怖そうで怖くない話
オーブン「暑ィ~……」
ダイフク「オーブン呻くな、お前の存在と声が暑ィんだよ。……なァ本当に無いのか?」
シド「申し訳ないゾ、キミ達に回せる分までのひんやり薬の材料が足りなくてな」
オーブン「まァ国の為に使った、っつーならそりゃ仕方ねェけどよ」
カタクリ「解ったなら帰れ。お前らの為に使える分はない」
ダイフク「シドとの二人きりのイチャイチャタイムを邪魔されたからって冷た過ぎるだろ」
オーブン「でもただ帰るのも勿体ねェな。折角ここまで来たんだし、何か涼しくなるような話とかねェの?」
シド「涼しくなる話……とはなんだゾ? 雪山の話とかか?」
オーブン「種類は様々あるだろうが恐怖を感じると涼しく感じるな、別にどんな種類の話でも良い」
ダイフク「不気味な話、理解不能な話……例えば幽霊や事故や生き物の恐怖とかどうだ?」
シド「ゾ……それなら、あるゾ!」
オーブン「おっ、どんな話だ?」
カタクリ(これはしばらく帰らねェなこいつら……)
シド「そうだな、あれはカタクリと共にオレの故郷のハイラル島に行った時の話だゾ!」
オーブン「タイム」
シド「えっ」
ダイフク「涼しくなる話をしろっつったろ、誰がお前らのラブラブな熱ィ話を聞くか」
シド「ゾッ!? そっ、そんなんじゃないゾッ!? あれはオレ達がまだ結婚してすぐの時だったし……」
カタクリ「……ああ、あの時か。確かに結婚した夫夫ではあるが、まだ良い友人だった時だな」
シド「そう、フィローネ地方に行った時だ。題名をつけるなら……落ちた話!」
ダイフク(……恋に? いやそうじゃねェとは言ってたな)
オーブン(ゾーラの王子の地位……ではないか。現役だし。なら崖とかに落ちた話か?)
シド「あの時はなんだか忙しく、大変な物事が重なりカタクリは疲れ気味だったんだゾ。そこで一口食べるだけで元気になるというドリアンの取れたて新鮮を食べさせたいと思い現地に行ったんだ」
カタクリ「お前のその気持ち、それだけでおれはすぐに元気になるが」
オーブン「それ今現在のお前が言うと下ネタにしか聞こえねェわ」
シド「でも探しても中々見付からなくて……その内にポツポツと、そして瞬く間に土砂降りの雨が降ってきたのだゾ」
カタクリ「あの時はやらないと行けない事が色々重なってて……まァ、疲れて少し注意力が散漫になっていた。雨雲にも気付かないくらいな、そんなおれをシドは沢山心配してくれた」
シド「でもオレが連れ出したから雨に降られてしまって……能力者である彼は水に弱いと聞いてたから物凄く焦ったゾ…」
ダイフク「別に雨じゃなんともならねェけどな」
シド「勿論今は解ってるゾ? でもその時は知らなかったんだ」
カタクリ「バタバタと慌て走るシドを落ち着かせようとおれは腕を、肩を掴んだ。急に止めたから転ばないように強く。強く」
シド「カタクリの手がオレの体に触れた途端……それは……そう、世界がまるで止まったかのような感覚になったんだゾ」
オーブン「ん?どういう事だ?」
シド「体が硬直して動けなくなり……目の前が真っ白に染まって全身痺れて、目の前にいるカタクリしか目に入らなくなって、体の中が爆発したかのような凄まじい衝撃が頭の先から足先まで走ったのだゾ」
オーブン「……それ、は」
ダイフク「カタクリの野郎との恋の始ま……」
シド「そう!落雷事故だったのだゾ!」
オーブン「……はっ?」
カタクリ「つまり雷が落ちたっつー話だな。おれが金属製のものを身に付けてたからおれに落ちた、ハイラルの雷はこっちとは違い金属製の物に落ちるらしい」
シド「オレらゾーラ族は石加工の物ばかりで金属製の物は身に付けないから、ついつい失念していてな! ゾッゾッゾッ!」
ダイフク「……えぇ……?」
シド「どうだ、事故の話だったが涼しくなったか!?」
ダイフク「……お、おう。まァなんつーか……スゲェ話だったわ」
オーブン「題名の通りではあったが、よく無事だったな」
シド「いやぁ、オレ一人だったらヤバかったゾ! オレらは電気に弱いからな!」
カタクリ「ビリビリに痺れ気を失い瀕死のシドを抱え、結果的におれを元気にしようと探していたドリアンを食わせる事で事なきを得た訳だ」
ダイフク「で。お前は何の問題もなくピンピンしてた訳だな、流石だわ」
オーブン「……予想外な着地点で驚いて結構涼しくなったな」
シド「そうか! オレもちゃんと彼らを怖がらせる事が出来たのだゾ、なぁカタクリ!」
カタクリ「ああ、流石だな……最高だ」ナデナデ
シド「えへへ」
ダイフク「うわ一瞬で温度上昇させやがった」
オーブン「結局……来た時と同じかもっと、暑ィな……」