手遅れ

手遅れ


「ルフィ……」


まただ。クイッとひかれた袖、引っ張った本人は手を離す事なく、俯いているが、少し上気した頬が見えるし、落ち着かなそうに踵で床を打っていた。


「えと、ウタ…」

「お願い、またなの…ねえ…おねがい」


そうしてルフィが口を開くのに被せる様におねだりをして、ルフィに抱きついて、甘える様に擦り寄ってくる。紅白の絹糸の様にきめ細やかな髪が、自分の胸元の傷を撫でてくる様で少しばかり擽ったいが、時折肌に触れる彼女の顔や、もれる吐息は一瞬火傷するのではと錯覚する程に熱い。

はぁ…と挑発する様に、首筋に息をかけられて思わず肩が跳ねた。


「うっ……なあ、ウタ、ちょっと落ち着いた方が……」

「落ち着かないの…落ち着けないから、ルフィしか、いないから……っ」


そうして更に抱きつく力を彼女は強める。自分と比べればずっと非力なので痛いとか息が苦しくなる事はないが…彼女の胸の柔らかな部分が歪む程に押し付けられ、更に彼女の熱を感じる。

こうなったのには自分に責任があるだろうが…どうにかせねばとルフィはずっと頭を悩ませていた。


「ねぇ、ねえ…おねがいぃ……ルフィ…切ないぃ…っ」

「う〜ん…!!」


切羽詰まった様な、そういう時期を迎えた猫の様に甘い声で強請る幼馴染……結局、もはや泣きそうになっている彼女を見て折れたルフィは首を縦に振った途端、そのまま手を引かれて彼女の部屋に入り、鍵をかけた音を聞いたと同時にウタワールドへと入れられた。


「触って…お願い…!!はやく…!!」

「わ、分かったから…おちつけ、な?ちゃんと触るから…」


招待されたと同時に、バサリと彼女の紅白の翼を広げて迫るウタ…

元はと言えば、触り心地が良いと好き勝手触っていた自分が悪いのだろうが、誰が想像するのか…本来なら、現実に存在しない身体の部位を、知らず知らず開発してしまうなんて…

結果として、ウタはすっかりクセになってしまった感覚を求めてしまう様になった。前はルフィからだったのに今となっては自分から触って欲しいと請い願う程に。


「ふー…ふぅ……っ、はっ」

「それじゃ、触るけど…痛かったりしたらちゃんと言えよ?」


分かったとも言わず、コクコクと縦に振り、背中に触っているうちに力が抜けて倒れるウタの為にルフィが提案した大きなクッションに、既に皺が出来る程抱きついている。その目は熱に微睡んで、その部分だけを見ればまさか【羽を触るだけ】なんて誰も信じやしないだろうな…とまで考えてから思考を隅に置いて、ルフィは彼女の羽に手を沈めた。


「ふ、ぁ…ああ…っ」


待ち望んでいた感覚に、蕩けた声を出し、身体が跳ねるウタ。なるだけ彼女に気を遣いつつも…やはり極上の触り心地をしている羽に、ルフィもまた色んな触り方をしたくなって、我慢する事なく試していく。


逆立つ様に、一気に撫で上げたり

「あぁぁっ…ま、いきな、り…つよっ…す、ぎ……っ♡」


擽ぐる様にコショコショと指先で擦ってみたり

「ひ、うぁっ…♡ふ、ひぃ、ひっ…あ、はっ…♡」


付け根辺りを痛くない程度にグリグリと親指で押してみたり

「は、ぁっ!♡…ひんっ…ア、ぁ、あっ…あ、ふぅ……ンッ♡」


羽が生えた時は繋がっているからかいつもよりも感度の良い背中の背骨をまるで一つ一つ数える様に撫でていってみたり

「あ、あぁっ…と、けちゃ……♡そ、れ…す、き……も、っと…ふぁ♡」


両翼の根本をギュッと握りしめてみたり

「ゔぁあっ…♡こ、れっ、へ、ん…まっ、ぅあぁぁあ…♡あ゛っ♡ぎゅ、て…また…うぐっ、き、もち…ひぐっ♡」


とにかく色々試す。彼女が少しでも満足する様に……

あまりこの世界に依存する様な物を作ってはならない。そんな事はよくよく分かっていた…だが


「あ゛ー…♡…あ゛、ふっ……る、ひ…るふぃ…♡…す、き…すきぃ…♡きもちい…んあぁ…♡」


だがこんなにも、ふやけた表情と、甘えた声……それでこうも、好きだ好きだと言われたら、こちらもつい、熱に浮かされるというもので…

自分が触る度にビクリと彼女が跳ねる度に舞う羽一つ一つについてる彼女の匂いを肺いっぱいに取り込む…石鹸と、彼女の好物の甘い匂い……


「ふ、ぅう…♡」

「ウタ、痛かったら言えよ」

「へ…♡あ゛あッ!?♡」


それに自分のも染み付けてやりたいとでも思ってしまったか、ガブガブと彼女の羽に噛み付いた…はたから見たら捕食に思われるかもしれない。


「る゛、ひ…それっ…!?♡ひょれっ…!チキン…じゃ、にゃ…うぁあ゛っ!!♡」


強過ぎる感覚を逃す方法が分からず身体を丸めるがそれだと寧ろ余計に羽に触りやすくなるだけで、ルフィは噛み付くのを続行しながら空いてる手で付け根をトン、トンとリズムを付けて叩く。猫の尻尾の付け根をこうして叩くと喜ぶそうだが、どうやら彼女もそれは一瞬らしい…


「はあ゛っ♡やら♡あっ、あ゛っああ…♡むりッ♡こ、れ゛…おか、ひっ♡なる♡あたま、だ、めに…されッ…♡ンァッ♡」


登りつめては弾けて発散されていた熱が、ずっとずっと溜まる。高いところから降りられなくなる様な不安や恐怖にも似た感覚が鎌首を跨げる。バチンッバチンッ、と強い電気が流れる様に視界が白くなったり、真っ暗になったりを繰り返す。


「あ゛っ!♡あ゛あ゛っ!?♡ゔ、ぐっ♡あ、ゔっ!?♡ひっ、ぎ、ア゛…♡」


そして、溜めに溜めたソレを…ルフィは彼女の白い頸に噛みつき、両手で怪我をしないギリギリの強さで羽の付け根を握りしめて……弾けさせた。


「ア゛ッ…♡、〜〜〜〜ッッ!!?♡♡」


噛みついたのを振り払われるのではという程勢いよくのけ反り、声にならない嬌声をあげて盛大に気をやった…ウタは、少ししたら、くたり、と倒れ込む。

それを抱き留めて、自分の方に引き寄せるルフィに、ウタはしばらく余韻もあり反応出来ていなかったが、少しずつ回復しているのは行為中、段々と酷く乱れていったウタワールドの端のノイズが修正されていくのを見れば分かる。


「…ぅ、あ……はっ…ひゅぅ…」

「なんか、今日ごめんな?痛かったりしないか?」

「…ん」


ふるふると首を横に振る。痛みがないと言えば嘘かもしれないがそれ以上の快感で強制的に塗りつぶされていたので気にしていない…寧ろまたやって欲しい。そんなつもりでおねだりをした時の様にウタはルフィに肩口に顔をグリグリと擦り付ける。


「こういうの、あんまりやり過ぎるとお前がウタワールドに入り浸り過ぎないか不安なんだけどよ…」

「…我慢は、してる」

「ええ…」


これは嘘じゃない。本当に我慢に我慢を重ねているのだ。だが、それでも疼きが抑えきれないとああなってしまう。


「ルフィの、せいじゃん…前は、羽なんか…なんともなかったもん……」

「うぐ…」

「せきにん、とってよ…とらなきゃ」

「と、取らなきゃ…?」

「ジンベエさん、に…「お嫁に、いけない体にされたのに…逃げようとしてる」って泣きついてやる」

「誠心誠意、責任をとらせていただきます…!!」


人選に【ガチ】を感じたルフィはあっさり白旗を揚げた。仕方ない、せいぜい彼女の欲求をきちんと満たせる様に頑張る他ないだろう…そしてそれ以上に現実で楽しい思いをさせてみせればいい。

大事な宝ものを今度は優しく優しく抱きしめながら、ルフィは彼女の頭を撫でた。

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