愚榴間隊の苦難

愚榴間隊の苦難

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【愚榴間隊の苦難】


A級部隊である増田隊と桐谷隊にB級でも上位に位置する久木隊。

対するはB級中位。中距離2枚遠距離2枚という少し偏った編成の愚榴間隊。


桐谷隊のエースは放っておけば1人で戦場を破壊する可能性を持つ。

久木隊の前2人は四つ巴特有の混沌を支配する類まれなる目を持つ。

増田隊は論外。付け入る隙の欠けらも無い。


相手は愚榴間隊にとって最も相性が悪く、加えて隊員の総合力でも格上。普通に戦えば勝ち目などほぼ無いに等しい。



───さて、弱音は終わりだ。

愚榴間彰一よ。まだ抗う力は残っているか?


(当然……ッ!)


前頭前野の異常な発達こそが愚榴間彰一の最大の特徴。

脳の中でも更に思考を司る前頭前野が異常なまでに発達している彼のフォルムは思考し、情報を組み立てて未来を予測することに特化している。


すなわち愚榴間彰一にとって抗うとは思考すること。思考し、想像できる限りの最善を尽くすこと。


(これはタイマンじゃない。四つ巴だ。相手が格上3部隊だと言われて一瞬血の気が引いたが、それはつまり他部隊の実力は限りなく近いということ。三つ巴+αと考えればMAPや作戦次第で付け入る隙は十二分にある)


考え。

考え、考え。

考え、考え、考え。


そして、辿り着いた。


───人事を尽くした者に天は微笑む。


『転送開始』

「これは……」


愚榴間はオペレーターからの情報を聞いた時、聞こえないはずの実況解説の固唾を飲む音が聞こえた気がした。


「こちら香蓮、増田さんを捉えました。囲んでます!」


愚榴間隊は無傷の最大戦力で、その試合における最大の障壁を落とす機会を与えられた。


(いける、のか?)


愚榴間彰一は戦う。

愚榴間彰一の生き様が間違っていなかったと、ほかでもない自分に証明するために。


───最善を、尽くす。


「……いや、ここで功を急いても仕方がない。俺の左右のレーダー反応が増田隊だったら間違いなく詰みだ。赤尾ちゃんはそのまま増田さんを警戒。是沢さんは上の、鮫島ちゃんは左のレーダー反応を警戒」


(焦るな。俺だって囲まれている。地力を考えれば増田さんより俺の方が落ちやすいだろ。けど増田さんはバックワームを使用したのに南に移動する気配は無い。ので、下のレーダー反応は増田隊じゃない。現在のレーダー反応は10。うちを抜けば8。増田隊は基本最初からバックワームを使用することはないはずだから、残りの8人は恐らく及川くん、白岩、来栖くん、桐谷さん、伏見ちゃん、紀坂さん、久木くん、竜宮さん。下の反応が増田隊じゃないなら他の反応は大体遠い。上の2人、右上の2人、右下の2人。他の部隊の視点になって考えてみよう)


愚榴間彰一は思考という武器を手にランク戦という概念の奥深くに潜る。

愚榴間隊の苦難はまだ終わらない。


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