『接待 橙色の羅針盤(総記の階)』

『接待 橙色の羅針盤(総記の階)』

Part17 - 163-164

ローラン「…………はぁ」

ラケル「あ、ローランさん!お久しぶりです~!ここ最近めっきり顔を合わせなくなったからついに死んじゃったかと思ってましたよ~」

ローラン「俺はお前と二度と顔を合わせたくなかったよ」

ラケル「えー、つれないですねぇ……一緒に高級レストランで食事をした仲なのに。しかも!私が奢ったんですよ!?」

ローラン「そうだな。そのレストランが高級人肉料理店だと後から発覚しなかったらいい思い出のままにできたよ」

ラケル「あれ?美味しくなかったですか?私の知っている中ではおすすめできる店中で五本の指に入る名店の筈ですけど……」

ローラン「よく聞けこのカニバリズム女。俺は人肉が好きじゃない。味とか見た目とかそれ以前に生理的に受け付けないんだよ!俺が何時好き好んで人間の死体を食べたいって言ったよこの(自主規制)!」

ラケル「それは……残念です……アンジェリカさんにも同じ事言われちゃったし、やっぱりお二人は似た者同士ですね……とほほ」

ローラン「は?……おい、ちょっと待て……確かパジョンを初めて食いに行く時にアンジェリカが……アレはお前のことか!?!?!?」

ラケル「?あ、アンジェリカさんと一緒に友達のグレタさんの秘密のレストランに行ったことですか?」

ローラン「このクソ(自主規制)が(自主規制)、(自主規制)(見せられないよ)【規制済み】!!!!!!」

ラケル「ひ、酷くないですか!?人肉料理は私の最高の思い出の味何ですよ!両親が私へ最後にご馳走してくれた、赤くて、柔らかくて、蕩けるような味……でも不思議何ですよローランさん。あの時食べた……お父さんとお母さんの味、他のどんな人の身体を食べても、全然それに届かないんです」

ローラン「…………………」

ラケル「グレタさんのスペシャルメニューを食べても、ねじれの新鮮な生肉を口にしても、あの味には全然及ばない……これっておかしくないですか?私の両親はただの人間なのに、一番……一番美味しかったんです」

ローラン「…………思い出が美化されてるだけなんじゃないのか?」

ラケル「そう!それです!思い出や思い入れが味になったんです!人の肉を食べる上で一番大切なのは調理の工程や、振りかけるスパイスじゃない……愛、愛ですよローランさん」

ローラン「は???」

ラケル「お父さんとお母さんが美味しかったのは私が両親を愛していたからなんです!この結論に至った時、グレタさんも得心したように唸ってました……きっとこれは真理の一つに違いありません」

ローラン「(言葉にならない呻き声)」

ラケル「それでですねローランさん、私貴方のこと友達だと思ってるんです」

ローラン「はぁ、そうですか」

ラケル「でも友達を食べることはいけないことじゃないですか?だから私は敵以外は極力食べないように努めているんです。両親の言い付けもありますし」

ローラン「…………おい、まさか」

ラケル「ローランさん……味見だけなら許してくれますよね?」

ローラン「このキチ○イ女が!!!!!」



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