新しい日々

新しい日々


マキマの訪問から5日後。

朝早く、公安の迎えと共にアキは出ていった。デンジは寝直す気にもならず、アキが用意してくれた作り置きを温めて朝食を済ませる。

検査の結果、特に異常な点は見つからなかった。他の魔人とアキは同様の存在である、としかわからなかった。

「なんか心当たりないのかよ?」

「いや…わからん」

「ふーん、そっか…」

検査結果を聞いたデンジはアキに尋ねる。秋田県に現れた銃の悪魔との戦闘にはマキマも参加していたらしい為、彼女がアキに何かしたのかもしれないとデンジは疑っているのだが、確信は得られなかった。

アキが彼女にした頼みは、デンジ達も聞いている。双方とも配置転換には消極的で、パワーは地味そうな仕事などやりたくないし、デンジは後方勤務を果たす自信がなかった。

それから数日、アキは家から出ない生活を続けた。姫野は…銃の悪魔との戦闘で亡くなった。

「ふっ…ふぅ…ぐぅううぅ…」

デンジ達の目がない間は、気持ちが緩んでしまう。姫野の遺品はデンジ達の目に入らないよう、自室の奥にしまってある。

アキは家事の合間に、頭の銃身を引っ込められないか色々試していた。この銃身をどうにかして隠さないと、外出できない。帰ってきてからの買い出しは、デンジ達に任せきりだ。

銃身を押し込む、逆に引っ張ってみる。いっそ切断してみるかとも思ったが、家庭内で見つかる刃物程度では傷もつかない。デンジに頼んでみるが、断られてしまった。

「デンジ!!」

「なんだよ、でけえ声出すなよ」

ある晩、夕食後にドラマを見ていたデンジとパワーのもとにアキが走ってきた。珍しく興奮した様子だ。

「頭の銃身が引っ込められるようになったぞ!」

「はっ……あぁ!?」

アキの言う通り、頭の銃身が短くなっていた。伸びたイメージを描き、意識を統一する。頭部の銃身が伸びる。

「「おぉっ!」」

縮んだイメージを描き、意識を統一する。銃身が縮む。

「やったのう!アキ!」

「これなら外、出られるじゃねえか!」

アキが公安に報告すると、確認の為に施設を訪ねることになった。以前よりも迎えの来る時間は遅く、3人で朝食をとった。

久しぶりにアキが出勤すると、マキマからマスクを渡された。暴力の魔人とは異なる純粋に顔を隠すためのもので、銃身を縮めている状態なら着けられる。口元が開いているため、着けたまま食事がとれる。

「あ!いいな〜そのマスク!」

案の定、すれ違った暴力の魔人はアキの仮面を見ると羨ましそうな反応を示した。銃の悪魔討伐作戦の戦友である。

「聞いたぜ〜人間の意識が残ってるんだって?超レアじゃん」

「まあな…」

「色々大変だろうけど、気楽にいけよ。死ぬところまで行く気ないなら、自分いじめてもキリないしさ」

暴力の魔人はアキを気遣った。彼が乗っ取っられた…否、乗っ取ったのは世界中に恐怖された銃の悪魔。公安にも恨みを持つハンターは多くいる。アキ自身を含めて。

ある日、マキマがアキの新しいバディとして天使の悪魔を紹介した。知らぬ仲でもなく断る理由もないので、アキは天使と組む事になった。

「よろしく。魔人になったのは聞いてるよ」

「…言っておくが、給料分は働いてもらうからな」

「え〜…いきなりそれ?」

アキは武装を天使武器の刀に絞った。

結んでいた契約は全て切れたし、銃の悪魔の力を使ったらパニックになりかねない。また、必要もなかった。

人外の膂力と俊敏さで間合いを詰め、切り捨てるだけで戦闘は終わる。アキはデンジの戦闘スピードに足を踏み入れることになった。

「悪魔は処理しました!みなさんは血や肉に触らないよう、お願いします!」

バディになった天使は怠け者で、パトロール中も休憩に入った途端に動かなくなり、アイスを食べ続けている。アキはやんわりと態度を注意するが、効き目がないと判断すると、自分も煙草を吸い始めた。

銃の悪魔討伐戦が終わった為、アキの悪魔狩りに対するモチベーションは自覚できるほどに落ちた。


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