打算的な愛

打算的な愛





「ドゥリーヨダナは、アシュヴァッターマンのどこが好きなの?」


マスターがオレンジ色の髪を揺らして、期待に目を輝かせてドゥリーヨダナを上目遣いに見る。アシュヴァッターマンとドゥリーヨダナが恋人になったことは、カルデア中に知られている。

“恋バナ”という単語が聖杯から呼び起こされて、ドゥリーヨダナはイタズラっぽく目を細めて言う。


「閨でのことも含めて良いのか?」

「え"っ!?いやいやいや、アシュヴァッターマンに悪いから、エッチなのはなしで!」

「わはは」


頬を染めるマスターを横目で眺めながら、ドゥリーヨダナは形の良い爪を唇に添えて言う。


「そうなあ。……あの美しい髪が好きだな。燃えるような赤で、どこにいても見つけやすいのも良い。闇の中でも輝く宝玉が好き。顔も最高に好みだ。まあ、塵程でも審美眼がある者なら、アシュの顔を好まないはずもないが……」

「メチャクチャ褒めるじゃん」

「指も好きだ。綺麗で、やさしくて。妾様の名前を呼ぶ声も好き。妾様のこと、いつも眩しいものでも見るみたいに仰ぎ見る瞳が好きだ」

「おおう」


甘々の恋バナに、マスターの口元がふにゃりと綻ぶ。こうしてみれば、歴戦のマスターも恋に憧れるひとりの女の子だ。


「無論、妾様の志尊の勇士としてのアシュヴァッターマンが好きだ。3000年もの長きの間、筆舌に尽くしがたい病苦の放浪を超えても、歪まず、くすまず、輝き続けるあの魂が好きだ。あの燃えるような美しい怒りが好きだ」 


朗々と吟じるように言ってから、ドゥリーヨダナは少しだけマスターの耳元に口元を寄せた。


「そのどれも決して偽りではないが……妾様とマスターの仲だから、1番の理由を教えてやろう」


マスターがぱちりと瞬きする。

ドゥリーヨダナは、秘密を言うみたいな声で言った。


「———ずっと、私の味方でいてくれたところが好き。これから先3000年も、私の味方でいてくれるって信じられるから好き。私のこと、愛してくれるから好き」


ドゥリーヨダナがほの笑う。


「……打算的だろう?妾様は妾様の役にたつものが好きなのだ」

「……私はそうは思わないよ。当たり前だもん。辛い時もずっと傍にいてくれたから、ずっと一緒に戦ってくれたから、がんばってたところ、ずっと見てきたから。どんなに傷つきながらも一歩も引かないで、私を守ってくれる背中をずっと見てきたから、好き。わかるよ」

「……ふふふ。ふふ、あはは。さっすが妾様のマスターよな!さてさて、その言葉を直接伝えたい相手がいるのだな?」

「えっ!?」

「妾様ばかりが語ったのでは不公平であろう?ほーら疾く吐くがよい!」

「え〜?いや、私はいいよ〜」


頬を染めるマスターと肩を組んで、ほれほれとつついていると、背後から声が掛けられた。


「……旦那?こんなところにいたのか」

「うん?アシュヴァッターマン、良いところに来た。今ちょうどマスターの好いた相手を尋問しているところなのだ。“恋バナ”というやつだ。お前も参加するか?」

「やめてやれよ……」


アシュヴァッターマンが、「え〜〜?値千金の情報なのにぃ〜〜」と不満げに口を尖らすドゥリーヨダナを回収してくれる。

アシュヴァッターマンがドゥリーヨダナを見つめる甘やかな眼差し。微笑み合うふたりは一幅の絵のように美しかった。


「ドゥリーヨダナ!……聞かせてくれてありがとう。私の話も、いつか話すね」


ひらひらと手を振って去るドゥリーヨダナは、アシュヴァッターマンに何やら囁いて笑う。2人の後ろ姿を見送って、マスターはそっと2人の幸福を願った。


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