御命落年玉
稲生紅衣メメ虎屋ダルヴァの主
剣司はお餅を食べながら穿界門を潜る...はずだったが食べながら歩いていたのが災いしていたのか盛大に餅をのどに詰まらせ何度か咳き込んだ
「お...美味しいからといって急いで食べるのは良くないか」
座って美味しく食べてから現世に向かおうと丁度良い場所を探す...ふとあるモノが目に付いた
「自動販売機がなぜここに?」
近づいてみれば随分と安い値段で茶や水あと何やらよく分からないドリンクが並んでいる 側面を見れば「十二番隊開発仕様:稲生’sチョイス!役立つモノが目白押しだヨ」と書いてあり随分と縦に長い
「現世で見る格安自販機のような物か...?安全そうなお茶だけ買っていくか」
小銭を入れ暖かい茶を買う ピロピロと電子音が鳴り「リーチ!」と音声が流れ...『当たり』と値段を表示する画面に小さく出てきた
「これは幸先が良い 余った分はどうしようか...」
もう一つ買った茶を取り出すのに夢中で『継続!』と表示されているのにはまだ気づいていない...
餅をつき各隊舎へと運ぼうとしている稲生と継家が歩いているとふと継家が
「そういえばまだ君からも貰っていないな くれないのか『お年玉』は」
「『お年玉』のう...おぬし吾より年上では無かったかの?とりあえず現世の者には各3万円ほどポチ袋にいれて渡すようにダルヴァという滅却師に渡しておいたのじゃ ポチ袋であればそのくらいが常識範囲内の上限であると聞いたからのう」
それを聞いて期待を膨らませたのか目をキラキラさせながら継家が手を差し出す
「せっかくだから私の分は普通の封筒に常識範囲外程度に詰めても良いぞ」
「総額一円だけでも非常識そうじゃからそれでも良いか?」
「待ってくれ 私たちは話しあう余地があるはずだ」
無駄にキリっとした表情でそうのたまう継家を見てムフンと胸を張りながら稲生は語り始める
「現世の者は現世の金でも良いが吾の現世で稼いだ金をガンガンこちらに使うと色々手続きが面倒な額じゃからな...そこで吾は十二番隊の者たちに頼んで『自動販売機』を作ってもらうことにしたのじゃ!現世の商品も減った所を継ぎ足すようにしてあまり大きくお金が動き過ぎないようにする作戦なのじゃ!」
「自動販売機なら結局買わなければならないではないか」
「多くの者が瀞霊廷にいながら現世の甘味を味わえるのじゃし 赤字に足を突っ込むれべるで安くして吾が補填するから大丈夫じゃ...払う分は自動販売機の設備維持費として割り切ってもらうぞ」
そうして歩いていると九番隊の隊舎が見えてきた...どうやら件の自動販売機を見に人だかりが出来ているらしい
「せっかくじゃから餅と一緒に飲む飲み物を買うのじゃ!ほれこれで買うと良いぞ」
稲生が継家に小銭を渡す 明らかにヤバそうな薬品の瓶などは避けて普通のコーヒーを買った ピロピロと電子音が鳴り「リーチ!」と音声が流れ...『当たり』と値段を表示する画面に小さく出てきた
「当たりがあるタイプの自販機か...ギャンブル好きな君らしいな」
「うむ!しかも継家が好きなぱちんこと同じたいぷの奴じゃ!」
「うん?」
微かに浮かび始めた違和感 稲生と関わる際にこの類のものを感じる時は...危険視号だと継家は嫌というほど実感している
「...スペックは?」
「大当たり確率1/77 継続率95%じゃ!」
つまり...当たりを引きやすいのに引いた後に何度も当たりを引きやすいパチンコなら存在しないバカ台である
継家が表示を見れば『継続!』と表示されている 押さなければさらには出ないだろうと待っていると
『押すことを諦めないで!!』と音声と共に表示され勝手に商品が出てきた
「ぱちんこでこういう演出あるんじゃよな~吾よく押すかどうか迷うんじゃ」と呑気に言っている稲生を横目に継家はため息をつく
「これでは5%の外れを引くまで出っ放しだろう...周りに居る隊士達に勝手に取るように言って隊舎に向かうか」
そう言って自動販売機に背を向け隊舎に向かう継家だったが
『押すことを諦めないで!!持って帰ることを諦めないで!!』
剛速球で受取口から缶コーヒーが飛んで後頭部に直撃しぶっ倒れた
「持ち帰り忘れ防止機能付きじゃぞ!...大丈夫か継家~?」
自動販売機の次弾は直ぐに装填され『継続!』と表示された
「先生ー!!大変なのよ!!」
「どうされました?そんなに焦って…忘れ物ですか?」
未だにゆっくりお汁粉を啜っていた教員の元へ春野が駆けてきた
「あっちこっちで自販機に隊士がボコボコにされてるのよ!!今自販機は十二番隊が強制終了しようとして自販機と戦闘になってるし!」
「ああ成程 怪我人を治すのに私の協力が欲しいということですね?」
「そういうことよ!」と言うと春野は教員を肩車し走り始める
春野の上で呑気にお汁粉を食べていた教員が目撃したのは...大量の缶やペットボトルなどの下敷きになって伸びている継家と剣司と涅マユリに「最低限の試験すらも通していないモノを勝手に設置するなど 信じられんバカだヨ」と真っ当な理論で怒られる土下座中の稲生であった