恋の針は動き出す

恋の針は動き出す

こんにちは

小さい頃から、あの子が好きだった。

春のように暖かくて、太陽のように明るいあなた。

「あのね、アルトリア……オレ、もしかしたら…」

「んー?なぁに?」

「…ううん!なんでもない!それより次は何して遊ぼっか?」

「お相撲さんごっこしよ!!」

「えぇ~~、サッカーじゃないの?」

「わたしがしたいの~」

今にして思えば、この頃から歪み始めていたのかもしれない

でも、そんなことよりも、あの子が言いたかったことは。きっと大事な事だったんだろう












そして、その少しあとに悲劇が起きた。

「ねぇママ、リツカん家、どうしたの!?」

「そうねぇ…確か親御さんの会社の都合…だとか」

あの子が、突然わたしの前から姿を消した

あの子が言いたかったことは、きっと残酷で、辛いことだ

だから言えなかったのかもしれない

「………なんで……なの…」

きっとわたしが泣いて引き止めると思うから、言わなかったのかもしれない

「わたし…まだあなたに何も言ってないよ……」

それでも、一言言いたかった。

あなたが大好き。だから一緒にいさせて。

それを言う機会すら与えてくれなかった。

「リツカの……ばか…」








それからというものの、わたしはまるで魂の抜けたかのように、ただ勉強だけをしていた

友達の大半もあの子を通してできていたもので、ほとんど話さなくなってしまった

幸い数人の友達とは話せてはいるけど、それでもわたしから話すことはあまりなかった

最大のライバルとも言っていいかもしれないあの子がいなくなったから、言い寄ってくる男子も当然居た、全員振ったけど


そして困ったことに、毎日あの子に会いたいと。欲を抱いてしまった

なんとか発散しても、すぐに溜まってしまっておさまることを知らない


わたしが持っていたあの子の記録は、卒業アルバムの写真と、お互いの家族と一緒に遊んだ時の写真くらい

わたしの恋は、あの時から止まっていた。

それは中学生になっても、高校生になっても変わることは無かった。

あの子が戻ってくることはなく、わたしは欲を溜め続けるだけの毎日

もう、会えないのかもしれない。そう不安になった時もあった


…でも、わたしの太陽は、いつまでもあの子だけだった

あの子がいてくれたという事実だけが、わたしを奮い立たせてた















それから、高校を卒業した。

私の性格も落ち着きが出てきて、大学生になる頃には別人になったと言えるほどに変わっていた

「…あの子は…リツカは、気づいてくれるでしょうか」

今度こそまた会えるかもしれない、そんな淡い期待を寄せて。大学へ向かった


今日は入学式、周りは初めて出会う人ばかりで。その中で私は一際目立っていた

…まぁ、興味が無いからいいんですけど


今日は誰とも話さず帰る気でいたので、ちょっと居心地が悪い。


入学式が終わり、新入生の大半は帰宅していく

当然私も帰るつもりであるけど、ちょっとだけ探検してから帰るつもりだった


…会えなかったな


誰もいないとこでため息を漏らして、やっぱり帰ろう。とした時だった


「藤丸くーん!まってよー!」

「ふじまる…?」

懐かしい響きだった。あの子と同じ苗字

…まぁ、ただ被っただけでしょう。

ほんのちょびっとだけ期待を寄せて、声のした方へとこっそり向かった、でも















「だから行きませんって!このあと用事があるんですーー!!」

目を疑う光景だった。あの人は、あの子に似ていた。

でも、もし違ったら?不安がよぎる。

「ちょっと可哀想だけど…ごめーん!!」

あの人はかなり足が早くて、追いかけていた女の子をすぐに撒いた

罪な人ですね…と思いつつ、ちょっとだけ気になるのでこっそり跡をつけてみた





あの人は敷地を出ていて、近くの公園で息を整えていた

「…はぁ、もう~~!折角こっちに1人で来たのに。いきなり大変な目にあったよ~!」

私は木陰に隠れながらあの人を観察している、まだあの子だと断定できない以上下手な行動はできなかった。

「それにしても、随分あの子に似てますね…まるであの子本人みたいな…」

「!?誰かいる?…まさかまだ追いかけて…」

思わず声が出てしまい気づかれてしまった

咄嗟に口を抑えてしゃがみこむけど、あの人はどんどん近づいてくる


「そこにいるんでしょー、出てきてよー!」

1歩、また1歩と足音が近づいていき、それに合わせて私の心臓の鼓動も早くなっていく

「はぁ~……あれ?違う人……!?」

そして足音がすぐそこまで迫り、私は恐る恐る音のする方へと向いた







わたしの中の時計の針が、動き出した気がする






「ど、どうも…?」

目と目が合ってしまった。間抜けな挨拶をした。

心臓がバクバク鳴ってる気がする、なんて言われるのだろうか

そもそもどう言い繕うか、色々な考えが頭を過ぎった


…でも、あの顔は、間違いなく

「……ああ~~~!!!アルトリア!!」

あの子のものだった

「…リツカ…なのですか?」

「!!覚えててくれたんだ!」

あの子は、彼は。もう一度私の前に現れてくれた

私は躊躇わず抱きついてしまった、こんなところ誰かに見られるかもしれないのに

「…忘れるわけ…ない……っ!!」

安心しきったからか、涙がこぼれ落ちる。

「よかった、また会えて」

彼はどんな表情をしてるのかわからないけど、成長しても彼は彼のままだった

あの子が彼になっても、変わらず私の太陽であり続けてくれた

「なんであの時…何も言ってくれなかったの…!」

「ごめん…オレに言う勇気がなかった」

他にも言いたいことがたくさんあるはずなのに、真っ先に出てきたことがその事だった。

再会できたからいいはずなのに、私はずっとあの頃のことを引きずっていた

「リツカに…好きって言いたかった。一緒にいてって…言いたかった…!!」

「…アルトリア」

「でも、わたし…ずっと言えなくて…」

彼はずっと私を受け止めてくれていた。私の話も聞いてくれた

「アルトリア…今からでも…平気?」

「え……?」

言葉の意味が、よくわからなかった。

というよりは、わかったとしてもそれはただの自分の願望ではないかと否定してしまうからだ

「こんな言い方良くないよな…」

「アルトリア…オレ、アルトリアのことが好きなんだ」

「…へ?」

彼は気恥しそうに頭を搔いた後、真剣な眼差しでこちらの目を見つめた

「正直、小さい頃はわかんなかった。なんとなく寂しかっただけかもしれない」

「…でも、それが好きだと言えるなら…オレも、アルトリアが好きなんだ」

正直、嬉しさ半分困惑半分だったと思う

脳が情報を処理しきれずにパンクしているからだ

「だから、オレと付き合って欲しい!!」

「ふぁ……ふぁい……」

こんなに幸せな事はきっと数回あるかないかだろう


…でも、長年積もっていた欲が、爆発しそうになる

さっきからずっと我慢しっぱなしで。そろそろ限界

流石にここでするのもどうかと思うし、場所を探したいけど近くにそういう場所なんて…


あった。すぐそこに、いい感じのところが

「リツカ、一緒に来てくれますか…?」

「え、今から!?着替えないの!?」

「もう待てません!今からホテルに連行します!!」

彼の手をグイグイ引っ張っていき、近くのラブホテルへと連行していく

「ご、ご休憩!?」

「はい、休憩です、最悪宿泊も頭に入れてください」

「オレ今日はお金そんなに持ってきてないよ!?」

「大丈夫です、いざとなれば私が払うので」

「オレ経験ないんだけど…」

「それはよかった、わたしもはじめてなので同じですね」

「む、無敵だぁぁぁぁ!!!」

今の私は誰にも勝る存在。つまり百獣の王とも言えるべきでしょう

今日は、長い夜になりそうです













そういえば、スーツ姿。はじめてみたけど凄いかっこいいなぁ

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