故郷

故郷


※現パロ

※ニセルフィがクズ

※ニセルフィがモブにクソデカ感情を抱いています

※モブの性別・容姿不明にしてますが男として読むと少し中性的に感じるかも

※モブの年齢18~19 ニセルフィ20代

※モブの個性:田舎出身、文系、料理できる、愛されて育った

※ぬるいですがエロあり

※あほエロじゃないガチのレイプ描写あり

※ニセルフィ×モブ♀ ニセルフィ×モブ♂ 読み方によってはモブ♂×ニセルフィの逆レでもギリ読めるようにしています



夜更けにインターフォンが鳴ってすぐ、「酔っ払いの仕業だな」と断定するくらいには、人間関係が終わっていた。セフレだったらよかったけど、あいにく先月に切らしちまったんだよな。とりあえず、自分の部屋も分からないくらい前後不覚なら、おれが財布の中身抜いたっていいよな?と少しの期待を胸に扉を開けると、そこにはガキが縮こまっていた。


それがあいつとの出会いだ。春だった。


「すみません あの自分、隣に越して来たものです。鞄を学校に忘れてきて、カギも携帯も財布もその中で…どうしたらいいか分からなくて」

「あー…おれの携帯で管理会社に連絡するんで」

「ありがとうございます…!!」


あんまし覚えてないが電話は繋がらなかったはず。だからあいつを一晩泊めるハメになったんだ。知らねえ男んちですぐに寝る肝の強さが印象に残った。寝息を聞きながらおれは、こういう人間は施しを何倍にも膨らませて返すタイプだと直感的に思った。


そして、あいつが段ボールを抱えて再び自宅を訪ねた時、それは確信に変わった。


「地元のお菓子とお米です。あっ気にしないでください これ 自分の分じゃなくて、母が”受けた恩は何倍にも返しなさい”って あなたのためだけに送ってくれて 挨拶もまだ済ませてなかったですし…そうだ、嫌いなものも聞いてなかった…いらないものがあれば遠慮なく言ってください!!」


近年稀に見るカモだな、慌てて帰っていく背中に、心の中でそう呟く。


いまいちパッとしない菓子折りの製造元は聞いたこともない村だった。甘ったるくて酒のつまみになりそうもねェ。いかにも田舎育ちだ。愛されて育って、優しくすれば優しさが返ってくるなんて信じて疑わないどうしようもないやつ。


翌日、うちには炊飯器がないから米を突き返しに行くと、

「炊き立てのご飯を食べないなんて信じられない!!よかったらご馳走します ちょうど煮物作りすぎちゃって…」

と招き入れられた。


ほらな そういうとこだぜ お前、おれの年齢も職業も知らねェよな?

都会は怖いぞ 勉強代として搾り取ってやろ。


あいつから見えない角度で手を擦り合わせながら入ると、隣なのに室内がやけに明るい気がした。何だよおれ日当たりが悪い方を引いたのかよ。恵まれた人間ってのは運もいいんだな。


「お出汁の取り方が自己流だからこっちの人のお口に合うか分からないですけど あっ昆布の方がよかったらごめんなさい」

何やらわけのわからない謝罪とともに差し出された煮物と飯からはもうもうと湯気が上がっていた。一口食べて「分からねェ」と思った。いつもの飯は、機械に刻まれたキャベツだとかかさ増しの麺だとか、とにかく何が口に入ってるのかすぐ判別がつくが、こいつの煮物は複雑に溶けていくんだ。ただ、喉を通る熱さが気持ち良かった。



食べながら、あいつはしきりに自分の話をしてきた。むやみに個人情報をばら撒くなって教わらなかったのか?いや、こいつの場合「まずは自分から自己紹介を」とか躾けられてそうだよな。


聞くと、春からここの学校に通うため田舎から来たらしい。予想が寸分違わず的中していてニヤけそうになる。あいつの地元にはまともな娯楽がないせいか読書が好きになって都会まで勉強しに来たんだと。ロジン?だか何だかの「故郷」を目を輝かせて語っていたが、聞く気にもなれず適当に相槌を打った。どうせ「故郷」には山も川もあって最高ですとかそんな話なんだろ。




その日をきっかけに、あいつとの奇妙な共生関係が始まった。ここまで能天気なカモはそういねーから、長期的に利用したかったんだおれは。親切で都会に詳しいオトモダチになってやる代わりに飯にありつくようになった。もっと孤独な都会暮らしに食い込んで骨までしゃぶりつくすつもりで。



まずはここらへんの道と危なそうな場所を全部教えてやった。学校のガイダンス場所が分からなくて遅刻しそうになった時は送ってやった。そのたびにあいつのしょうもない思い出話とセットで田舎の食いもんを貰った。



あいつが鍵をかけ忘れていたのを知らせてやったら「地元ではかけないのが普通」と返された時は気が遠くなった。危ないからかけた方がいいとごく当たり前に説教するとこちらを尊敬の目で見てきた。犬か。


だけどこの時、おれの中で、確かに犬には向けない感情が生まれたんだ。「この世間知らずのガキを引きずり落してやりたい」

同じ安アパートの隣同士で、おれは薄汚く生きてるのに、こいつは人を疑う必要もないくらい恵まれてるなんて不公平だろ?悪意に晒されたこいつはどんな目をするんだろう。そしてその瞳に映るのはおれがいいと思った。散々弄んだ後壊してやろう。そのためなら面倒だって見てやるよ。




梅雨になると、あいつが狭いベランダで家庭菜園を始めたせいでナメクジが大量発生してこっちにまで侵入してきやがった。二人がかりで駆除してやって、流石にキレそうだったが大量の缶詰と料理用の日本酒で許してやった。



ようやく晴れた日、大家に恩を売るため、すっかり伸びたアパート共用部分の雑草を抜いていると、どこからともなくあいつが現れて麦わら帽をかぶせてきた。


「直射日光を舐めたらいけませんよ 意外と似合ってますね麦わら帽子」


そう言うとあいつは隣で草をむしり始めた。普段はトロいくせに妙に手際がいい。「あなたが田んぼの間引きを手伝いに来てくれたらどんなにいいか」と笑いかけられた。勘弁してくれよ、と思った。




夏の夜、ベランダで煙草を吸っていたら横からすすり泣きが聞こえた。「おい」と声をかけると、泣き声は止まったが、鬱陶しい気配は消えなかったので衝立越しに話を聞いてやることにした。「いろいろ忙しくて、帰省できなさそうで」そこで初めてもうすぐ盆か、と気づいた。まあ、ガキが泣いてる時は甘いモンだろ、と冷蔵庫にしまい込んでいたアイスを投げよこしてやった。あいつは途端に「これ!ここ限定のフレーバーだ!地元じゃ買えなかったやつ!!」とはしゃぎだした。安上りでいいこった。




あいつがアイスを、おれが二本目の煙草を、それぞれ咥えてる間なんとなく喋った。花火なんて見えそうもないクソ立地でも、満月は平等だった。あいつは「はなだ色の空とこがね色の月ですね」のようなことを言い出した。おれにはどんな色なのか見当もつかない。こいつらみたいな人間は何でも気取って言わないと気が済まないのか。夜空の月なんて、黒と黄色だろ。煙草はいつもより早く終わった。くそ。




夏の終わりは、バカな学生が最後の悪あがきをしたくなる時期らしい。あいつから「どうしよう 悪い遊びに巻き込まれそうです」と連絡がきたから、おれは開けたばっかりの酒瓶を放り投げて迎えにいくことにした。おれのカモを今さら横取りされてたまるかよ。小洒落たマンションの一室に「従兄弟」だと偽って入るとそこにはただチューハイが転がっていただけで拍子抜けしてしまう。「悪い遊び」なんて言うもんだから薬でもやってんのかと焦ったぜ。



あいつの手を引いて部屋を出る数秒の間に連中の顔を見る。今はまだ全員呑気な学生でいるが、朝にははっきりと「被害者」と「加害者」に別れてるよあの空気感は。そして誰がどちら側なのかは目を見れば何となく分かる。おれのお隣さんはその中でもぶっちぎりの被害者側だった。



帰り道、あいつは「友達、せっかく出来たと思ったのに、失くしちゃいました」と項垂れていた。垂れ下がった尻尾まで見えるような落ち込みようだった。心配しなくたって、最初から友達じゃなかったぜ 今日びお前みたいな真面目なヤツと友達になるやつはここにはいねェ おれも含めてな。



もちろんそれを口に出すことはなかった。その代わり、「ハタチになったら一緒に酒を飲もう」と約束したら、あいつは顔をリンゴみたいにして何度も何度も首を縦に振った。今日みたいなことがあったらたまったもんじゃないから牽制だ。それに、どう見てもまともじゃないおれが急にこんなこと言い出したら、お前みたいなやつはころっと信頼しちまうもんな?


「約束、絶対覚えててくださいね!」と突き付けられた指に失笑した。馬鹿だなあ。おれはあんな呑気なガキどもと違って、お前なんか酒に頼らずともコマせるって意味だよ。




とは言ったものの、秋になると流石にじれったくなってきた。おれはあいつを孤立させるつもりで必要以上に都会の人間の恐ろしさを伝えたが、それが逆効果だったみたいだ。あいつは田舎から出て来たそのまんま、あいつらしく生きておれがどんなにそそのかしても自分を曲げなかった。ついに「なあ、ちょっと早いけど酒飲んじまわねえ?おれ介抱するから」と持ち掛けても「約束は約束ですから」と跳ね除けられた。あいつを汚すのはほかでもないおれだと思っていたのに、自分だけ綺麗なままでいる。ふざけんじゃねェ。


なあ、秋は実りの季節で、収穫するんだろ。「この時が一番達成感ありますね」あいつの話で唯一共感できたことだ。食べるのを我慢して育てて、害獣は追っ払って、散々苦労したのに手に入らないんじゃ馬鹿みたいだろ?


もうすぐ冬になる。年末になったらあいつは今度こそ故郷に帰る。そこで同じような芋みたいなやつらとつるむんだろ。内輪ノリに馬鹿騒ぎしてよ。律儀におれとの約束を守ってるみたいだけどどうだか。年越しの高揚感で酒飲んじまうかもな。結局あいつは故郷が一番大好きで、何も変わらないままおれを置いていくんだ。許せるわけがない。



だから今刈り取る。多少青いがなんだ。時期を待ってもおれのものにならなかったら意味がねェんだよ。インターフォンが鳴る。あの日と同じだ。唯一違うのは、ドアを開ける前から誰だか分かっていること。


今日は珍しくおれの部屋に呼び出した。あいつはただ「珍しいなあ」とでも考えているんだろうな。


あいつはいつもと全く変わらない出で立ちでにこにこと笑っている。なあおれの雰囲気がいつもと違うの分からねェの? 「これ、どうぞ」と古臭ェ風呂敷包みのタッパーが差し出された瞬間、頭の中で何かが切れ、思いっきりあいつの肩をベッドに押し付けた。ぐちゃり。背後でタッパーの中身がぶちまけられた音がする。



「一人暮らしの男の部屋にのこのこ入って、お茶でも飲んでさようならと思ってたのか? おれは今まで気まぐれで見逃してたんだ テメェのばーちゃんじゃねェんだよ」

あいつは恐怖で硬直してしまう。服に手をかけても口をぽかんと開けたままだ。ここまで周りに守られて育つと叫ぶことすらできないのか。笑えるな 故郷の連中の愛情がお前を弱くするんだ。



しばらく身体を”ほぐす”と、あいつも若い人間らしくそれっぽい反応を見せる。そろそろホンバンすっか。おれはどうせ、最初からこいつのそばにいちゃいけない人間なんだ。だからせめて心の傷になってやろうと最悪の初めてをくれてやることにした。


「お前は助け合いを信じてたみてーだけど、おれは最初からコレ目当てだったぜ あ あとお前の話すっげーつまんなかったわ」

あいつの目に涙がどんどん溜まっていく。腰を落としてやるとついに零れた。




そのあと、何回かイカせてやって涙も声も枯らしたあいつはぐったり横たわっていた。濁った目で天井を見つめている。何やらぶつぶつ呟くのでおれは顔を近づけた。恨み言なら聞き届けてやるよ。


「好き、だったんです」


こいつ、学校に好きなヤツがいたのか!そういうことは早く言えよ。ヤってる最中に好きなヤツのこと喋らせてもっと泣かしたかったぜ。まあ全部終わった今それを実感させるのもアリだな。おれはからかってやろうと口を開けたがあいつが話を続ける方が先だった。



「あなたのこと、好きでした。ずっと、優しくしてくれて、おばあちゃんなんて思ってません」



は…?あなたのこと…おれ?ずっと、優しく…??

セックス後の体の火照りとは別に、身震いするような熱が顔に昇っていく。意中の相手がいるのにおれなんかに抱かれた…そんな嘲りが、傷つける手段が、いくつも浮かんでいたが、それは弾けるようにして頭の中をぐるぐる廻るだけで口から出ることもない。なんで?おれなんか、おれのどこが、優しいんだよ…!!ぽかんと開いた口はそのまま渇いていき、さっきまであいつの体を押さえつけ這いまわっていた手は、空中で震えていた。


「一人ぼっちだったんです、こんな性格だし、流行りも分からなくて、つまらない話を聞いてくれたのが、あなただけだったんです」


ぽつりぽつりと絞り出される声が全く耳に入ってこない。おれはこの時初めて、あいつの話を真剣に聞いた。それ以外何も考えず、一音でも聞き漏らさないように集中した。それでもおれのオツムは無力だった。


「帰省したらね、伝えようと思ってたんです。都会に行っても何とかなったよって 優しい人がいつもそばにいてくれたからだよ、って。」


これまでの数か月間が、逆再生動画のように巻き戻っていく。あいつはいつも小難しいことを語ってたし、そこから何か分かるんじゃないかって、手がかりを探そうとしたけど、脳内の画面は無音であいつの顔だけを写していた。いつかぐちゃぐちゃにしてやろうと思ってた犬みたいなツラだけを。





おれには、学歴も教養も、いつでも帰れる「故郷」もねえ。だからこんな時、どうすりゃいいのか分かんねーんだよ。教えてくれよ、だれか。











※このあと「あいつ」を部屋に帰したニセルフィはぶちまけられた煮物を手づかみでもそもそ食べます「ガキのころこうして床から食いもん食って親を待ってたっけ あの時はカップラーメンだったけど」と昔を思い出しながら




※お隣さんはだいぶ前からニセルフィに惚れてしまって、でもなあなあにしたくないから今日本当に告白するつもりだった。何でもない普通の日に、いつも通りの自分で、いつも通りの自分にさせてくれる人に、出会った場所で告白するのってなんかいいな…と思っていた。煮物はニセルフィの表情が一番明るくなったおかずだったので持っていった。郷土料理と家庭料理が融合したオリジナル煮物は地元の祖母しか作れないので昨晩わざわざ電話してコツを聞いていた。祖母は都会で頑張る孫が自分を頼ってくれて、何やら素敵な人がいるらしくて、その人に自分の料理を振舞おうとしていることに何重にも喜んだ。電話を切る前の最後の会話は

「上手に作れるかなあ」

「大丈夫 ばあちゃんの孫なんだから 喜んでもらえるに決まってるよ(お好きな方言に変換してね)」

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