微睡みの現
ある日。出演
石川紫苑
坂野政
桜宮礼佳
———
眠くなるほどに暖かな日差しに思わず目を覚ます。覚醒しない意識が太陽を認識した瞬間にカッとなり、その眩しさに目を焼かれる。
「何してんだよ紫苑、教室で寝てるとか」
「日直終わったし帰ろーよ、紫苑!」
午前日課の春。目を擦りながら声の方向へ体を向けると、いつもの2人がいた。扉付近にも人影があり、よく見ると彼も待っていたようだ。
「う〜...ごめん、寝ちゃってたみたい」
「あはは、あったかいもんね、春」
「涎垂らして寝てたから随分良い夢見てんだなーって」
「え、うそ!?」
「うっそ〜!」
起き抜けに揶揄われるとなるとキツイものがある。何がって、体力と意識。思わず出掛ける拳を必死に抑えながら荷物の整理をして、立ち上がる。
「ほら、帰るんでしょ?だったら帰ろう」
「待ってたのこっちなんだけど?」
「はいはいごめんなさいねー」
「2人は変わんないなぁ本当に...あ、どうせならカフェとか寄ってこうよ、最近いいの見つけたんだ〜!」
軽快な声が響き渡る教室内。廊下で待ってた彼もこちらを見て一言。
「遅いぞ、石川」
「ごめんって」
どうして寝てしまっていたんだろうな、と1人思いながら4人で歩く。礼佳が政と話し、俺はそれを見ている。楽しげな2人を見ていると、途轍もなく心地よく、嬉しく思うのは何故だろうか?
「...あ、——————」
何もない日常に誰かの声が木霊する。でもそれを聞き取れるはずもなくて。後ろを振り返ると彼が窓の外を見ている。
「どうした?」
声をかけてハッとして、ようやくこちらを見る。何でもない、と言葉が返ると走って2人の元へ行った。
何だったんだろうな、今の。