忘れじの誓い

忘れじの誓い

アラバスタ民

深夜22:00のアラバスタ王国

クロコダイル率いるバロックワークスによって引き起こされた騒動も無事終結し、人々はみな久方振りの安息に入り人も街も皆寝静まっていた

同時刻の王宮の寝台

王族と限られた人物しか入ることを許されないこの場所では、ある一組の男女が、最初で最後の逢瀬を交わしていた…


「くうっ…ビビ…ビビっ…!!」

「んっ…ルフィ…ルフィっ!…すき…」


深く唇を交わし、肩を抱きあい、脚を絡ませ、男と女はぎこちなくも、互いを繋ぎ止めるようにかたく身を寄せ合う。男の懸命さとベッドシーツにうっすらと残る紅いシミは、互いがはじめてであることの何よりの証であった。

ふと、女の頬に一筋の涙がこぼれる。


「っ!?悪いビビ……やっぱりまだ痛かったか?」

「ううん違うの。わたし、あなたとこうなれて本当に嬉しくて幸せで…でも、この先のことを思うと、怖いの」

「怖い?」

「これから王女として国のため、国民の皆のために生きる…そのことに後悔はしてない。この国の人達を愛してるもの…

でも、そのためにこの先知らない誰かに抱かれて血を繋いで、色んなものを背負って、そうしているうちにあなたや皆のことを忘れていってしまう…わたし(王女)はわたし(ビビ)じゃなくなっていく…そうなるのが怖いの」

「ビビ…」

「本当はもっと冒険だってしたい…あなたと、皆とずっと一緒にいたい…でもそんなわがままはもう許されないから……ごめんなさい…だからわたし」

「ありがとう」

「え…?」


涙は止めどなく溢れていく。男は壊れ物を受け止めるように、女を優しく自らの懐へと抱きよせた。


「ありがとなビビ…思ってたこと全部言ってくれて。おれもお前とずっと一緒にいてえけど、それはできねぇんだよな…わかってんだ。この国にはおれ達以外にもお前のことを大事に思ってる奴がいるし、おれ達は"海賊"だから」

「………うん」

「でもな。おれはどんなことがあっても絶対にお前のことを忘れない。約束する。

だって、おれはキレーな服を着た王女じゃなくて、危なっかしくて頑固で優しくて、どんなにボロボロになっても一生懸命なビビを好きになったんだ。そういうお前だったから、惚れたんだ」

「ルフィ…」

「お前がこの先どう変わっちまっても、お前が本当に苦しい時はいつでも助けに行くし、いたくない場所があるならそこからおれが連れ出してやる!それでもダメなら………海賊王になって、お前がお前でいられる世界を創る!絶対に諦めたりなんてしねぇからな」

「………っ」

「だから、もう泣くな。お前が泣くと、おれも悲しくなっちまう……今は、今だけは…あったかい気持ちでいよう」

「ふふっ……そうね…ありがとう。わたし、あなたを好きでよかった」

「おれもだ….ビビ」

「………………………」

「……んっ……うむっ……はむっ…」

「んっ……れろっ……ふむっ……」


彼らは再び互いを求め合い、一つに溶け合っていく。もはやそこに垣根はなく、思慕という感情の波は一層激しさを増していく。


「あっ!!はぁっ!ああっ!すきっ!!すきいっ!!!」

「おあっ!!ぐっ!はっ!あぐっ…ビビ…おれ….もう…」

「いいわ!きてっ!わたしの中に出してぇっ!!」


波はやがて限界を超え関を破り…

「「ああああっっっっ!!!!」」

ひとつの渦の中に混ざり合った。


「……はーっ…はーっ……気持ちよかった……」

「あっ……はっ…お腹……あたたかい…」

「ビビ……その……悪りぃんだが….まだ」

「………うん…….もっときて…わたしが忘れられない程に、刻み込んで…」


2人の夜はまだ長い。この後も彼等は互いの存在を確かめ合い、この夜は互いの新しい未来の種を育むための、出発点となったのであった。


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