徒花に実は生らぬ

徒花に実は生らぬ


「おれのこと、愛してよ。」

と、どうしようもなく真っ黒な瞳で、どうしようもなく壊れた笑顔で、どうしても拒否できない声で言ってくるロレ公に興奮しなかったのか?と言われると嘘になる。

彼自身のアイデンティティであるご自慢金歯にもまだ精液がついてくすんでいて、チラリと見える真っ赤な舌にもまだほのかに他ならぬ僕の初恋の人のモノである白い粘着質なものが乗っていて、有り体に言うとまぁ、興奮しないわけないだろ!とかそういう言葉で飾らずに言うと、すごく興奮した。チンチンがイライラした。ハイな感情も落ち着いて虚無ばかり積もる。

言葉を借りるならそう、無垢を穢したい。という感情だろうか。

僕にとってのミヒャエル・カイザーが僕を染めてくれて僕に魔法をかけてくれる人間だとすれば、

僕にとってのドン・ロレンツォは僕色に染めたい・僕の形を残したい。そういう人間なのだ。

でもそれと同時に散々でクソッタレな初体験と思い出したく無い2回目のロレ公を見てると、僕の入る隙間なんて、それこそ彼の体の全てを暴いてしまってもどこにも無いとありありと感じさせられてしまって______。

あぁ、どうしようもないのは僕の方なんだな、と。虚しさを再確認してしまうだけだった。

ねえ、これからどうする?カイザー。

きっと、そう。隣の主人に問いかける僕の顔は………

『どうしようもないくらい』真っ黒で汚くて汚らわしくて、でもどこまでも本心からの笑顔なのだろう。




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