斬魄刀異聞編 『汞一文字』
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「なんで子供の面倒見なあかんのやろ...一応囚人扱いなんやけど」
「貴方の所の上が言っている事ですし そもそも監視するのは私であって貴方ではありませんわよ」
現世から藍染とギンの戦闘や受け答えの証人として召還された翼だったが書類を書いたり答弁をしている内に外で何やら事件が発生したらしい
「それにしても総隊長が行方不明とはえらい大変そうやね」
「総隊長さんをどうこうできるとなると...相手は余程の策略家か力を持った人物なのでしょうね」
そんな事を話しながら軽く何かをお腹に入れるために道を進む
「...アレ君の知り合い?」
「いえ 知らない顔とメイクですわね...爪が長いにも程度がありますわよ」
二人の前には白を基調とした爪が異様長い男が立っていた
「虎屋翼 市丸ギン...君たち二人に用はない 私は斬魄刀を開放しにきただけだ」
「それやったらここ来ても意味ないんやない?」
ギンは現在斬魄刀は取り上げられているこの場に斬魄刀は無いはずだ
だが男は無言で手を翳す 虎屋翼の方へと
「我が声に答えろ...『全てを見よ 汞一文字』」
男の声を受けて翼の持っていたドスはみるみるうちに姿かたちを得ていく
「声には答えたぞ "斬魄刀"」
ギンも翼も起きた事が何なのかすらよく分からず驚くしかない
「汞一文字お前にはこれから...」
「"斬魄刀"今私がしたいのは斬り合いだ 話ではない」
そういって刀を抜き斬りかかろうとして足が捥げて汞一文字はこけた
「千年だ...お前は千年の長い間に名を呼ばれず身を切り詰められた上で新たな皮すら被せられていた 万全に戦いたいというのなら手を」
「成程 そうか...斬り合っていればその内に研がれるだろう」
それを聞いて溜息をつき手を翳す村正...汞一文字は先ほどとは違って押し黙り翼たちに刀を向ける
「この手合いには困ったものだ お前たちに対処は任せておこう」
「どーなってるんですの...?」「気を引き締めんとあかんよ 翼ちゃん」
普段ならいつも手元にあるドスが今手元にはなく敵対する 特異な状況にいまだ理解が追い付いていないが翼とギンは応戦を始めた
やはりというべきか汞一文字の動きは鈍い だが変幻自在であり攻撃範囲も広く鬼道を主体に支援するギンと弓や水鉄砲で応戦する翼は攻めあぐねていた
「...良い戦いぶりだ "人間" その中でも私を常に持つ者よ」
ボロボロになりながらも汞一文字はどこか上機嫌に感じすらする
だがその戦いは唐突に終わりを迎える
一進一退を続けていた汞一文字は一太刀で切り捨てられた
「どうにか隙はつけたようですね」
「なる...ほど "死神" お前に斬られたなら私が倒れるのも当然か...」
流石は四番隊とはいえ隊長格と言った所か卯ノ花隊長が助太刀し事なきを得た
翼は久しぶりに会えたことに喜び ギンは苦笑いをした
だが翼に待ち受ける困難はこれからさらに増していく...主に卯ノ花隊長のスパルタトレーニングによって...!