悪い人と悪い海賊

悪い人と悪い海賊


無双エアプ民が書いた無双設定SS

当然のごとく黒コビは相思相愛




「射撃陣形!砲弾お願いします!!」


緊迫した戦場に、凛々しい号令が響き渡る。未だ少年らしさが色濃く残る澄んだ声は、絶えることのない怒号や銃声にかき消されることなくその場にこだました。


コビー大佐の指揮の元、規則正しく陣形を組んだ海兵たちから一斉に砲弾が放たれる。

まっすぐに空へと伸びる弾道目掛けて目にも止まらぬ速さで宙を駆け登り、コビーは砲弾を敵勢へ思いっきり蹴り下ろした。

大勢の敵を巻き込んで地面に激突する砲弾の雨は大きな風塵を巻き起こし、辺り一面を覆い隠すように広がっていく。

コビーが着地した、その瞬間。突如土煙の中から、巨大な腕が伸びてきた。


「なっ……!?く、黒ひげ!!」

「よォ。奇遇じゃねェか、英雄」


砂塵の中からいきなり現れたのは、なんと四皇黒ひげであった。

その凄まじい怪力で胴周りをがっちりと掴まれ、ぎしぎしと骨が軋む。どれだけ身じろぎしようとも抜け出せそうにない。


「くっ……!なぜ、あなたがこんなところに!」

「んな細けェことなんざどうでもいいさ。…………それにしても、随分とイイ格好してるじゃねェか。まるでおれのためにあつらえたみてェだな」

「えっ?」


全身を這いずり回るねっとりとした視線を受け、コビーは今の自分の格好を思い出した。

通りすがりの歌姫によって着せられた、いつもとは正反対の海賊じみた黒衣。細い身体の線を際立たせる黒光りしたレザーの質感、そして腰に絡み付いたチェーンやまるで拘束具のようなブーツの意匠の艶かしさなど、着ている本人には預かり知らぬことだ。


「や、あの、これはウタさんに無理矢理………」

「ゼハハハハハッ!お前ェもようやく海軍辞めておれの嫁になる決心がついたようだなァ!歓迎するぜ、コビー!」

「ち、違いますよ!勝手なこと言わないでください!!」


大声で怒鳴り立てるその顔は、リンゴのように真っ赤だ。そんな、お嫁さんだなんて、などともごもご呟きながら忙しなく目を泳がせている様は、照れているようにも見える。

満更でも無さそうな上官の態度に一瞬呆然としかけるが、そんな疑念を振り払ってその場の海兵たちは一斉に黒ひげへと銃を向けた。


「ふざけるな!コビー大佐を離せ!」

「いけません、皆さんは下がってください!僕は大丈夫ですから!!」

「しかし……っ!」


慌てて部下たちを止めるコビーに、黒ひげは気を良くしたように鼻を鳴らした。


「フン、賢明な判断だ。……興が乗った。ちぃとばかし愉しませてもらうぜ、コビー」

「へ……?」


そう言って、困惑するコビーの小さな身体を横抱きにして腕の中に抱え込み、軽く口付けを落とした。まるで、海兵たちに見せつけるように。


「ちょ、ちょっと、ティーチ!?ここ、こんな人前でやめてくださいよ!!」

「という訳で、てめェらの大事な大佐サマは頂いてくぜ!じゃあなマヌケども!!」


黒ひげがパチンと指を鳴らすと、どこからともなくヴァン・オーガーがワープしてきた。その姿にまずいと思ったコビーは、咄嗟に部下たちへ声を張り上げる。


「み、皆さん!とりあえずこのまま撤退してください!どうか気をつけ」


すべてを言い終わる前に、オーガーはコビーを抱いた黒ひげごとその場から一瞬で離脱した。


その場に残された海兵たちは、呆気に取られて立ち尽くすばかりだった。まるで葬式のようなムードが立ち込める中、一人の若者が空気を読まず声を上げる。


「……あの、さっき大佐、黒ひげのこと名前で呼んでましたよね……。しかも親しげな感じで。あれって、どういう」

「おのれ黒ひげエエエエエェッ!!よくもコビー大佐をっ!!」

「許さんぞ黒ひげエエエエエエェッ!直ちに本部に応援要請をっ!!」


黒ひげ、許すまじと言わんばかりに、海兵たちは揃って怒りの雄叫びを上げた。


「え、え?……………ひょっとしてあの2人って、そういう……………」


青い顔をした若手海兵の疑問は、ヤケクソじみた男たちの怒号によって見事にかき消されてしまった。



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