指輪はどうするか

指輪はどうするか

スレ主◆MwEI06QrZW2k


結婚する時に他の世界では指輪を交換するとルコンに教えてもらったのは結婚してからしばらくしてからだった。

この世界ではそういう風習が無かったがかなりの数の他の世界では有ると聞くと用意しておきたかった……と思ったのだが。


「んぇ?だってわざわざ無い文化を持ち込むのも悪いかなって」


料理とか小物とか家具とかお店とかそういうのを色々持ち込んだ張本人が今更ソレを言うのか?と言いたくなったが我慢した私は偉いと思う。


正直、ルコンの特異な歩みの事を考え悩んでいた。

次の世界に行く時、手持ちの装備を残して次の場所へ行ってしまうらしいがどうせならいつまでもルコンの手元に残っていて欲しい。


「そうなると……可能性があるのはアレだよなぁ」


ちょうどルコンが庭で身体を動かしていた。全身が包帯ぐるぐる巻……ではなく筋肉の流れを模倣するように巻き付けてある真っ黒な布。

私達の魔力を液状化させる体質を利用して加工した布にルコン自身がアレコレと魔術で効果を付与させた特別製。

軽くしなやかで、それでいて衝撃を弾いたり外付け筋肉として筋力を上げたり動きにくい胸を動かないようにおさえたりしてくれる。


ついでにルコンのミルクを使えばちぎれようが欠片でも残っていれば再生成されるのが判明した。……それが彼女が酔っ払い、たまたま現れたモンスターに対して自分を発生源にした疑似太陽と言うべき火球を作り出す自爆技によって彼女の本体である胸の宝石以外が蒸発した際に布も復活する、なんて状況でなければ素直に喜ぶことが出来たのだが。

肉体が消失して復活した後に作り出せる装備は今まで彼女の右腕である銀の腕だけだったことから、きっと持ち越せるだろうと彼女はぴょんぴょん跳ねながら嬉しそうにしていたが……その時は皆で怒った。そりゃもう烈火の如くキレましたよ、とんでもない技を使って半径20メートルの穴を作ったことよりも大切な人が火球に飲まれてジュッと音を立てて燃え尽きる瞬間を見るこっちの身にもなって欲しいものだ!


まぁ、そんな事で彼女自身から作って身につけているものは生成可能とわかったのでその要領で指輪も作ることにした。


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「というわけで出来たのだがどうだろうか?」

「はい?」


座りながら、にゃんにゃごろにゃとお腹を見せているミーちゃんを抱え込んで撫で回しているルコンに指輪を渡す。

革を貼り付けた小さな木箱に入れてある指輪を取り出して、前に聞いた左手の薬指にそっとはめる。


終始ぽかーんとしていたがミーちゃんを撫でる手を止め、自分の左手を眺めて陽の光に当てたりしばらく無言になる。

……大丈夫だっただろうか、何か形状的な所で不備があっただろうか。どんな場所に行ってもデザインとして問題がないようにシンプルな装飾など付いていない物にした。


「前に作った君の布と同じ様に魔力が元になっているから、おそらくそれも持っていくことが出来る筈だけれど……どうかな?」


「……ありがとうココ、こんな素敵な物を作ってくれるなんて思わなかった」


私の人生できっとこの時見た笑顔を忘れることはないだろう。どんな笑顔だったかは……私だけの秘密にさせてほしい。


「ちょっと試すね」


一度自分の胸の宝石の中に指輪を入れて、取り出して、ノータイムでメキャァと音をたてながらかなり頑丈な筈の指輪がひしゃげ、次の瞬間には元の形状に戻っていた。というのが2秒足らずで行われたのは流石に凹みかけた。


「すごい、すごいよココ!本当にありがとう!」


……流石に抱きつきながらすりすりとミーちゃんのような甘え方をしてくると文句を言うことも出来なかった。

自分も混ぜてくれと言いたげけに背中の方にはミーちゃんが後ろ足で立って抱きついてくる。前後を挟まれて動けなくなりながらも幸せだと思うのは紛れもない事実なのだった。



おわり

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