恋愛リアリティーショーを見る神木家+有馬さん+ミヤコさんin事務所 1/2

恋愛リアリティーショーを見る神木家+有馬さん+ミヤコさんin事務所 1/2



演劇の打ち合わせと稽古が終わり、事務所に顔を出しに向かう。

直帰する前にミヤコさんと社長に今動いている舞台の案件を報告するためだ。

(ララライからアクアと有馬さんを彼らが主催する演劇に参加しないか、て打診されていることを伝えないと。前参加したドラマの最終回が良かったから、というのは父親として嬉しいけどスケジュールの関係はやはり2人に話を通さなければ)

「こんばんは、カミキです。」

「パパ!」

「あれ、ヒカル

今日は直帰じゃなかった?」

「カミキさん、有馬かなです!はじめまして!!」

「ヒカルくん、こんばんは。今日来る予定あったかしら…」

事務所に入るとルビー、アイ、有馬さん、ミヤコさんが談話スペースで集まっていた。華やかなものだ。

有馬さんに会釈し、嬉しそうに近寄ってくるルビーの頭を撫でながら要件を述べる。

「こんにちは、有馬さん。最終回観ました。演技、凄く。良かったですね

…確かにアイの言う通り直帰する予定だったけど社長達に報告することあったからね。

ミヤコさん、ララライからアクアと有馬さんにオファー来ました。まだ仮ですけど、全国公演予定です。」 

後ろから私⁈と驚く声とルビーとアイに良かったね!!て祝われる声を背にしてこちらです、と今日金田一さんと話をした内容の資料をミヤコさんに手渡す。時期的には数ヶ月先。受けるかどうかの最終判断は役者本人だが会社判断が先に必要だ。

壱護さんはいらっしゃらない様なのでひとまずは副社長に。

「ありがとう…へぇ、凄いわね。2人のステップアップにもなるし、良い経験にもなりそう。

壱護には私から話しておくけど副社長判断としては問題無いものと見ます。」

「それは良かった。後はアクアにも聞いておきます。」

あと大輝も出るんですよーとこの場に居ないもう1人の息子のことも話をしておく。

ララライが関わっているので当然だがキャスティングとしては真っ先に内定した。

「大輝くん、ドラマの主役も決まってるし今1番注目されている俳優よ?父親としては鼻高々じゃない?」

「誇らしいですけど女性関係は気をつけて欲しいですね。舞台の世界て大らかすぎるから」

…僕自身のことも含めて。手が早いというか、何というか。僕とアイのスピードとか。

「…お父さんとして気をつけてあげて」

「勿論です。だけど大輝も良い年齢ではありますから難しいところで…」

そうよねー…と言いながら苦笑するミヤコさんと僕。

実際何処まで制すれば良いのか、正直困っている。僕やアイ自身、同じ年齢の時は自分達が突っ走って来たことの代償を周囲の協力をもとに支払って来た状態だったし。

金田一さんにも声はかけておくか。


ひとまず報告を終えたので、彼女…有馬さんにきちんと挨拶をしたい。

「先程は会釈で済ませてごめんよ…はじめまして、有馬かなさん。息子がお世話になってます。いや娘もかな?舞台の話、

君の演技は光るものがあるのでこの話受けてくれると嬉しいな」

彼女に改めてきちんと挨拶と仕事の話を伝える。息子と妻の初共演の映画に出ていた天才子役。

素晴らしい演技力の持ち主としてずっと注目していたので会えて嬉しい。

「いいいえいえ!アクアには逆に助けられたというか…むしろお世話になったというか…こちらこそ、お仕事の話ありがとうございます。

見込んでいただいた恩は必ず演技で返します」

強い瞳と意志で返してくれた。

彼女はアクアが言うには素晴らしい演技力に反して実力を発揮する機会を長らく失われていたとのこと。

だが、「今日から甘口で」の最終話までの演技と最終回の演技を比べて実感した。

どんな演技も出来るからこそ敢えて周りの演技に調和させる方を選び、再起の機会を伺っている。本来は最終回で見せた様な

「恋する乙女」を一瞬で演じきれる程の技量がある。役者を見出す立場にいる人間としては是非とも跳ねて欲しい人材だ。

「今はたまに舞台に立つレベルなほとんど役者業はやめている

『苺プロの役員その1』状態な僕がいうのは烏滸がましいが…君の才は素晴らしい。なら、そんな才能が活躍する場を持って来てこその芸能プロダクションのスタッフ、というものさ。

仕事をしただけ。だから恩なんて感じなくて良いよ」

「それでもです。私の演技を褒めてくれる人なんて何年ぶりかな…凄く、嬉しかった…だからいただいたお仕事は頑張ります」

「そこまで喜んでもらえたら従業員冥利に尽きるね…分かりました。有馬かなさん、実際の舞台入りは先だけど期待しています」

ありがとうございます!と気持ちの良い礼をしてくれた彼女。どんな演技を見せてくれるのか楽しみだ。

「パパ、先輩とお話し終わった?」

ヒヨコっと後ろから顔出してくるルビー。

有馬さんとの話が終わるまでアイと何かTVを観ながら待っていたらしい。

彼女は最近、先程の有馬さんと2人で幼い時の夢のアイドルとしてデビューするために日々レッスン等頑張っている。

(有馬さんのアイドル勧誘はウチのアクアの口車に乗せられたとかなんとか…アイ曰く『父親似だね』と言い切られた。解せない)

この子達の頑張りがどの様に結実するか、アイと2人で日々楽しみに見守らせて貰っている。

「やぁルビー。学校お疲れ様。友達沢山できたかい?」

「あの不知火フリルと一緒にご飯食べる仲になったんだよ!凄くない⁈」

「フリルちゃんと?同じ学校なんだっけ。良かったね、友達沢山作りなよ?パパとママ、お互いが友達状態で友達らしい友達いないから」

「うわー…知ってたけど両親が友達いない事はっきり言われるとリアクション困るなー…」

笑って流して欲しいな。

「いつもは家に居る時間なのに珍しいね、アイもルビーも。何かあったの?」

「ヒカル、忘れた?今日アクアが恋愛していく一部始終を数ヶ月かけて描いていくの始まるじゃない」

「恋愛…ああ!鏑木さんのやつか!!忘れてたなぁ…息子が取って来た仕事で色々話をしたやつだ」

仕事取って来て凄いね⁈て褒めたやつなのにうっかり忘れてた。

「お兄ちゃん彼女作っちゃうのかなー?どうなるんだろ?」

「い、いやーこの番組ではあくまで擬似的な恋愛模様を楽しむやつだから?実際に付き合ってるところとか僅かなんじゃないかしら?前の前の組みとかすぐ別れたじゃない?あんな感じよあんな感じ…」

「かなちゃんいつになく饒舌だねー…アクアのこと、不安?」

「違いますから!娘さんに一般的な恋愛リアリティーショーの楽しみ方教えているだけですから!!」

楽しそうな3人を横目に参加者を確認する。大輝から一度紹介されたララライの後輩の名前があった。

「黒川さんも出るのか…キャラじゃないと思っていたが、事務所の意向かな?

あとは…アイ、MEMちゃん出るんだね。君の大ファンの」

「そうそう!ラジオで一緒に出た時宣伝受けたし、アクア出るから観ないとねー♪」

まさかアクアを入れて知ってる顔が3人出るとは…

「僕も観てから帰ろうかな。有馬さん、せっかくだし帰りは送っていくよ。危ないし。」

「ええ⁈悪いですよ!!タクシー使いますって!」

「良いから良いから。娘と妻と一緒に帰るついでだし、ね?」

アイもルビーもOKと腕で丸書いている。

決まりだ。

「分かりましたけど…ああ〜!押しに弱いなぁ私〜!!」

何故か1人頭抱えて悩み始めた有馬さん。

ルビーの方見ると口パクで

『お兄ちゃんにも押し切られてアイドルになったから』

とのこと。

なるほど…事務所に所属している間は守ってあげる必要がありそうだ。

放送時間が来たのか、ミヤコさんがTVを付ける。

「始まるわよ。アクアが出る恋愛リアリティーショー『今からガチ恋♡始めます』」

「長いね、タイトル」

「アイ、ミヤコさんが名付けた訳じゃないからね?…今回のキャストの紹介か。」

ツラツラとモデル、ダンサー、バンドマン、女優、youtuberと出てくる。

若いのに凄い有望株ばかりだな。僕自身声かけたい子達だ。

…アクアにも良い刺激になると良いな。

さて我が息子の番だ。

『アクアです。いやーめっちゃ緊張するわ♪』

僕の息子だけど僕の息子じゃないぞ。

誰だ君は。けど見覚えあるなぁ…この感じ誰だ?

「「誰ぇ⁈」」

「このキャラ付け、ヒカルじゃない?」

「なるほど、僕か〜…え?僕ってあんな感じ?嘘でしょ?」

アクアに対して良いリアクションする有馬さんとルビーとは対照的にアイがさも当然と言わんばかりに言い切った。ミヤコさんも頷いてる。

「えー…僕、あんなに胡散臭い?常に真摯的に相手と折衝してるよ?」

「けどさ…前、ゆらちゃんと話してるの見たけど滅茶苦茶胡散臭かったよ?」

「ヒカルくん、気づいてないかもだけど…結構距離感近い状態で相手と接しているから正直トラブルにならないか不安なのよ…」

散々な言われようである。味方が居ない。

『MEMちょも可愛いね!めっちゃ照れる…』

「「は?死ね」」

「「ルビー⁈」」

確かにあのキャラ付け動画と思うけどお兄ちゃんにその口の聞き方良くないよ。後有馬さん。その両親がいる前でその罵倒はやめてほしい。

「だってママ!お兄ちゃんが若い女に下心ありありだよ!浮かれてるよ!!」

「そこは私もヒカルみたいで気になるからお説教するけど」

「待って。アイ、待って」

「アクアだってほら、役者さんだからメディア用の分かりやすいキャラ演じているんだよ。ヒカルみたいで私も気になるけど」

「アイ、僕なんかしたかな…?」

何故かジト目で僕を見てくるアイ。身に覚えが無さ過ぎる。

「まあまあ…アイが言った様に番組成り立つためだから、身近にいて番組受けしてかつ、女性ウケ良さそうな人をモデルにしただけよ」

ミヤコさんからの追撃を食らう。

おかしいな…妻一筋、家族一筋でやってきたのに言われのないことを言われている気がするぞ。

「分かるけど…これ、最後に告白して恋人になるんですよね?」

「そうね。そう言う番組だし」

「…告白成功したらキスもするんですよね?」

「定番ね」

有馬さんが話を切ってくれた。

ありがとう、有馬さん。もっと仕事見つけてくるよ。

続ける様にミヤコさんにたずねる。ミヤコさんの答えを聞くたびに沈んでいく有馬さんの表情。もしや…

「なんで…この仕事受けたんだろ…アクア…」

「貴女も女優続けていたらいずれキスシーンとかも求められる。割り切れる様になりなさい。このままだとキツいわよ〜?」

落ち込む彼女にミヤコさんが少々冗談めかしてアドバイスを送る。有馬さんは複雑そうな表情のままだ。反対に我らの愛娘は興味が削がれたのか携帯をいじっている。

丁度隣に来ていたアイにこっそりと声を掛ける。

「アイ、有馬さんもしかして…」

「うん。ヒカルの思っている通り。

ふふ…なんか私嬉しい。息子が誰かから愛されてるの見るの、凄く笑顔になっちゃう」

「アクアがどう思っているか次第だけど、若者達には危なくない範囲で楽しんで欲しいね…アイ、有馬さん慰めてあげて?僕だとコンプラに引っかかるから」

アイはりょーかいと笑うと有馬さんに近づき声を掛けていた。後は大丈夫だろう。


「気になるなら今度ご飯食べにこない?アクアもいるし、もう1人の息子の大輝くんも帰ってくるから」

「ええ⁈ひ、姫川大輝!…さんも⁉︎ご飯…お呼ばれ…けどすっぱ抜かれたりは…」

「私と入れば大丈夫だよ♪」

…うん、日程決まれば僕もスケジュール調整しておこう。

アクアにどんな現場か聞いておきたいな。

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