成人時空潔×アンリ
もう何度目かもわからなくなったデート。日が暮れ始め潔とアンリは駅へ向かって歩いていた。いつも潔がアンリを一人暮らしの家まで送り届け、家の前で解散する。今日もその流れになりかけ、潔が帰ろうとしたとき、アンリが意を決したように声を出した。
「あの……!!」
「どうしたんですか?」
潔が不思議そうに振り返った。アンリは顔を真っ赤にして周りをキョロキョロと見回した後、背伸びをして潔に耳打ちする。
「今日、その、ちょっとエッチな下着なんです……」
「えっ!?」
「潔くん、私には手を出してくれないので、ちょっと頑張っちゃいました」
えへ、と困ったように笑うアンリは羞恥故にうっすら目に涙の膜を張っている。突然告げられた事実に潔の頭はフリーズしてしまって、場に沈黙が降りる。
何も言わない潔にマイナスの感情を想像したのか、アンリが一歩後ろに下がった。ぎゅっと胸元で握られた手は力が篭りすぎて真っ白になっている。
「ええっと、すみません。年を考えろって話でしたね。今日はここで解散にしましょうか」
ちょっと待ってください。潔はなんとか声を絞り出した。情けないことにちょっと声が震えてしまった。だって一日中デートしてたのに、ずっとえっちな下着だったって言われたら固まりもするだろ!? というのが潔の言い分である。
「帝襟さんが良いなら俺、今日あんたのこと抱きたいです」
そりゃ潔だってアンリと触れ合えるなら触れ合いたい。今日だって一応準備はしてきたし。勿論顔には出さないようにしてはいたけれど。
「その……言いにくいんですけど。ちょっとは期待、してたし」
「え、そうなんですか? だって潔くんそんなそぶり一回も……」
「我慢、してました。ハイ。すみません」
しかしアンリはどこもかしこも小さくて柔らかくて、迂闊に触れると壊してしまいそうだったから、躊躇しすぎてついアンリに勇気を振り絞らせる羽目になってしまった。
情けないなと頭を掻く潔にアンリが微笑む。目の縁に溜まった涙を拭って、潔を家の中へ招いた。細くてひんやりした指が潔の服の裾を引く。
「ふふ……謝ることなんてありませんよ。むしろ安心しました。私に魅力がないとかじゃなくて。それじゃあ潔くん、明日の朝まで、よろしくお願いしますね?」
「おう!! じゃなくてはい」
「敬語じゃなくても良いですよ。むしろ自然に話してもらいたいな、ダメ?」
アンリに見上げられると潔はもう素直に頷くしかない。年上の可愛いお姉さんは強い。お邪魔しますと言う声を少し震えさせたのは緊張か、興奮か。もう潔にもわからなかった。