放課後革命
アサ達は悪魔を探して、学校の中を探索する。3人はお互いに自己紹介し、金髪の少女はユウコと名乗った。ユウコは何度かテレビにも取り上げられた怪人、チェンソーマンが好きらしい。
「アサちゃんはチェンソーマン好き?」
「まあまあ…っていうか、普通……」
捜索の途中、アサはクラスメイトの女子達とすれ違い、聞こえよがしに陰口を言われた。フユ達は怪訝に思ったが、アサのことを話題にしているとは思わなかったらしい。
「用事、し、思い出した」
女子達が去っていった直後、アサの指から力が抜け、持っていた刀を落としてしまった。
「え」
「え?」
アサは2人を置いて、その場から歩き去った。陰口をユウコ達の目の前で言われて恥ずかしくなったのか、プライドが傷ついて悔しかったのか。とにかく、2人と一緒にいることに耐えられなくなったのだ。
足早に玄関まで歩き、下駄箱から自分の靴を取り出そうとしたアサは硬直した。
「待って、アサちゃん!どうしたの?大丈夫?」
2人が追いついてきた。
「うわっ……肉だ…」
「え〜…何これウザ…」
少年に助けられた夜から続いていた、アサの期待感が完全に萎んだ。何か変えようと動いても、こんなものだ。大丈夫、人生のうちのほんの3年間。問題のうちには入らない。
大丈夫、大丈夫…念仏のように心の中で唱えながら、裸足で校舎から歩いていくアサの腰を何かが不意に掴んで、身体が持ち上げられた。
「うわっ」
「裸足は絶対痛いって…」
いつの間にかフユが後ろにいて、アサを持ち上げたのだ。流れるような早業で腰と腿の下に手を添えた彼女は、アサを抱えて歩き出す。
「離して、大丈夫だからっ」
「大丈夫じゃないじゃん!」
追いかけてきたユウコも、抱えられたアサの顔を気遣わしげな表情で見つめている。
「今日は送迎つきって事で、家まで案内してよ」
フユはアサを抱えたまま、校門に向かう。
「いやいやだいじょっ、あのイヤ」
「変な噂になる前に帰ろ!」
先頭をユウコが小走りに駆けていき、その後ろをアサを抱えたフユが追いかけていく。少女とはいえ、人1人抱えて走るフユの息は全く乱れない。
フユはアサが住む部屋の玄関前に着くと、彼女を降ろした。
「せっかくだし、上がって行きたいな〜。駄目?」
「ダメダメ、何にも用意してないから!」
「アハハ…じゃ、また明日ね」
アサは2人を見送ると家に入り、静かに扉を閉めた。
家まで送ってくれた2人には悪いが、彼女を取り巻く問題は依然解決していないし、明日からの学校生活は考えるだけで憂鬱だが、生肉に塗れた自分の靴を見た時の不安は既に消えていた。
★
「昨日あの、……ありがと」
昨日より表情が明るくなっているアサを見て、ユウコはにっこりと笑った。
「フユは…?」
「今日はまだ見てないな〜」
「ん…」
「ねえ!今日の放課後さ!3人で街に行ってみない?街の方が絶対悪魔たくさんいるよ!
学校はヤな奴等もいるしね!」
ユウコに気を遣われて、アサはくすぐったい気持ちになったが、拒絶する理由はない。合流したフユも加わり、3人は放課後に街で悪魔を探す事にした。
放課後、たい焼きを食べながら3人は雑談にふける。話題はデビルハンター部を志望した理由に移り、ユウコはデビルハンターになりたい事、親を悪魔に殺されている事を2人に明かした。
「私もっ、私も親に悪魔殺されてるっ!」
「そうなのっ!?フユちゃんは!?」
「私!?私は…親が2人ともデビルハンターで…」
フユは一瞬言い淀んだ後、両親がデビルハンターである事を明かす。志望理由を尋ねられた時、親が健在である事を申し訳なく感じ、一瞬言葉を詰まらせてしまったのだが、2人には気づかれなかったようだ。
「デビルハンター!?」
アサとユウコは声を揃えて驚いた。
「そんな事あるんだ…職場で出会ったの?」
「らしいね〜」
「何て人!?どこに勤めてるの!?紹介して!!写真ある!?」
フユが携帯に保存してある母親の写真を見せると、ユウコは偉人の肖像画を眺めるような顔をした。
「デビルハンターになったらバディ組もうよバディ!…あ、3人組は駄目なんだっけ!?」
「私はいいよ、絶対なるとは言えないし」
「デビルハンターなりたくないの?」
「いや、それがさ〜。母さんは応援してくれてるんだけど、父さんはいい大学行って、大手に就職してくれって。今は様子見」
「そっか〜…あ!デビルハンター部で
もう1人友達できたら、2組出来て、いい感じにならない!?」
「4人目?…ところで、ユウコとバディやるの?」
「え…」
フユに水を向けられたアサは、ユウコの期待する視線に「デビルハンターになれたらね…」と返すのが精一杯だった。
トイレに行っていたユウコが戻ると、3人は悪魔を探しながら街をぶらつく。アサが持ってきた武器は刀、ユウコとフユは斧を選択した。フユの斧は、ユウコの装備より少し大型だ。
建物が密集する一角、飲食店が立ち並ぶエリアから客達がまばらに出てきた。遭遇を予感したアサ達が中に入っていくと、そこには奇怪な人物が1人いた。
レインコートを身に纏い、下半身は骨を組み合わせたスカート状。体長は見た限り、アサと同じくらいか少し低め。
右手に閉じた傘を持ち、左右の目に当たる部分では小さな傘が開いている。石突がアサ達を向いており、持ち手が眼窩に突き刺さっている形だ。
「傘…の悪魔?」
「これで傘じゃなかったら訴えてやる」
「じゃあ、やる?」