後にこれは「ロロノア式移動法」と命名された
激闘が終わり、サラリと新たな仲間が加わる事が決まってから一夜経ったスリラーバーク
チョッパーはウソップと共にルフィを捜していた
あの船長はいつも通りの量の朝食を食べ終わると、「いい事思いついた!」と言ってどこかへ行ってしまったのだ
そんなルフィを捜して二人は森を歩いていた
すっかり霧の海域を抜け、青空に照らされる森
明るいおかげで恐怖感はないが、それでもところどころに転がるゾンビの抜け殻は少し怖い
「こんな奴らが動いて襲ってきた時はどうなるかと思ってたが、さすがにもう動いてはこねェな」
「うん、影はモリアが倒された時にみんな解放されたからな。それでも、やっぱりちょっと怖い…」
そんな事を話しながら歩いていた時だった
バサ…バサ…
何かがこちらに近づいてくる音がした
「な、なんだ!?」
「ゾンビはもう動かない筈!?」
ウソップとチョッパーはお互い顔を見合わせ、歩くスピードを速める
だが音が離れることはなく、むしろどんどん近付いてくる
二人がついにダッシュ姿勢に入ったその時だった
「おい」
聞き馴染みのある低い声が背後からした
二人が振り返ると、そこには腕組みしながら仰向けになっているゾロがいた
よく見ると背中にある巨大な翼が地面に触れ、器用に身体を支えている
「どうしたんだよ、そんな顔して」
ゾロが呑気に声をかけると、右の翼がバサリと動いて二人に“一歩”近づいた
直後、スリラーバークに大絶叫が響いた
「ハァ…ハァ…」
「ビックリしたァ…」
「お前らビビり過ぎだ」
ひとしきり叫んで落ち着いた二人にゾロがツッコむ
直後、「誰のせいだと思ってんだああああああっ!!」というウソップの叫びをいただいたが
「にしても、なんでそんな移動法を使ってるんだ?」
ウソップの疑問にゾロは「ん」と自分の足を指さす
見ると膝のところで包帯が巻かれ、両足がくっついている
「それ、おれが巻いたヤツだ」
足の包帯を見たチョッパーが声をあげた
ゾロは生来の頑丈さ故に戦いの傷やダメージが残ることはあまりない
それ故に、医者として彼を心配しているチョッパーの言葉を無視して包帯を外し、勝手に鍛練するということはしょっちゅうなのだ
特に今回は謎の強いダメージを負っているため、絶対安静にしてて欲しい
そのため包帯で両足を固定したのだった
患者にする行為としては本来不適切ではあるが、こうでもしないと彼は動いてしまうと思ったからだ
「その足の包帯がほかのと違ってすげェ固くてよ。しょうがないからこうやってた」
そう説明しながらロは自身を支える翼を上下させる
器用に動く様は腕立て伏せだ
どうやら仲間達の知らないところで翼も鍛えていたらしい
「なるほど、理由はわかった」
ウソップはそう言うと大きく息を吸い、
「だからって、そんな移動法使うなああああああああっ!!」
とおもいッきり叫んだ
その後、ゾロの包帯は「あんな怖い移動はするな!」とチョッパーによって外された
だがそれ以降、ゾロが翼も鍛える様子がサニー号のあちこちで目撃されるようになった