怪文書
『元気に生きてな……ウチよりもずっとずっと長生きしてくれ』
『お姉ちゃんも一緒に逝こう?私達三人一緒が一番でしょ』
『……もういいよ。私一人で逝くから』
ガバリと勢いよく起き上がる。
胸を押さえて荒くなっている息を落ち着かせるよう努める。
深く息を吸いゆっくり吐く、深く息を吸いゆっくり吐く。
何度も深呼吸を繰り返し、息を整え心臓の動きを大人しくさせていく。
“………”
服がべったりと体に張り付く程かいた汗を流すため、ベットに立てかけていた杖を支えに立ち上がりシャワー室へと向かう。
シャワーで綺麗に洗った体に、黒色のシャツを纏い、その上に白を基調とした上着を羽織る。
最近袖を通したばかりで、着慣れずもどかしい気持ちを感じながら執務室へ向かう。
執務室の椅子に座り机の上に置いてあるタブレットの電源を入れる。
「おはようごさいます、先生!」
“おはよう、アロナちゃん”
タブレットの画面に映る淡い青色の髪のセーラー服の小さな女の子へ挨拶する。
タブレットに搭載された人工知能、アロナ。正直、この手の話は苦手であまり深く理解はできていないが、私のお仕事のお手伝いをしてくれる子で実際不慣れな私のサポートをしてくれてとても助かっている。
「他の生徒達から助けを求める手紙が届いているんですけど、その中にちょっと不穏な手紙がありまして……先生に一度読んでもらった方がいいかなと」
アロナから渡された手紙を手に取り読む。
差出人はアビドス高等学校という所の生徒だった。
曰く、暴力団に校舎を狙われて学校が襲われていること。そして物資の底が尽きそうだということ。私の力を借りたいということ。
アロナちゃんからアビドス高等学校についてを聞く。
街中で遭難するという噂が立つ程広大な自治区で、今は気候の変化で街が厳しい状況にあるらしい。
“…………”
不穏極まりない内容の手紙、そしてその場所は大変広くそして厳しい気候があるという。
他にも手紙がある中で、果たして受けて良いのだろうか……。
『大人、先生はいつだって子供…生徒を守るために存在しているんや』
“……アロナちゃん、アビドスへ行くわ”
「すぐにですか!? さすが、大人の行動力!」
「わかりました! すぐに出発しましょう!」
タブレットと杖を持ち立ち上がる。机の横に無造作に置いていた名札を手に取り、執務室を後にする。
連邦捜査部S.C.H.A.L.E
瀬戸 天音