意味を知っていますか?

意味を知っていますか?


 のどか「はぁ…ホワイトデーかぁ…」

 3月14日、それは人によっては男の子でも女の子でも、特別な想いを持つ子には関わりのある日。バレンタインデーで男の子に贈り物を上げた女の子が、男の子からお返しのお菓子、あるいは気持ちを貰える日…。

 のどか「けど、私には関係ないよね…」

 花寺のどか、中学生、プリキュア、入院歴あり、そんな私ですが今年のホワイトデーは少し違いました。

 私には……気になる男の子がいます。一つ年上の男の子、品田拓海君。プリキュアじゃないのに、プリキュアと一緒に戦ってきたすごい男の子なんです。そしてとても優しい人。

 同年代の男の子と、この人生で特別かかわりがあったわけでもない私は、初めて身近に感じて優しくしてくれた拓海君に惹かれていきました。もっとも、その気持ちに気付いたのは三月に入ってからなので、バレンタインに何かを特別なモノをあげたわけではないです。もしも…2月14日に戻ることができたら、なんて考えてもしょうがないよね。それに拓海君は…。

 拓海「あれ、花寺?」

 のどか「た、拓海君!?」

 そんなこんなを買い物帰りに考えていると、後ろからかけられた想い人の声に体をびくつかせてしまう。

 拓海「お、おい、大丈夫か?」

 のどか「あはは、びっくりしちゃってつい…」

 拓海「気を付けろよ…買い物帰りか?」

 のどか「うん、そうなんだ」

 拓海「そっか、ならもう遅いし送ってくよ」

 のどか「え!?」

 拓海君はそう言うと、自然な動作で私が両手に持っていた荷物を受け取り歩いていく。

 のどか「さすがに悪いよ!」

 拓海「遠慮するなって、というか、暗くなってるのに一人で帰す方が心配なんだよ」

 のどか「えっと…ありがとう」

 拓海「おう」

 そのまま私たちは私の家に向かって歩き出す。なんとなくむず痒い静かさに私は話しかける。

 のどか「拓海君こそ、こんな遅くまで何してたの?」

 拓海「……あぁ、えっと…今日ってホワイトデーだろ?それで菓彩たちにお返しを持っていったら…その、捕まって」

 のどか「…そ、そうなんだ」

 やっぱり拓海君はモテる。カッコよくて優しくて私たちと一緒に戦えて料理もできる。モテないわけがないよね。…それに、拓海君には好きな人がいる。拓海君は幼馴染のゆいちゃんが好きなんだ。

 余計な質問をしなければよかったと、俯き、泣きそうな顔を見られたくないがためにそれ以上は私から話しかけなかったし、拓海君も話しかけてこなかった…。

 足取りは重く、ければしっかりと進んでおり、気が付けば家についていた。折角拓海君と一緒に居れたのにほとんど会話だってできなかった。…もったいなかったな。

 拓海「ほら、花寺」

 のどか「え?」

 荷物を玄関先に置いてくれた拓海君の突拍子もない行動に目を点にしてしまった。だって、目の前に差し出されてるのは…。

 のどか「…私、バレンタインなにもあげれてないよ?」

 可愛らしい袋にラッピングされたマカロンだった。私が受け取れないとばかりに手を振ると、拓海君は少し困ったような笑顔を浮かべた。

 拓海「別に、貰ってなくちゃ渡しちゃいけないってわけでもないだろ?」

 のどか「で、でも…!」

 拓海「それに、バレンタインでなくても、俺は花寺にいつも貰ってるよ」

 のどか「私、あげてないよ…」

 拓海「いいや貰ってる。なんて言うか、花寺と話してると落ち着くんだよ。癒されるって言うか」

 のどか「癒されるって…」

 拓海「そ、だからあんまり気にすんな。むしろいつも貰ってるのに、お返しが皆と同じマカロンで悪い」

 のどか「ううん、ううん!嬉しいよ…!」

 拓海「そ、そっか。…あ、そうだ。俺、花寺の連絡先知らない」

 のどか「あっ」

 拓海「今日も、花寺にも渡そうって思ってたんだけど連絡つかなくてさ。こういうのであいつらに連絡頼んだら碌なことにならなさそうだし…もしよかったら、今交換できるか?」

 のどか「っ、ま、待ってて!!」

 私は拓海君を玄関に待たせて慌てて部屋に駆け込んだ。なんでこんな時に携帯の充電が切れてるのかな!

 私はメモ帳に慌てて自分のアドレスを書いていく。L○neは…メールで教えればいいよね。急がなくちゃ…あっ。私は目に付いたそれを手に取って玄関へと急いだ。

 のどか「おま、たせ…」

 拓海「大丈夫か?そんなに急がなくてよかったんだぞ?」

 のどか「えへへ、だ、だいじょッ!?」

 拓海「おわっ!」

 足を縺れさせてしまった私を拓海君が支えてくれた。か、肩と腰に手が…!!あ、あ。

 拓海「…花寺?」

 のどか「ご、ごめんなさい!!はいこれ、私のアドレス!」

 拓海「お、おう」

 私は慌てて拓海君から離れるとメモ帳を渡した。拓海君は一度中身を確認すると、しっかりと鞄の中にしまってくれた。それから…。

 のどか「それから…これ」

 拓海「これって…ココアか?」

 のどか「う、うん…缶のやつで、ぬるくなっちゃってるけど…えっと、その」

 やっぱりいくらバレンタインに何もあげられなかったからって、部屋にあった缶ココアは変だよね…。

 拓海「…っぷ、あはは、ありがとう花寺!」

 のどか「今度ちゃんとしたもの返すから…!」

 拓海「いいよ、これがいい。すごく美味しそうなココアだよ」

 のどか「……えっと」

 私はココアを握る拓海君の手を両手で包むようにして「あ、温かくなぁれ」と何とも恥ずかしい呪文を唱えてしまった。

 のどか「な、なんてね……」

 拓海「///あ、ありがとな。えっとそれじゃ、またな!」

 のどか「ま、またね!」

 拓海君も気を利かせてくれたのか、照れくさそうにしながらもお礼を言いながら帰って行った。…私まで暑くなってきちゃった。

 のどか「マカロンか…ふふ、拓海君…」


 マカロンの意味を知っていますか?



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