悪趣味七武海のミホハン
※ミホークの石像愛でるハンコックと、ハンコックの死体愛でるミホークの暗すぎる散文
※どこの辺の時系列かとかキャラ崩壊についてとか妥当性についてはこの際レッドラインの上まで投げ捨てるとしてお互いの敗北ルートで悪趣味に耽溺する姿が見たかった
※ハおカでミおカなのはもうおっしゃる通り……しかしキャラヘイトじゃないしどっちも推しだと宣言しておく。推しの美しい死体を推しが愛でる所からでしか得られない栄養素がある
※直接的に死体性愛するようなことはしてないですがそうとも取れそうな表現に注意
※前提として倫理観狂ってるので閲覧はどうかベリーベリー自己責任で
※ここまでクッションひいといて大したことない短文なのはごめん
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ハンコックの場合
九蛇城の地下には沢山の美女の石像が並んでいる。
みな元は人間であり、自分の美しさに見蕩れた海賊や商船の女達の成れの果て。
美しい女がいくらいようと自分には適わなかった証であり、美しいトロフィーである。
最初はすっかり狂気に怯えきっていた城の女達も、いまやすっかり慣れて石像の埃を落としている。
生きた人間は愛せない。
いい男とは石像となった男のみ。
男嫌いで有名な自分は表立って言えないが、一体だけ男の石像を持ち込んだ。
「そなたに……何をしようと赦される。なぜだかわかる?そうよ、わらわが美しいから……」
小部屋ほどもある広いベッドの脇の男に、夜毎お決まりのセリフを言い聞かせる。
石像となった世界で一番強い剣士だった男の頬を優美な白い手が触れた。
冷たい感触が、もう既に生きていないという事実を感じさせて胸が高鳴る。
何も感じない肌にしか触れられない身体。
何も映さない瞳の前でしか見せられない恍惚とした貌。
誰にも知らせていない悪趣味。
動かず喋らず何も見ない、モノと成り果てた人間にならば、気を許せるのだ。
辛い過去も全て子どものように泣きながら訴え縋りつけば未だ痛む心の慰めとなり、何も映さない瞳にならば忌まわしい紋章のついた醜い背中すらも晒せる。
もはや蔑む事のできる目など存在しない。
「わらわの虜にならない男はおらぬ……ふふ、そうであろう、鷹の目のミホーク」
こんな、ひどく理性的な強い男ですら自分の美貌の虜となった証左に、石となった事実に、くらくらする程の達成感と昏い喜びが滾り溢れる。
一時とはいえ人間以下の存在となった女に恥知らずにも邪な想いを抱いて、人間であることを許されずに石と化した気持ちは如何じゃ?と自嘲気味に心の中で問う。
何も聞こえない男にしか聞かせない甘い声でそっと囁く。
「わらわも好きよ……石となったそなたが……」
邪な思いも好意も綯い交ぜで、区別などつけない方が幸せだ。
白い腕を冷たい背中に回し、思いが募り、美しい眦が潤んで頬が染まる。
石の唇に熱くぬるめく赤い舌を誘うようにゆっくりと這わせた。
生きた男ならば、一瞬で理性を失う狂気に耽る。
石の足ならば、自分の元を去らないだろう。
石の腕ならば、自分を支配出来ないだろう。
冷たい唇ならば、「さよなら」などと言わないだろう。
その代わり、二度と名前を呼ぶことはないけれど。
傷つけられることも、愛されることも絶対にないからこそ一方的に、弱みを見せずに愛せるのだ。
石像にするのは、きっとこの男だけ。
他の弱さゆえに醜い男ならばとうに砕いている。
美しい男よ光栄に思うがいい。
ずっと傍にいることを許そう。
己の美しさの証として。
終
*
ミホークの場合
傲岸不遜。冷たい態度。永久凍土を思わせる海賊女帝は、しかし生きる力に満ちていた。
それが今や本当に氷になったかのように冷たくて、暗い部屋で内側からぼんやりと淡く光るような白い肉の塊となっている。
強くしなやかな身体に突き立てた赤い傷を見て昏い独占欲が満たされるのを感じる。
死してなお、夜のように黒く艷めく髪も、
血の気が失せ、雪を欺くばかりに白く輝く肌も、
指先へと伝い滴り、香りたつ鮮やかな赤い血の一雫も、
全て自分のモノだ。しかしそれはおまけにすぎないただのアクセサリーだと知っている。
真の価値はその強さ。強くあった肉体。
肌についた傷を綺麗に縫合して目立たなくするか、それとも己だけにしか見せたことの無い、桃色の血管ひしめく肉の中身を見せた証としてそのままにしておくか、贅沢な悩みに耽る。
……やはり傷跡は残しておこう。
美しいだけの女には全く興味がないが、強く美しい女ならば話は別だ。
強者として挑んだ功績はみな同じ。
双方命を賭けて斃したのだ。
即死させてやったのはせめてもの優しさ。
自分の力に及ばなかった無力で、かつ強くあった美しい死体。
彼女の光を失う寸前の瞳の煌めきに、初めて命を奪うことでしか愛せないと悟った。
開いた瞳孔の中に、縁取られた長いまつ毛の影の中心に、明るい空を背景に自分の狂気に満ちた顔だけが映ったのだ。
薄く開いた唇は、最後に誰に何を言いたかったのか、何を考えていたのかはどうでもいい。
くずおれる身体を抱きとめ、彼女の今際の際に与えた最後の体温は自分のものだった事実が大切だった。
誰のものにもならない女の命を摘む男になれたのだ。
血と土埃に汚れた頬を拭ってやり、乱れた髪を梳らねばならない。
生前の血色を思い起こさせるように、紅をさしてやろう。
エンバーミングを進めようと服を脱がせて気づいた。
背中に焼き押された天竜人の紋章。
感情も力も失った身体が、まるで絶望したかのように項垂れて見えた。
「……」
眉を顰める。
この自分をも凌ぎかけたほどの強い女が顔も知らない他の誰かの所有物に一時でもなってしまった証に、趣味が悪いと吐き捨てた。
こんな背中に酷い火傷を負わせるのは罪深い。
どこもかしこもなめらかな肌なのに、そこだけに凹凸を指先で感じて、最近つけられたものではないと知る。
幼い頃の境遇に思いを馳せながら眺めているうちに、そんな労しい境遇でありながらも彼女が強く生きた証だと思えた。
軽蔑はしない。
しかし憐れみもしない。
同情することすら礼を欠いてプライドを傷つけてしまうだろう。
「やはりお前は……美しい」
冷たい手をとり、甲に口付ける。
強くあった人生を讃え、敬意を払い、一生美しいままにしておこう。
生きていたら所望するような、背中を隠すドレスを着せて、髪を整え化粧を施し、柔らかい絹を詰めた上等な棺に収めてやろう。
こんなにも飾り立てるのはこの女だけだ。
強い女よ光栄に思うがいい。
ずっと傍に置いてやろう。
己の強さの証として。
終