心のウチ
「ンアーッ!!『大女優として振る舞う貴方も素敵ですが、僕は一人の女の子としての貴方が見たいです』って!!なんです!!あの完璧なエスコートは!!冷やかす空気にもならないじゃないですか!!」
「まず、冷やかしてやろうと言う魂胆が嫌らしいです。二人の仲を素直に応援することは出来ないんですか」
「ンアッ!そこのリバティちゃん!あたかも常識人みたいな振る舞いをしてますが!こうしてアースに着いてきている時点で、アナタも同じ穴のキズナもとい、ムジナですからね!」
「そんなキズナ要りません。私はただあなたが変なことをしないか…」
「ンアーッ!シャラップ!ドバイに行くので英語も嗜んでます!あいむふぁいん!」
「(この人の次走、ドバイシーマだって正式に発表されたっけ…?)別に先輩が何語を話していても良いですけど…あっ、二人が歩いて行ってしまいますよ…腕も組んで…仲良いなあ」
「ンアーッ!そんなカップルみたいな仕草を!」
「みたいな、じゃなくてカップルでしょう、どう見ても」
「何々?『私を一人の女の子にしてくれたお礼に、貴方の秘密も曝け出して良いのよ』?ンアーッ!キェーッ!!」
「雑な祈祷師みたいですよもはや。…タイホ先輩、ちょっと照れて靴を脱いでますね」
「はあ…タイホ先輩は憧れの大女優と仲睦まじい時間を過ごしているのに、アースの側にはリバティちゃんしか居ないなんて」
「リバティちゃんしか、って失礼ですね。そんなに嘆くなら、先輩も相手の一人や二人見繕ったらどうですか」
「ン、ンアーーッ!複数との交際を宣言だなんて!お巡りさーん!天国のお父さーん!ヤンキーローズさーん!チームリバティアイランドの皆さーん!可愛いお嬢さんが汚れてしまいましたー!」
「茶化さないでください!言葉のあやですよ!!言いたいのはそう言うことじゃありません!…まあ、何を言いたいかは分かりますよね」
「……うう」
「このやりとりも何回目でしょうね」
「何を言われるか予想出来ますもん。進研◯ミでやらなくてもわかりますもん」
「そんなヘタレの為のゼミを何度も開講されて悔しくないんですか」
「ンアッ!心なしかリバティちゃんの言葉のヘッドバットが鋭利になってる気がしますよ!?」
「ナイフでしょうそれを言うなら」
「キレやすい若者…」
「一個下なだけですよ」
「でもそこがしゅき…」
「はあ。…良いんですか本当に私で」
「はい?」
「貴女の側に居るのが私だけになっても」
「それは良くないですよ。リバティちゃんだって嫌でしょう」
「梯子を外さないでくださいよそこで」
「リバティちゃんにだってその気はないでしょう。アース、その気が無い人と無理やりなんて嫌です」
「(本当に変なところで理性的なんだから…)だからろくに進展しないんですよ。お師匠さんとの仲」
「んあー…あー…」
「砂になって消えてもダメですよ。集めますからね」
「何でホウキとチリトリ完備なんですかね…」
「あなたとの付き合いも長いですからね」
「…か、勘違いしないでくださいねヤンキーローズさん」
「何でそこでお母さんに許しを乞うんですか。本当によく分からない人ですね」
「人の気持ちなんて、分かった風に見えても分かるものじゃないですよ」
「…何良いこと言った風に纏めようとしてるんですか。今私たちがやってることって要はデバガメですからね。余計なことなんですからね」
「……、…良いなあ」
「(こうして眺めてる分には、夢見る女性なんですけどね)」
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───
「……見てくださいリバティちゃん。食べさせあいっこしてますよ。んあ…しまりの無い顔です」
「……あれを見てると、分かっちゃダメなんですけど先輩の気持ちが分かる気がします」
「でしょう?」