怖い夢
ロドレの全年齢
いつもの現パロ
よろしければどうぞ!
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最初は、風の音かと思った。だが、どうやら違うようだ。その音は、隣で眠っていた恋人の喉から発せられている。
いつもはベッドの隅に丸くなって静かな寝息を立てて眠っているX・ドレークが、今日に限っては、なにやら悪い夢を見ているようだった。呻き声のような声を上げている。トラファルガー・ローはその様子をじっくりと観察していた。なにせ珍しい。眉間に刻まれたシワが深くなり、呼気は通常の睡眠時よりも少し荒い。胸元に顔を寄せる。脈拍は正常……だが、心配だ。
「ドレーク屋」
軽く肩を揺さぶる。途端、跳ね起きた。毛布で身体を隠し、怯えた目でローを見ている。ふわふわの猫っ毛が、汗で肌にくっついていた。
「起きたか」
ローは彼を安心させようと、つとめて優しい声を出した。彼はギクリと肩を揺らし、目線をうろうろとさまよわせた。
「あのっ……な、なにか、不備が、ありましたか……」
「? どうしたんだ」
「あっ……ごめ、ごめんなさい父さん。すぐにっ」
目の焦点があっていない。こいつ、まだ夢を見ている。これは良くない。ローはドリィを優しく抱きしめる。
「ドレーク屋」
「ひっ……は、い、なんですか……」
まぶたには涙をうかべ、震える声で返事をするドリィの頭を撫でた。
「おれだ。わかるか、ドレーク屋。ローだ。お前の恋人のトラファルガー・ローだ」
「とら、ふぁるがー、ろー」
「そう、トラファルガー・ロー。お前の父さんじゃないよ」
ぽん、ぽん、と優しく背中を叩き、額や頬にキスをする。呼吸がだんだんと落ち着いていき、ドレークはようやく目を覚ましたようだった。
「ロー……ああ、ロー……すまない、夢を見ていたか……」
ドレークは縋り付くようにローに抱きついた。その手は小さく震えている。ローはドレークに口付けると、その身体を横たえた。ちゅっちゅっと何度も何度も色んなところにキスをして、ローはドレークの手を取る。そっと大きい手を、震える手を自分の頬に添える。
「……大丈夫か」
「ン……大丈夫だ。すまねェな……」
「謝るな。お前は何も悪くない。なにか飲むか?」
ドレークはしばらく考えると、親指でツイとローの唇をなぞった。
「……ホットミルク……寂しいんだ」
珍しく、本当に珍しく、ドレークが甘えた声を出した。ローは一瞬間硬直し、すぐに口角を上げた。唇をなぞる親指を軽く食み、舌をはわせた。
「……いっぱい飲ませてやるよ、ドレーク屋」
怖い夢、寂しい夢を見たあとには、二人の間ではお決まりのパターンだった。