敗者の理論
1
俺は日番谷連れられて現世に来た死神とタスクと共に浮竹さんと井上の事について事の仔細を聞いていた
「井上織姫は破面側に拉致若しくは────
既に殺害されたものと思われる」
浮竹さんの言葉に口が碌に動かねえ...ルキアが叫ぶ声が聞こえたがそれも明確に聞き取ることが出来ないほどにショックだった
「解ってる 俺だってこんなことは言いたくない
可能性の話をしているんだ!情報によれば彼女は破面の襲撃を受け その後破面と共に姿を消した────」
そうして動揺と格闘しようやく自由を取り戻した俺の口が開いた
「ふっ... ふざけんな‼ 証拠も無えのに死んだだと⁉ 勝手なこと言ってんじゃねぇ‼」
井上が治療してくれた腕を見せて浮竹さんに叫ぶ
「俺は昨日の戦いで手首に大けがをした‼現世側の誰も治せなかった傷だ!
それが朝起きたら跡形もなく治ってた‼ ここに井上の霊圧が残ってんだよ‼」
...そうだだから大丈夫だ まだ助けられるはず
「これでも まだ井上は死んでるって...」
「そうか… それは残念じゃ」
「…残念?どういう意味だよ…⁉」
理解が出来なかった
一体爺さんはどういうつもりでそんな事を
「確かにおぬしの話通りなら井上織姫は生きておることになる しかしそれは同時に一つの裏切りをも意味しておる
もし拉致をされたなら 去り際におぬしに合う余裕などあるまい」
「即ち おぬしの傷を治して消えたということは
井上織姫は自らの足で
破面の許へと向かったということじゃ」
「バッ...」
「ふざけるな」
井上がそんなことを...爺さんに反論するしようとして俺が恋次に止められたのと同時に...タスクが静かに呟いたのが聞こえた
タスクが俺を映像を映し出しているよくわかんねえ機械の正面から押しのけて爺さん捲し立て始めた
「井上さん...井上織姫が私たちを裏切り破面へついた?ここまで堕ちたのか死神は」
「よせ...虎屋翼 まずは総隊長の話を聞いてから」
「貴方たち腰抜け共の話など無用!己の弱さを見ずあまつさえ彼女を貶める者共の話など聞きたくはありません!」
そうだ...腰抜けってのは置いておいて井上を助けるためにも俺たちは向かわなきゃならない
「そう焦るなよ...山本総隊長 それではこれより日番谷先遣隊が一
六番隊副隊長 阿散井恋次 反逆の徒 井上織姫の目を覚まさせる為
虚圏へと向かいます!」
恋次が俺と翼より前に出て井上を助ける意思をみせてくれた
だが喜んだのも束の間
「ならぬ」
「破面側の戦闘準備が整っておると判明した以上 日番谷先遣隊は全名 即時帰還し尸魂界の守護についてもらう」
ルキアが爺さんの言い放った指示に難色を示したが爺さんはそのまま続けた
「いかにも 一人の命と世界の全て 秤に掛ける迄もない」
ここまで言われて...タスクが刀を抜いた
「恋次とルキアに免じて聞いていればなんですか!井上さんが破面側についた理由など少し考えれば分かるでしょう…!」
日番谷が斬魄刀に手を置き恋次はすぐさま翼の腕を抑えた
「私たち全員が『弱い』からだ‼ 私たちが弱いせいで彼女は私たちを人質に取られて破面につかざるを得なかった」
「随分と断定するのう...虎屋翼」
「当たり前でしょうが!第六感で確認するまでもなく あの子は戦いを好まず 自らの天秤に自身の事と死神の命や現世の人間の命をかける事ができる人間だ!」
画面の先では爺さんは凄んでいてこの部屋にいる奴ら全員が戦いが勃発する危険性を認識した
「山本元柳斎重國 今の貴方は私にとって敵だ
弱く 醜く 敵を恐れ 守るべきものに守られた挙句 敵味方も分からぬ敗北者共
たとえ貴方自身が止めに来ようと貴方を殺して藍染の下から井上さんを連れ帰る」
「よせ...それ以上は本当に抜かなきゃならなくなる 井上織姫を助けに行きたいならこれ以上問答をするのはやめておけ」
日番谷が冷汗を滴らせながら翼を制止する
タスクは刀身を青く光らせドアをぶった切って外へと走り出していた
その後白哉と剣八が来てルキア達を連れていき...俺がたとえ一人でも助けに行くと言ったがそれすらも爺さんは止めた
「一護...済まぬ」
ルキアの声が最後に響いて死神達はこの部屋から全員消えていった
「そういや...タスクを止めねえといけねえのか」
俺はどうするべきなのか 項垂れながら考え続けていた