悪夢の中に花を見た
622
カラスが鳴いて飛び回り、ネズミが影で私を見ている ハエに至っては私を死体と思って飛び回っている
今思えばクソッタレな人生だった
アリウスに生まれ、初めて教えられたのは銃とナイフの握り方
次に教えられたのは殴られた時の痛さだった
「𝓥𝓪𝓷𝓲𝓽𝓪𝓼 𝓥𝓪𝓷𝓲𝓽𝓪𝓽𝓾𝓶 𝓮𝓽 𝓸𝓶𝓷𝓲𝓪 𝓥𝓪𝓷𝓲𝓽𝓪𝓼…全ては虚しいねぇ…」
いい事なんて一つもありはしなかった
ここまで明確に終わりを感じるともう死ぬのも怖くない
私の人生は…悪夢のような人生で…
……いやあの日 あの時出会った奴らは…どうだったかな
私は戦闘訓練が苦手で…
しかもただでさえ食事も少ないのに、厳しい訓練
その日は体力も限界に近く、私は訓練中に倒れた
そんな私を教官は怒鳴りながら殴りつけた それでも立たなければ踏みつけられた
朦朧とする意識の中 教官の怒号とは違う声が聞こえた
「申し訳ございません 彼女からは今朝から体調が悪いと聞いていまして 教官に報告を忘れておりました 罰であれば私に!」
この声ははっきり覚えている
その声と打撃音を聞きながら私は意識を手放した
…目が覚めるとそこは私が寝床にした場所とは違う廃墟
水色の髪の子が私を見つめていた
「サオリ姐さん!目覚ました!」
その子がそういうと奥から3人ほど別の子達が来た
サオリと呼ばれた子は腫れた顔をしながら私に
「痛いところはないか?気分が優れないとかは?」
と言いながらパンと水を差し出した カビていないパンと綺麗な水
私は不思議でしょうがなかった 自分も怪我をしているのに何故私にここまでするのか 食料だって少ない筈 なんなら私を脅して食料かっぱらった方が合理的だ
そう聞くと「私達だけでも助け合わないとな」と言われた
横で見ていた黒髪の子はため息をついている
体調が良くなるまではピンク髪の…アツコと水色髪のヒヨリの相手をすることになった
そして体調も良くなり彼女らの拠点を去る際、私は出来る事を考えた
そして
「私はアリウスから脱走する 報告したきゃそうして 脱走者の報告をすればあのケチでクズなマダムでも多少は報酬を出すだろうし」
仲間と計画していた脱走の話をした もちろん仲間の事は伏せたまま
そしたら彼女達は笑って
「自由になれるといいな」
って言いやがった
この後、彼女らは結局この事は誰にも言わなかったんだと知った
そして今日 脱走の決行日
「いたぞ 撃て!」
予想はしていたが見つかってしまった
一人一人居なくなる仲間
私の親友は私の目の前で脳天ぶち抜かれた
私と一緒にこの前まで馬鹿やってた奴は戦車の爆撃で消し飛んだ
隣走ってた奴はガトリングで蜂の巣みたいにされた
計画の発案者なんてもっと最悪だ 私は隠れてそれを見ていたが 一発で楽になれるのがどれだけ幸せか思い知った
尋問の末 綺麗だった顔は見るも無惨な事になり…遺体を弄ばれた
尋問の中で計画は初めからマダムにバレてたらしい 私達は見せしめに使われたんだと
「ちょっとあの子ら恨んじゃったよ…せめて報告してくれればあの子らの明日になったかもしれないのにって」
そんな事を考えながら倒れていく仲間を横目に私は逃げた
逃げて逃げて 逃げ延びて…最後はこんな路地裏で死ぬ
「…裏切り者にはお似合いな最後かなぁ……」
そう言いながら教官からくすねたタバコに火をつける どうせここまでの命 大人になったらなんて悠長は言わせない
吸いながら色んな事を考える
アリウスから逃げてやりたかった事 友人と見たかった物 ケーキというのがあるらしいという事 後はオシャレとか鯨を見てみたかったとか…
そんな事考えているとまたサオリ姐さんと3人の事を思い出した 元気に生きてるかとか飢えてないか私の事を隠して罰を受けてないかと心配になる…
「やっぱり死にたくないなぁ…」
結局、恩返しも何も出来てない事を思い出してつい口から漏れ、涙が溢れる
だがもう残された時間もない
「…この世にさ 神様っていうのがいるならさ せめてあの子らは幸せにしてやってよ…」
またあの時のように意識が朦朧とする そんな中せめて祈る 私が掴めなかった幸せを彼女らが掴めるように
意識が…もう…
「621!急いで車を用意しろ!おい!!大丈夫か!?しっかりしろ!」
遠くで声がする あの時のサオリ姐さんと同じ…優しい…声が…