数学の質問(ビワちゃん+タイム先生)
「うーん、この問題はどうしてこの答えなんだろ」放課後、ビワは1人で教室の机に向かい、数学の問題集とにらめっこしていた。今日はプロレスサークルの活動はない。STCまでの時間はまだある為、授業の復習をしていたのだ。
「分かりそうなのは……そうだ、ピーニャくんに聞いてみよっかな」ビワはスマホロトムの電源を入れ、ピーニャとの通話を試みた。
ロトロトロト……ロトロトロト……
『おかけになった番号は、現在電話に出れないロト……』「……そっか」
いつも勉強で頼れる彼は、今は無理だ……ビワは決心をした。「タイム先生に聞きに行ってみよう。ちょっと緊張するけど……!」ビワは足がすくみそうになるのを気合で立ち上がり、問題集とノート、シャーペンを持って、教室を出た。
職員室の扉の前。ビワが勉強を聞きに来る目的でここを訪れる事は初めてのことだった。心臓のすばやさがぐぐーんと上がるのをリアルに感じる。深呼吸してからノックをして扉を開く。「失礼します。〜年〜組、ビワです。タイム先生はいらっしゃいますか?」「あらビワさん、よく来てくれたわね。いらっしゃい。」タイム先生は入り口の方を見て、優しく微笑んだ。
タイム先生が嬉しそうな表情で歓迎してくれた事に、ビワは少し安堵した。ビワは入室し、タイム先生の机へと向かった。「失礼します」「はい、今日は何かしら?」「この問題がどうしてこの答えなのか分からなくて」「どれどれ……?いわタイプのテラスタルポケモンが、威力80のいわタイプの技でひこうタイプを攻撃した時の威力を答えよ、ね」
「まずいわタイプはひこうタイプに効果ばつぐんなので威力は2倍です。そしていわタイプのポケモンが同じタイプの技を使ったので威力はさらに1.5倍、かけ算して3倍になります。だから80×3=240だと思ったんですが、答えを見ると320って書いてあったんです。これはどういうことですか?」
「そうね。まずビワさんの考え方、問題文から必要な要素を順序立てて整理して計算出来ているわね。熱心に勉強されてる事が分かる、とてもすごいことよ!」「……ど、どうも」「タイプの相性とその倍率もちゃんと覚えられている、素晴らしいわ!」「あ、ありがとうございます!」「ポケモンが自分と同じタイプの技を使う時に威力が上がる事もちゃんと把握してるわね!」「はい……ですが、計算はどこが違うんです?」
「それはね、この『テラスタル』の部分。」「はい」「ポケモンが同じタイプの技を使った時、威力が1.5倍される事も間違っていないわ。でもね、ポケモンがテラスタルすると技の威力は1.5倍ではなく、なんと2倍になるんです!」「……ああ!」「そう、だから2倍×2倍で4倍、80×4=320になるんですよ。」
「なるほど、やっと理解できました。ありがとうございます!」「ビワさんの疑問がちゃんと解決して良かったわ!」「はい!では、失礼します。」「はい、またね。」ビワは職員室の扉を閉め、安堵のため息をついた。質問しに行って良かった。そして、先生にあんなにたくさん褒められた事が初めてで、嬉しかった。
「また数学で分からない所があったら、タイム先生に聞いてみようかな」ビワは足取り軽やかに、教室へと戻っていった。