待てるない
もろもろ発表される前に書いとけ精神
アオイが明日からキタカミの里というところにしばらく行くらしい。
学校の行事とはいえ、パルデアにすらいなくなるのは寂しさより自分がまた取り残される不安が強くて、年上なのに情けないとか、ガキじゃねえんだからとか、一人は慣れてたはずだとか色々考えたけどやっぱりダメだった。
好奇心旺盛なアオイのことだからきっと毎日が楽しくて仕方ないだろう。それも俺にとっては置いていかれるような気がして心の奥がギュッと詰まる。
「…ちゃんと毎日飯食べろよ、変なことに巻き込まれるなよ」
ママみたいとアオイは笑うが、どちらかというと離れたくない子供じみた強がりだ。
「私はちゃんと帰ってくるよ。たくさんポケモンや美味しいものを知って、いつかペパーと旅行したい。だからこれは未来のポケモンを治す料理人のお手伝いだよ」
アオイは約束を違えない。
それは欲しい言葉をくれる母親のようだ。
俺の母ちゃんが最後に約束を守ってくれたのはいつだっただろう。
「毎日連絡するからね!」
「…おう、待ってる」
あいつが言うから待ってみる。
行かないでくれ、を飲み込んで俺は信じることにした。
向こうに着いた初日からテンションが高くて苦笑いしたその翌日の夜、電話が掛かった。
『こんばんは、今何してるの?』
「課題終わったから漫画読んで寝るところ」
『そっかあ』
今日はどんなことをした、新しいポケモンに出会った、向こうの郷土料理をご馳走になった、と楽しげに語るアオイは昨日よりも少し落ち着いている。
『あのね、こっちのご飯もすっごく美味しいんだけど…その、』
「さっそくホームシックちゃんか?」
『うーん…うん、まあそんなところ…?』
寮にいてもそんな素振りは見せなかったから意外だなと思った。
『たった1日しか空いてないのにペパーの料理が恋しいなあって』
今きっと俺は人に見せられないくらいすげえ顔してる。今日は電話にしといて良かった…。
「帰ってきたら嫌と言うほど用意してやるぜ」
『やった!楽しみ!』
帰ってきた時のリクエストを聞いたり雑談して、ほどほどの時間におやすみと言い合って電話を切る。
「…あー…」
待てるだろうか。というか今日は眠れねえ…。
これはもう発散するに限る。
徐に立ち上がって冷蔵庫を物色。
深夜だから音は抑えめにして焼き上げたケーキは翌日留守番組のネモとボタンのオヤツになった。