放課後探検隊

放課後探検隊


入部試験に臨むアサは、校内を探索する2人の会話に入れなかった。校門での一幕のせいで、男子とこの場にいるのが気まずくて仕方がない。眼鏡の少女と男子が名乗りあった為、アサも渋々名前を名乗った。

「アサちゃんは電ノコ男知ってる?」

「名前だけ…」

アサはクラスメイトの女子達とすれ違った。一瞬、目線が交わる。目を逸らし、黙って脇を通り抜けた彼女の耳に、これ見よがしの誹りがぶつかってきた。

「今の人達なんだろ」

「さあ」

限界を迎えたアサは理由を言い繕って、2人のもとから離れた。下校しようとアサは下駄箱を開けたのだが、自分の靴が生肉に塗れている。だったら裸足で帰ろう、私は大丈夫。

自分に言い聞かせるように大丈夫と唱えるアサを、ユウコが追いかけてきた。裸足で追いかけてきた彼女は、持っていた靴をアサに片方貸すと親指を立てた。

遠慮するアサは押し付けられた靴を片足に履くと、ユウコを追いかける。追いかけっこはユウコの家まで続き、ユウコはアサにもう片方の靴も差し出してきた。アサは断りきれず、ユウコの靴を履いて帰途につく事になった。

「売りにいくのか?」

「……馬鹿?アンタ」

アサは翌日、下駄箱でユウコを見つけると靴を返した。照れ臭そうにしているアサを、ユウコは放課後の悪魔探しに誘った。

「街の方が絶対悪魔たくさんいるよ!学校はヤな奴等もいるしね!」

「まあ…行こっかな」

「よし、やった!」

2人は探索の途中、鯛焼きを食べながら一息ついた。その間の話題は吉田のことや、ハンター部を志した動機について。ユウコはデビルハンターになる為に、ハンター部への入部を目指していると語った。

高卒でも高い給料が貰える事に加え、ユウコは親を悪魔に殺されている。「なんか復讐者って感じでピッタリじゃない!?」と楽しそうにしているのは元々の性格か、或いは暗く考えても仕方ないと考えているからかも知れない。

「私もっ、私も親、悪魔に殺されてる!」

「そうなの!?だからアサちゃんもデビルハンター部に!?」

「うっ…まあうん。そんな感じ……」

ユウコはアサのことを更に気に入った様子だ。もしデビルハンターになれたらバディを組もうと誘ったユウコが御手洗いに向かった為、アサは一人になる。

そのタイミングで戦争の悪魔が、ユウコを殺すよう、アサに勧めた。殺した死体はアサのものになる為、ユウコを殺せば武器にできる。困惑するアサに戦争の悪魔は続ける。

武器にするものの罪悪感が高ければ高いほど強力な武器になる。アサはユウコに好感をもっているから、強力な武器になる。彼女が生活している街は廃墟同然の建物も多く、場所を選べば殺人が露見するリスクは低く済む。

「するわけないじゃん…ナニ言ってんの…?」

「物騒な事ばっか考えて…もっとまともな事思いつかないワケ!?」

アサは必死に頭を働かせて、話題を逸らそうとする。自分に歩み寄ってくれているユウコを武器にさせるわけにはいかない。戦争の悪魔が名前を呼ばない事を取っ掛かりに、悪魔に自分を名前で呼ぶように要求する。

戦争の悪魔にもその考えは筒抜けだったが、悪魔はアサの思惑に乗ることにした。もっと仲良くなってから武器にする方が、より強力になる。

「わかった!じゃあ私の事はヨルと呼べ!全てはチェンソーマンを殺す事の為に飲み込んでやろう、アサ」

「……ありがと。ヨル」

アサは一応、狙いがうまくいって安堵した。こんなに楽しいのは久しぶりなんだから、チェンソーマンを殺すとか、ユウコを武器にするとか、物騒な話題は後回し。

そして2人は建物の奥から飛び出してきた悪魔に遭遇する。コウモリの悪魔は引っ掴んだ人間の腕に食らい付き、欠食児童の如く貪り始める。

悲鳴をあげる人々、動かなくなった犠牲者、コウモリの悪魔の咀嚼音。デビルハンターの現実がアサとユウコに目の前に現れている。ヨルが現れてアサに囁く。

「悪いニュースが2つある。1つは現状の私達じゃあそこにいるコウモリの悪魔に勝つ事はできない」

「もう1つは今わかった事だが、アサが酷く恐怖している時、私は体を乗っ取れないらしい」

「ゆっくり、静かに逃げろ。アサ」

アサとユウコは急いで逃げ出した。その動きに反応したコウモリの悪魔は2人に狙いを定めて追いかける。

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