強欲
ふたビビ×鰐 ヤる前に終わる
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ずいぶん長い出張だ。王下七武海がどういう仕事なのかビビはよく知らないが、クロコダイルは時々アラバスタを空ける。それにしても今回は長い、ような気がする。
(あの人を抱くようになってから、ここまで会わないのははじめてかもしれない)
あの男が妙に人を誘うような所作をするせいで、しょっちゅう体を求めてしまう。それに、ろくな抵抗もしてこないのだ。力任せに抗えばいいものを、あるのは罵倒だけ。それだってしばらく触れば甘い悲鳴に呑み込まれて、先を強請られているのと変わらない……。
(わ、私ったら)
恥じらう乙女の顔で、下半身がずんと重くなった。
それから数日後。
仕事を終えたらしい彼とすれ違った。疲れたのか、いつもより重たげな所作。揺れるコートを目が追って。
目が合った。
どろりと煮詰めたような、欲情した視線。
腕を引いていますぐ押し倒さなかった自分は相当に忍耐強い、とビビは自分を褒めてやりたかった。
「呼んでねェ」
ベッドサイドで男は形だけの抵抗をはじめる。これはいわば前戯のひとつとビビは認識するようになった。だが今回は、いつもより力ない。
コートも葉巻もそのまま。けれど縋るような視線で、ベッドに腰を下ろして。誘っていないなんて、よくもまあ言えたものだ。そのまま見つめて何もしなかったらどうなるのだろう。耐えられないのは自分もだから、しないけれど。
「そんな顔で。あなた、自分がどんな目をして私を見てるか、わかってる?」
葉巻を唇から抜いて、灰皿に潰してやる。咥えるものをなくした唇は半開きのまま、物足りないと赤い舌を覗かせる。そこに二本指を差し入れる。
「ン、む」
「舐めて」
ゆっくりと重心をかける。二人分の体が倒れる。水音が鳴り、熱い舌が懸命に指を舐める。
「れろ、ン………」
褒める代わりに少し引っ張ると、その背が少し震える。どろどろの瞳が睨む。
「ン……♡」
「だれにもいじめてもらえなくて、持て余してた? あなた、ちゃんと私がいなくてその体を宥められたのかしら。そのあたりの男の人をあんな目で誘っていたら……」
ふるふると首を横に振られる。舌の表面を指で撫で、上顎を擽ってやると、ひときわ甘く鳴かれる。スラックスに覆われた太い腿がもじもじと擦りあわされるのを見て、ビビは瞳を細めた。
「もういいわ」
ちゅぱ、と音を立てて指が引き抜かれる。すっかり紅潮した男の顔を覗き込む。
「口に欲しい?」
「あ…」
「それとも」
ぎちぎちの太ももを、つうと指でなぞる。それだけで期待に震える体は、この男の振る舞いに反してとびきり素直だ。
「どこに欲しいか、言えたらあげる」
ああ、と熱い息が男の唇から零れた。その視線がビビの足の付け根を見て、ごくりと喉を上下させる。ナイトガウン越しにもわかる膨らんだそれを、咥えこみたくて堪らないと。言葉より先に、その表情のすべてが欲しがっている。
のろのろと男が自身の両脚を開いて見せるまで、あと数秒のことだった。