手遅れの話
・周囲にダダ漏れしてる無自覚両片思いしてるフリ→(←)リコ
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「フリードさあ」
オリオから呆れたように言われて、フリードは目を瞬いた。
夜のミーティングルーム。
約束していたわけではないが、オリオとモリーと偶然鉢合わせたフリードは、コーヒーを片手にリコを見送ったところだ。
課題のためにちょっと夜更かししていて寝付けなくなった、というリコにモーモーミルクを温めて渡して、他愛ない話をして。
「フリードのおかげでよく眠れそう。ありがとう」
と笑うリコに「このくらいお安いご用だ」と笑い返して「おやすみ」と見送った。
その一部始終を見ていたモリーとオリオは目を合わせてやれやれとばかりに肩をすくめられた。
「リコはさ、多感な時期の女の子なんだからさ、もうちょっと気をつけなよ」
「……何がだ?」
思い当たることがまったくなくて、フリードはさらに首を傾げた。
特にデリカシーの欠ける振る舞いをした覚えはない。
「自覚なしか。つける薬もない」
ざっくりと切り捨てたオリーが、コーヒーをすする。
「は? いや、ほんと何の話だ? リコ相手に何かしたのか、俺」
守るべき相手、恩師の娘、大事なライジングボルテッカーズの仲間。そんな彼女を傷つけるような真似でもしていたのか、とフリードは眉間にシワを寄せた。
思い返してみても思い当たることがなくて、リコだって少し困ったような顔を見せることはあったけれど、思い悩んでいる表情よりも、楽しそうにフリードへ笑いかけられていることの方が多い、と思う。
何より、明るい空色の目はいつだって信頼と親愛を滲ませてフリードを見つめていた。
はずだ。
これでもポケモン博士だったのだ。ポケモン相手に限らず、観察と分析は得意な方だ。
なのに、気づかず、無自覚に彼女に気遣いに欠ける真似をしていたのだろうか。
途端に落ち着かなくなって、フリードはマグカップに入ったコーヒーを見つめながら揺らした。
「ほんっとにわかってないんだ。フリード、リコの名前呼ぶとき、マホイップのクリームみたいな声出してるんだけど」
「そ。おまけにいちいち距離が近い」
「そ……そうか? ……リコ、嫌がってたか?」
嫌なのをがまんしてフリードと話していたのだろうか。
そうは見えなかったが、しかし、そこに自分の希望が含まれていないとは言い切れない。
リコは内に溜め込みやすい性格だ。だからこそ気をつけなければならなかったのに。
「いいや、逆逆。嫌がってないから問題なんだけど。その気がないならもうちょっとうまくやりなよ」
オリオからそこまで言われて、フリードは目を瞬いた。
ようやく二人の言わんとすることを察して、フリードはぽかんとした。
「リコ、俺のことが好きなのか……?」
「それ聞く?」
「まだ違う」
まだ──けれど、そう遠くない内に変わるかもね。モリーの言外の含みに、フリードは頭を抱えた。
「それは……マズいな……」
──何がマズいって、まったく困らないのが、マズい。
「気をつける……」と言ってひと息にコーヒーを飲み干したフリードが、リコの方もとっくに手遅れだったと気づいたのは後日のことだ。