悪の華
「こんにちは〜♪スカーレットさんはいらっしゃいますか?」
「いらっしゃいませ〜…あら王妃様!いつもご贔屓ありがとうございます〜」
「王妃さま!こんにちは!」
「んもう王妃様だなんて、気軽にレイナさんでいいのに〜。レベッカも大きくなったわね♪」
「うん!今年で8歳になったんだよー」
「…-今日も息子さんのお墓参りですか?」
「…ええ。あの子は綺麗なお花が好きだったから」
「…王妃様には、本当に感謝しているんですよ。父が罪を犯して突然身寄りのなくなった私たちを、あなたが匿って色々も面倒を見て下さったおかげで、今こうして娘と暮らすことができるんですから」
「わたし、悪い王様も今の王様もあんまり好きじゃないけど、王妃さまは好きよ♪」
「……そう。それは良かったわ。私の頑張りも、少しは報われたかもしれないわね」
「でもこの子がいるってことは、私にも夫がいたはずなんですけど………全然思い出せないんですよね。不思議なことに。私はともかく、レベッカには寂しい思いをさせてしまっていないか、少し心配なんです」
「大丈夫だよお母さん!私たちには『兵隊さん』がいるから!」
「兵隊さん?」
「最近よくうちによく来るようになった、おもちゃの人形さんなんですけど、レベッカとよく遊んでくれたりお店の手伝いをしてくれる優しい人形さんなんですよ。そろそろ来る時間かしら」
「あ!来たよお母さん!兵隊さーん!」
『やあレベッカ、スカーレット。今日も元気そうでよかった………そちらのご婦人は?』
「この国の王妃様よ。私たち親子の恩人なの」
『そうか……少し王妃様とお話ししてもいいかな?』
「どうします?」
「私はいいわよ。時間もたっぷりあるしね」
「兵隊さん、また後でねー!」
〜それからしばらく〜
「……………もしかして貴方が、スカーレットさんの旦那さんで、レベッカのお父さんかしら?」
『単刀直入に聞く。人質のつもりか?』
「まさか。私は心の底から、あの人たちには平穏に、幸福に生きて欲しいと思って行動したまでよ。そこに他意は一つもないわ」
『人をオモチャに変えて記憶をいじっておいて、幸福な暮らしだと?ふざけるな。そんな世界は偽りにすぎない!国と家族を奪った報いはいずれ受けさせる。貴女の夫の首を、私は必ず刎ねにいくぞ』
「……そうなれば、それも仕方のないことね。この国を治めるために、私たちはあまりにも罪を重ね過ぎたから、いずれは罰を受けなければならないわ。遅かれ早かれ、ね」
『それを理解しているならなぜ夫やその部下たちの悪行を止めない?夫が間違いを犯したなら命に替えても止めるのが妻というものではないのか?』
「…もちろん彼の行動に何度も反対はした。リク王やスカーレットさん達のように、私の権限で秘密裏に助命した人も何人かいるわ。反抗した人やコロッシアムで負けた人たちも全てがオモチャにされたわけじゃない……けれど「否定」することはしないし、私にはできないの」
『私にはわからない……悪行を是としながら善行を成す貴女の在り方が、なぜドフラミンゴのような男に、貴女が従い続けるのか』
「なんの後ろめたさもなく生きている人間なんて存在しないでしょう?自分が今日を生き抜く為に、悪に手を染めなければいけない人達もいる、私はそんな人を何人も見てきた。そんな人達を悪行を働いたからといって、躊躇なく断罪する権利を一体誰が持ち合わせているのかしら?」
『…………。』
「それにね。あの人は必死で周囲を自分に縛り付けようとしているけれど、本当は今にもはち切れそうなくらいに脆いの。何かに縋り付かなければいけないくらいに。そうさせてしまった原因は……私にもある。だから私から彼を裏切ることはできないわ。足抜けなんて許されない。この先の未来がたとえ地獄に繋がっていたとしても、私は彼と共に罪を背負って、一緒に地獄に堕ちる」
『………貴女は恐ろしい人だ。ある意味、狂っている』
「それがワノ国の女というものよ」
『だが何より恐ろしいのは、そんな貴女を憎みきれないことだ……悪魔でも怪物でもない、ただの人間だと思い知らされる』
「……お褒めに預かり恐縮ですわ。兵隊さん」