持ち主の名はもう知っている

持ち主の名はもう知っている


初恋の話?俺も話したんだから聞かせろ?

あのな、柱間よ。お前の初恋がミトで初めてうずまき一族に挨拶に行った時一目惚れした話は毎回毎回お前が聞いてもいないのに語ってるだけだろ。


あ?いい歳して初恋の甘酸っぱい思い出もないのか可哀想だと!?オレにだってあるわ!


あれはお前と会う前の話だ。竹取一族と小競り合いをしてた時の話だ。敵の一小隊がきな臭い動きをしていたからオレが偵察に行った。奴らよく見たら綺麗な着物と簪付けた髪も肌も真っ白の子供を連れ歩いてるようだった。状況はうちは優勢だったから一族の姫を避難でもさせてるのかと思ったが様子がどうにも違う。白いのは腕を縛られて無理やり歩かされてたからだ。竹取の敵対一族から攫ってきたんだろうな。もしくは血継限界や血統狙いでより強い子を一族にと攫ってきたか。まぁ月の光みたいに真っ白で綺麗な髪だったから薄暗い森でもよく目立った。このまま放っておいたらろくな目に合わないのは目に見えているし竹取一族に渡ったらうちはにもメリットはないから助けることにした。


近くに寄って白いのを助けるタイミングを見計らっていたんだがオレより先に白いのが動いた。自分で縄抜けしたみたいで髪に挿してた簪で距離を取ろうとしてた。武器は没収されてたんだろうな。それしか武器になるようなもんがなかったんだろ。でもオレより幼い女の子供だ。大人の忍相手に簪一つで応戦なんか出来る訳もない。直ぐに隙をつかれて白い髪掴まれた。長くて綺麗な髪だった。奴ら、それなのに不気味だとか気味の悪い色だとか言うから白いのは歯を食いしばってた。聞いてるオレが不快になるような罵倒だった。あんまり腹が立つからオレが飛び出そうとしたら白いのは奴らの不意をついて森に転がっていた苦無で自分の髪をバッサリと切り落としたんだ。つい最近戦闘があったばかりなのが幸をそうした。白いのの気概にオレは答えてやりたくなって助太刀した。勝敗?勝ってなきゃオレはここにいねぇ。


「誰だか知らんが礼を言う。名は故あって名乗れない」

「別に偵察してたらたまたまお前が捕まってた、それだけだ。礼なんていい」


白いのは名は名乗らなかった。いや名乗れなかったんだろうな。白いのはよく見るとうちは一族でもないのに綺麗な赤い目をしていてうちはの女とは違う顔立ちだった。あれは千手系統だな、案外お前の親戚だったりするのか?扉間の奴と同じ色してたし。物珍しい色してたからじっと見てたら白いのは不機嫌そうに言った。


「なんだ人の髪をジロジロと」

「いや」

「どうせお前もこの髪が不気味とか言うんだろう」

「そんな事ねぇだろ。綺麗だ、月の光みたいで」


なんだそのにやにやした顔は。口説いてねぇ!本当に綺麗だったからそのままの感想を伝えただけだっての!話戻すぞ。


「……そんな事言う奴一族以外で初めてだ。悪目立ちするばかりだから染めてしまおうかとも思ったがそう言われると勿体なくなってきたな」

「染めるなよ勿体ない。せっかく綺麗なのに。言いたい奴には言わせとけよ。それに悪目立ちしたって返り討ちに出来るくらい強くなればいいだろ。お前の気概があれば出来る」

「ふふっ変な奴。でもお前の言う通りだ。私が強くなればいいだけの話だな」


まあ、その笑った顔がな、グッときたというか。……髪もボサボサの散切りなのにそんなの気にならないくらい……可愛いかった。にやにやするな、そんな顔でこっち見るな!まぁ、ひとしきり笑ったあと白いのはオレに簪差し出してきたんだ。


「父上が買ってくれたものだ。売ればそれなりの額になるだろう。命の恩人に礼の品一つもないのはな」

「そりゃ大事なものじゃねぇか!いいのかよ」

「いい。ほらもうこれを付けるには寸足らずだから」

「……」

「それを見る度にきっと今日の事を思い出す。私に恥をかかせるのか?私のためにも貰ってくれ」


で押しに負けて貰ったのがこれだ。女じゃないから正確な価値なんてわからんが中々上等なものなのは俺でもわかった。父親からの贈り物なんだから相当大事なものだろう。もしもう一度会えたら返してやろうと思ってるんだが中々会えないな。せめてあの子がどの一族か分かったらよかったんだが。何、簪よく見せてくれ?別にいいけどよ。壊すなよ。そら。


なんだ、なんだ。いきなり泣き出して。あ?何言ってるかわかんねぇよ。いや泣きながら礼を言われてもよ。本題を言えって!やはりお前は最高の友?はぁ?



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