"新時代"

"新時代"


「将来の夢はなぁに?」


 子供達に聞くと、様々な答えが返って来る。



「え?もちろん世界一のアーティストだよ!絵も彫刻も全部極めて……歌の腕前はもちろん、ママを超えるくらいになってみせる!」


「父ちゃんみてェなすげェ人になりてえ! ……具体的にはどんな職業になるかって?う〜〜〜ん………それはまだわかんねぇ!」


「かいぐんになって、こまってる人たちをたくさん助けたいな!コビーさんみたいな"えいゆう"になれたらうれしい!」


「このよのぎしきせいは……だけど、さいきんは、色んなものがたり、かいてみたいかな、って…思ってる………にへへ」


「おんがくかになって、いろんながっきをえんそうしたいな!ゆくゆくは『おんがく界のまおう』って呼ばれるんだ!」


「んっと……ねーたんやにーたんたちみたいな、すごいひとになる!」



 みんな、キラキラした顔で一生懸命話してくれる。

 愛する我が子達が、自分の将来に明るく夢を抱く…何とも微笑ましく、母として凄く幸せな気持ちになる。






……だが同時に、暗い気持ちにもなる。


 ミライが能力を入手した頃。前任者の所業を知り、深く傷付き、そこから立ち直って新しい夢を見つけた時にも抱いた気持ちだ。


 私は、嘗て世界中の人達と共に死のうとした。

 当時の私は、エレジアで自分のしでかした事や境遇の辛さからとにかく辛さから逃げ出したかった。が、同時にファンの皆にも何かを返したいと思った。

 考えた結果が、私の『ウタウタ』の力を利用した『新時代計画』だった。自分が死ぬ事で、私の思った事が何でも叶うウタワールドにみんなを閉じ込めようとした。


 だが、たくさんの子宝を授かった今、過去の自分のしでかした事が如何に愚かだったかが分かる。


 私は、何よりも大事な我が子達が抱いた夢を、この手で潰そうとしたのだ。

 もし私が死んでいたら、ミライ達は生まれず、夢を見る事すら出来なかった。拾った子であるムジカは……分からないが、少なくともライトとララには出会えず、ずっとひとりぼっちのままだったかもしれない。


 我が子だけじゃない。当時、ライブに参加してくれたファンの人達の中にも、同じ様な夢を抱いた子供が多くいた筈だ。私は、そんな子供達の夢を全て奪おうとした……それが救いになると勘違いして。とんでもない大馬鹿者だった。



 ……だが、そんな私の愚行は、最愛のルフィとシャンクスが命懸けで止めてくれた。


 ボロボロになった私の身体はシャンクス達が、心はルフィ達が救ってくれた。

 その結果、昔からは考えられないくらいの幸せを手に入れる事が出来た。かけがえの無い宝物………我が子達を6人も授かる事が出来た。


 今でも、何て事をしたのだろうと、罪悪感と後悔に押し潰されそうになる時がある。


 だが、幼馴染であり、恩人であり、最愛の夫であるルフィが、そんな私を全力で愛してくれる。

 子供達も、みんな私とルフィに懐いてくれている。

 父であるシャンクスも、私達の事を気にかけてくれる。

 家族の愛に触れる度に、幸せで心が満たされて行く。


 私に出来る事は、そんな宝物である子供達の幸せな将来を、ルフィと一緒に守る事だ。

 その為にも、私は家族と共に幸せにならなければいけない。

 ルフィが作った"新時代"で……



ミライ。

マスト。

ライト。

ララ。

ムジカ。

セカイ。


 あなた達は、私とルフィの何にも変え難い最高の宝物だよ。


 頼りないママかもしれないけど、あなた達の幸せは、パパと一緒に守ってあげるからね。



 だから、心ゆくまで"新時代"を楽しんで!



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