悪魔の力
自分の家で暮らし始めたデンジを見て、アキは内心苛立ちを募らせる。そんな折、東練馬区住宅内に魔人発生の通報が公安に飛び込んでくる。民間人の避難と現場の封鎖は完了しており、急行したアキとデンジは中に踏み込んだ。
住宅に踏み込む前、デンジが魔人について尋ねてきた。「お前義務教育受けてないのか?」とアキは軽く煽る言い方で聞く。
「お〜、オレ受けてねえよ」
あっさりした態度で答えた為、アキは言葉を失った。魔人についてデンジに説明しながら、目標が立てこもっている2階奥の部屋にアキは向かう。
「魔人の人格は悪魔だ。今回はお前が殺せ」
アキに力を見せろ、と命じられたデンジは部屋に散乱するエロ本をちらっと見ると、スターターロープを引いた。彼女の視線に反応して飛び掛かってきた悪魔を、デンジは腕のチェーンソーで斬り裂く。
「あ〜…こんなもんすか」
尋ねられたアキは頷く。合格どころか、相手が弱すぎて戦力になる、としか断言できそうにない。マキマが拾ってくるわけだ。
アキは悪魔の処理を済ませた報告の為、現場を封鎖する警察官達のもとまで先に戻った。一人残されたデンジは、ポチタと交わした契約を思い出す。
「俺もマジでやってるぜ、ポチタ。契約どーり、夢みてーなイイ生活してるモンな?」
風呂にも毎日入れて、いいモン食えて、ツラの良い男も近くにいる。もう百点の生活なのに、まだ何かが足りない気がする。
(マキマさんもなんかあるのか?マキマさんも…)
遊びに行きてえ…とデンジは呟いた。
「とっくの昔に俺にゃ無理だと諦めていたが…今のまともな仕事してる俺なら行けるんじゃねえか?」
一緒に部屋でゲームして…抱かれながら眠る。いきなりマキマにそれを求めるのは無茶だが、遊びに誘うのは強い意志と行動力があれば行けるかもしれない。
「遊びに!!」
「あそび?」
唐突に叫んだデンジを、アキは注意する。彼女はマキマの話を聞き流しており、マキマは改めてデンジに今日から組んでもらうバディを紹介する。
(マキマさんは俺の事好きだったハズだ…けど、今頼んだら無視される可能性がある…)
黙考するデンジの前に、パワーと名乗る魔人の少女が姿を現す。騒がしい性格の娘だ。魔人がデビルハンターをやってもいいのか疑問だったが、自分よりスレンダーな体型を見て取ると、デンジは彼女と組むことに納得した。
ところが、いざ組んでみるとパワーの問題点が次々と露呈する。傍若無人で嘘つき。民間が手をつけた悪魔を殺す業務妨害を犯した挙句、デンジに責任を押し付けてきた。パワー共々マキマに注意され、デンジは危機感を覚えた。
(遊びに誘おうとか思ってる場合じゃないかもしれない)
これからパワーをどう制御するか悩んでいると、彼女は悪魔にさらわれた飼い猫の話をしてきた。
「猫ォ?くっだらねぇな〜。俺はマキマさん遊びに誘うんで忙しいんだよ」
「…やはり人間とはわかりあえぬのお」
「んー。あ〜でも、犬だったらまだわかるかもな…」
「……ニャーコを悪魔から取り戻してくれたら、ワシ一押しの遊び場を教えてやるといったらどうする?」
パワーの誘い文句は、デンジの関心を大きく引いた。デンジにとって、今一番知りたい情報だからだ。デンジはニャーコを悪魔から取り返す事に協力すると、パワーに約束した。