愛より後に恋があっても

愛より後に恋があっても



「なんかもう、私達多分ずっと一緒だし結婚する?」

「あー…するか」


あまりにも、あまりにも色気のない逆プロポーズだったなと思っている。

だからルフィの友達や私の周りの人にも「どんな風に結婚しようという話になったの」って好奇心で聞かれる度に苦笑いして誤魔化してきた。


だって、私とルフィの間にあるコレは恋とかそういうものじゃなかったから。二人で一緒にいて、偶にはしゃいで…そうじゃない時の静かな時も別に苦じゃない。楽しいことも嬉しいことも、時には悲しいことを共有していて居心地が良いから。

相手を大切にしたいという思いは確かにある。いわゆる真心というものだ。「愛は真心、恋は下心」とは誰が言ったか。

でもまさしくその通り、私達の間には下心などなかった。


「そろそろ、子供つくる?」

「そうだなァ…おれらも、いつの間にかそんな歳か……そういうのって女は負担がデカいって言うし、早めにつくるか…」


だから、そういう時が来た時も私からこれまた色気のないお誘いをしたのが始まりだし、それに対してルフィは【したいから】というよりは、【その方が私の負担が少ないから】で応えた。

うん、相変わらずこういう距離感と思いやりが出来る相手で嬉しい。そういう信頼や信用があるからこそルフィと生きるか、って決意がすぐに固まったんだなとしみじみ思いつつ、いわゆる初夜とやらを私達は迎えてみたのだ。


チュンチュン…チチチ……


「……」

「……」


朝になり、起き上がってから互いに無言のままだ。こんな異常事態は初めてだった。いつもなら今までなら、どっちかが片方を鍋とおたまでガンガンしながら起こしたり軽い悪戯なんかをして飛び起こしたり…でも最後には笑い合って「おはよう」とか言い合っていたんだ。

なのに、なのにどうした事か……


「ぁ、お、はよ…ございます」

「う、うん…おはよう、ござい、ます」


他人か???と思わずツッコミを入れたいのに空気が許さない。それもこれも全部、昨日の夜遂に迎えた初夜が原因だった。

あんなルフィを私は知らない。

なんなら私ってあんな艶やかな声が出るのかとすごい驚いている。

今更恥ずかしくてシーツを引っ張って顔を隠した。「ひゃー…」って情けない小さな声が漏れている。

これも私か、ビックリした。

チラッと、ルフィの方を見た…


「………ふぅ〜〜〜…」

「ひゃー…」


2回目が出た。いやだって、片手で顔を覆ってるルフィから漏れる吐息が色っぽく感じてしまう。

なんで?今までこんなのなかった。ルフィが隣にいる事は心地がよかったけど、こんなに心臓が苦しくなる事なんてなかった!いっそ不整脈だと思いたい自分と、ンなわけないでしょと冷静に現実を教えてくる無駄に頭がいい自分がいる。


困った。まさか結婚してから恋をするとは思わなかった。

…それより、ルフィはどうしてずっと黙ってるのだろう?もしかして私とは逆だっただろうか?ガッカリしたのだろうか?

なんか、それは悲しい…それでルフィが離れたらきっと私は今までになく辛い。何度も喧嘩をした筈なのに…


「…なあウタ」

「な、なあに?」


ビクッと分かりやすく肩が跳ねた。そして不安を胸にルフィの方を見ようと目線だけ動かそうとしたが、グイッと頭を引っ張られてルフィの顔が目の間に来た。

すり、と鼻先が擦れて擽ったい。


「…情けねえけど、その、告白とプロポーズ、いつかやり直させてくれ」

「…へあ?」

「あ、と…もし、辛くなければ……」


もう一回、いいか?


本日3回目の「ひゃー…」が出た。

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