後悔

後悔


空をぼんやりと見上げる。ぼんやりと覚えている記憶によれば今日はどうやら母の日という日らしい。

「………お母さん…か」

私は母親というものをよく知らない。物心ついた頃に父に殺されてしまったから。

ほんのわずかに暖かくて優しい時間があったことだけは覚えている。それを純粋に信じられると言うには随分人に裏切られてしまったけども。

恨む気持ちはさらさらない。どんなことであれ最終的には私が選んで生きてきたんだから。だけど


…ねえ、お母さん。

私がお腹の中で育っていた時どんな気持ちでいたの?私が産まれた時は?

……私の事を愛してくれていましたか?


「…っ」

つん、とした感覚のあとに視界が滲んでぼやけていく。これはまずいと視界が揺れる中、咄嗟に黒い鳥居を呼び出して結界の中に入りこんだ。

立っていられなくなってその場に座り込む。とっくのとうに枯れ果てたと思っていたのに、涙は次から次へと零れ落ちて止まらない。

「ごめんなさい」

愛情を疑ってしまって

産んでくれたのにあんな人生を送ってしまって

結局家族がわからなくて

「ごめんなさい、お母さん…」



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