見たことある。太陽とライオンを混ぜたかわいらしくも凛々しい船。
そして、麦わら帽子をかぶった海賊旗。
「ルフィー----!!!!! 久しぶりー--!!!」
私は大手を振りながら船を出迎えると、船から一人の青年が下りてくる。
「うん? ウタ? ウタじゃねーか!! どうしてここに!?」
私たちはお互いに抱き合い再会を喜ぶ。
「いいじゃん、いいじゃん。そんなことは! それよりもルフィ、海賊王になったんだっておめでとう!」
私にとってルフィが大成したのはやっぱり嬉しいことだ。シャンクスのお気に入りが私じゃなくてもルフィには関係ない話だし、何よりも今は純粋にルフィを祝福したい。
そうやって抱き合っていると、ぞろぞろとルフィの後ろからいろんな人たちがやってきた。最初に目についたのはロボットにたぬきさんに骨!
「・・・骨? どうして骨がいるの? あっ、もしかして失礼だった?」
「しししっ、面白れぇだろ。俺の仲間のブルックだ!」
「へーっ、面白い! ごめんなさい、ブルックさん。それと初めまして、私はウタ! ただのウタだよ!」
そういうと骨の人は笑いながらも私のことを快く受け止めてくれた。予想通りルフィの仲間は素敵な人ばかりだった。
・・・写真や映像でしか見たことないからどんな人たちかドキドキしていたけど、本当に気のいいたちだ。
「それよりルフィ、私と久々にあったんだし勝負しない? ゲームはチキンレース!」
「いややらねぇよ。子供じゃねんだ、昔みたいにはならねぇよ」
「・・・っ、へー、負けるのが怖いんだ、ルフィ じゃあ仕方ないな、183連勝は変わらず私のものね!」
「なんだとっ! 183連勝はおれのほうだ!」
「なによ! じゃあやる気?」
「望むところだ!」
「「じゃあ勝負!!」」
そこからは本当に楽しかった。相変わらず私の罠に騙されて犬にかまれたり、じゃあ今度はレースしようとなってルフィには走ってる途中に違う方向を教えたり、大声対決もしようとしたけどルフィに「それはお前が絶対勝つじゃねぇか」って言われたので、勝負にならなかった、残念♪
「あーっ、疲れた! やっぱり私のほうが強いよルフィ! まだまだだね!」
「ちげぇおまえがずるばっかしてるだけだ!」
「でたっ、負け惜しみ~」
両の手をあげてルフィをおちょくる。こうしていると本当にフーシャ村で遊んでいたころのようで本当に楽しい。
エレジアだとこういうこともできなかったし、ルフィには感謝かなぁと思っていると、
「なぁ、ウタ・・・」
「あっ、そうだ、ルフィ! 紹介し忘れてたけど、私にもねルフィ見たいにたくさんの仲間がいるんだ! 紹介するね!」
「ほんとうか!? なんだよ、それ先に言えよ!」
「へへへ、ごめんね、ルフィ。ちょっと忘れてた。さっそくお城にいこう!」
そういって私はルフィの手を取りエレジアの城まで一直線に向かった。
エレジアの城は豪華絢爛で埃一つない夢のような場所、建物の中は全自動で動くし音楽も優雅なものが流れてる。それをルフィに見せたら「すげぇな、ウタ! こんなところ住んでんのか!」と素直に喜ばれた。
それから私は私の仲間を紹介した。剣士に航海士に狙撃手にコックにお姫様に医者に考古学者に船大工に王子様に科学者に船の操縦士に・・・ルフィの仲間たちに負けないような多種多様な人たちがエレジアの城でルフィとその仲間たちにおもてなしした。
そして海賊へのおもてなしといえば…
「やっぱり宴だよね、ルフィ!」
「おう、ウタ!」
そうして私たちは再会を祝した乾杯をし、一夜を共に過ごした。
ルフィは変な腹太鼓したり、仲間たちと一緒に歌ったり、とても楽しそうに見えて私としてもとても満足だ。
「ねぇ、ルフィにみんな! ここは楽しいでしょ! 居たいならいつまでもいていいんだよ!」
そういうとみんな私の申し出とともに新たな祝杯をあげ、私はいっぱいぐいっと飲み物を飲み干すと歓声が上がる。
「いやー、いい飲みっぷりだ」「さすが、ルフィの幼馴染!」とみんなが囃し立てくれてとても気分がいい。
やっぱり他にも人がいるっていいな。特にルフィがいてくれるのはすごくうれしい。一生来てくれないって思っていたから
そうして私は踊るようにバルコニーにでて夜空を眺める。あぁ、こんな日がいつまでも続くといいな。そう思いながら私はもう一杯飲もうとして・・・
「なぁ、ウタ。おまえ、シャンクスとは会えたのか?」
いつもこの一言ですべてが破壊される。
「……別にいいじゃん。シャンクスのことなんて、私には関係ないことだよ」
「でもよぉ・・・」
「でももなにもない! シャンクスは私を捨てた! ただそれだけ! ウタワールド、全機能停止!」
そういうと目の前の幼馴染は音符で磔になり、あれほど騒いでいた声もすべて消えてなくなる。
「・・・・・いいじゃん。私にはこれしかないんだから」
そういいながら幼馴染の『偽物』を睨みつける。
そうこれはすべて私がウタワールドで作った偽物。私には仲間なんていないし、綺麗なお城もないし、ましてやルフィ達は最初からエレジアには来ていない。
単にこうしているのは私がこうだったならいいなと思ってウタワールドで作った仮想現実。
仮想現実でもせめて、ルフィだけは本物に近い存在にしたいと思い色々と組み上げていったのだが、常にこうなる。
私がシャンクスのことを避けようとしてもこの幼馴染は必ず聞いてくる。
「……当たり前だよ。ルフィが知るわけがない。私がシャンクスに捨てられたことなんて、ルフィが知ってるわけないのに…何やってんだろうね、私」
魔法は終わり全てが解かれる。
そこに残ったのは崩壊した建物が立ち並ぶいつものエレジアの光景が寂しく残っているのみだった・・・