悪魔との契約
本編ルートで夜襲失敗後
父や友の仇を討ちたいという思いが全くなかったといえば嘘になってしまうが、死出の旅路の供を断られてしまった以上はせめて手向けに何かを捧げようと思った
そうして大切に思っていた誓いも名誉も何もかもを捨ててまで行った夜襲は結局のところ何の成果も得られなかった
重い足取りの遅々とした移動だったが、それでも無心で歩けばそれなりの距離を進んでいたようで気づけばドゥリーヨダナの旦那を寝かせた洞窟の前に戻ってきていた
もしかするともう……ふと浮かび上がったそんな悲観的な考えを頭を何度か振って振り払い、どうかまだ生きていてほしいと祈りながら洞窟の奥に向かう
「────は?」
洞窟の奥、そこで目にしたものがあまりにも非現実的すぎて思わず声が漏れた
「遅かったではないか、アシュヴァッターマン」
それはいつも通りの旦那だった。踏み砕かれていた頭も棍棒で砕かれた腿も、まるで夢だったかのように元通りだ
俺が戻ってくるまでに治癒した?そんなことはあり得ない、はずだ。少なくともカウラヴァの陣営にそんなことが出来る奴はいなかった。
「怪我はどうしたんだ……?」
「ヴィンダ、アヨーヴァフ、チトラチャバ、ダンダダーラ、カヴァチィ……」
旦那は幾人かの弟たちの名を挙げていく。
意図が分からず黙って聞いていればいつもの悪だくみを話すような軽やかさで続けた
「その肉で埋めた」
思考が停止する、埋めた?
何を? ────怪我についての返答なのだから埋めたというのは怪我の事なのだろう
何で? ────肉と言っていた、では何の肉だ?彼が名前を挙げていた彼の弟たちの……
「───────!!」
理解が及ぶのと同時にかつて彼の弟の誰かが「兄は悪魔で、自分たちはその整備用の部品だ」などと言ってたことを思い出す
あの時は冗談だと思っていた。今でも冗談だと思いたい、冗談であってほしい
「……旦那は、悪魔なのか?」
混乱しきった俺の質問に旦那は嫌になるほどいつも通りの笑みを浮かべて頷いた
「ああ、とはいえわし様は何も悪いことなどしておらんぞ」
「わし様はただ皆の欲望を肯定しているだけだ。アシュヴァッターマン、お前の欲を叶えたようにな」
「おれの……?」
かろうじて絞り出した声は自分でも呆れるほどに震えていた
「『まだ死なないでほしい』と願ってくれたのだろう?」
でかした、よくやった、えらいといつもの旦那と同じ声音で、同じ目で、同じ笑顔で語るそれは間違いなく旦那なのだろう
なのにその言葉をこれ以上聞いてはいけないと本能が訴えかける。一方で何も出来ないままでいる自分が酷く愚かに思えた
「ああ、『ドローナやカルナの敵討ち』も願っていたのであったな。よかろう、それもわし様が叶えてやろう」
人としての顔を忘れた悪魔が手を差し伸べてくる。
そこで初めて魔除けに守られていた自分は悪魔の誘いを拒絶する方法を知らないのだと気づいた
~~~~~~~~~~
わし様
悪魔らしく欲望を肯定して人々を扇動していく機構、現在の主目的は大地の女神の願いを叶えること
対立する欲望を差し出された時は気分で優先する方を決める
頭が潰されていた影響で取り繕うのを忘れているだけで別に人格が乗っ取られたとかではない
戦争を起こしたことも、強い戦士であったこともすべてはそう望まれたから
アシュヴァッターマン
知りたくない真実を短時間にいっぱい叩きつけられて一時発狂中、可哀想
大地の女神
もう支えるの嫌になって来たし削減じゃなくて殲滅でお願い~