憧れ
出会ったばかりの頃、僕はトレーナーさんが大切そうに読んでいた本を興味本位で覗き込んだ。
そんな僕の様子を見て、トレーナーさんは嬉しそうに微笑んで、これは自分の故郷の伝説のお話なのだと教えてくれた。
「コバルオンはね、テラキオン、ビリジオンと一緒に、ポケモン傷つける人をこらしめた、鋼の心と体を持ったつよーいポケモンなの。」
そう言ってトレーナーさんが指を指した先には、その説明に違わない強い瞳を持ったポケモンが描かれていた。
ただの絵のはずなのに、身の竦むような圧を感じる。
「クワッスにはちょっと怖いかな?」
トレーナーさんがくすりと笑う。
少し恥ずかしい。
「でもね、私はこう思うの。
コバルオン達が人間たちをこらしめて、『ポケモンを傷つけるのはいけないことなんだよ』って教えてくれたから、私達は君達に歩み寄ることが出来るようになって、私と君はこうして相棒になれたんじゃないかなって。」
ねぇ、クワッスはどう思う?
問いかけるトレーナーさんの方を向いて、僕は力いっぱい頷く。
その日からこの本は、僕にとってもたいせつなものになった。
僕は鏡をじっと覗き込む。
洗面台に飛び乗らなければ何も映らなかった鏡が、今や歩み寄るだけで十分だ。
コバルトブルーの毛並を整えながら考える。
僕は、あの日憧れた彼のようになれているだろうか。