強すぎる陽光は影さえ残さず
※ルフィ×ホーキンス
※バレンタイン&監禁もののMIX
※解釈違いとかいってはいけない
船長室が欲しいといわれたときあるものはようやく船長としての自覚ができたのかと喜び、あるものは若干の寂しさを覚え、またあるものは小さな違和感をもった。
それでもみな好意的に捉え要望を聞きできる限りの技術でもってその通りの船長室をこさえた。
いくつか気になる要望はあったが出来に喜ぶ船長にそんな疑問はすぐに吹き飛んだ。問い詰めればよかったと後悔するとも知らずに。
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「ワラ男~メシだぞ!!」
「……」
にこにこと太陽のように笑うルフィは両手に山盛りのパンケーキを持って駆け寄ってくる。
ふわふわの生地に新鮮なフルーツとチョコソース。
朝から食べるには少し重いがルフィにかかればそれこそ朝飯前だ。
「今日はな!ばれんたいん?っていう好きなやつとチョコ食う日なんだってよ!だからワラ男とチョコ食いたかったんだ」
「……」
「ワラ男はよ!全然食わないんだから少しでもかろりー?の高いもの食べたほうがいいらしいからちょうどいいらしいぞ」
「……で」
「ん~なんだ?」
「……外で、たべたい」
「ダメだ」
先ほどまでの笑顔はどこにいったのか何の感情も浮かばないその顔は普段の彼を知っているものがみれば恐怖を覚えるほどだろう。
「ワラ男は泳げないんだから海に落ちちまうかもしれないだろ。敵が襲ってくるかもしれねえし外はダメだ。ここで食おう」
「……」
「にしし!大丈夫!ワラ男はおれが守ってやるからよ!な、メシにしようぜ!」
誰もを照らす笑顔を浮かべて大きく切り取ったパンケーキを口元にもってくる。
小さく開いた口でゆっくりと飲み込むそれはたしかにおいしいのに少しも心を動かさない。
彼に悪気はないのだろう。
守りたいという善意と一緒にいたいという好意だけがある。
それがよけいにおそろしい。
部屋の外に出さないのも海楼石のフィンガーブレスレットをはめたのも同意なく攫ってきたことすらもすべて善意なのだ。
食事をするたび返事をするたび表情を変えるたび罵倒すらも最後には話せてうれしい反応してくれてうれしい一緒にいてくれてうれしいと。
『外に出たい』
それ以外はすべてに笑うのだ。
向けられるすべての好意がおそろしい。
このおそろしいという感情が薄れていくのがなによりもおそろしい。
「うまいだろ!まだまだあるからな!」
多くのものを救ってきた戦士は笑う。
クルーたちの説得も元同盟相手の忠言もはじめて恋した相手の懇願も無視して。
すべてを笑顔で握りつぶして。
「いっぱい食えよ!食い終わったら一緒に昼寝しような!!」
愛は狂気だ。