幻覚
――ハローマイフレンド、おヒマ?
「状況をよく見ろ! 論文締切り! 明日! どう見てもおヒマじゃないシング!!!!」
――残念。脱稿したら超ウルトラスーパーデラックストランプタワー建てよう。
「脱稿してもそんな暇ないわ!!」
――また前回みたいにブレイクダンスで忙しくなるから?
「うるさいあの時の事は忘れろ! また首チョンパするぞ!」
――ところでアルミニウス、今日はクッキー持ってきたんだけど
「!! █████のクッキーがあるのか?! 僕も食べたい!!」
「ンオアーーーーーーーー!! お前どこから出てきとるんじゃ!」
「? 見れば分かるだろう? この穴からさ!」
「『この穴からさ!』じゃねーーー!! 人ん家の床に穴を開けるな!!」
「なんだいアルミニウス、君まで頭の固い連中みたいに『女らしく淑やかにしろ』とか『家で料理か裁縫でもしてろ』とか言うつもりかい?」
「そういう問題じゃなくてだな! 強度とかいろいろ」
「それなら大丈夫! ここの床下には元々空間があったからね。僕が掘った訳じゃないからそうそう簡単に崩れたりはしないさ」
「ハァ?! どうなってんだこの家の構造!! いやそうじゃなくてだな! 書斎に君が居るところを妻に見られたりしてみろ、要らぬ誤解を招きかねないし」
「それも大丈夫!! 奥様にはもうご挨拶を済ませたからね!」
「ヘァ?! つ、妻は何て……」
「『今後ともあの人と仲良くしてあげてくださいね』って」
「我が妻ながら器デカ過ぎシング!! ヘルちゃん逆に心配なんだが?!」
「そういうわけで、何も問題は無いのさ。ほら、早くクッキーを食べよう! お茶は僕が淹れよう。アルミニウス、お台所借りるよ」
――今日のは自信作。2人ともいっぱい食べて。
「……いや、おかしいだろこの状況」
「まだ言ってるのかい?」
「だって、ありえないだろ」
「分かったよ、じゃあ次はドアから入る。これなら問題ないだろ?」
「いや、そうじゃなくて…… そもそも……」
――そもそも?
「私とお前が出会った時には、お前の奥方は、もう」
――…………
「それに、私だって」
……ごめんね。ただ、ちょっとごっこ遊びがしてみたくて。
「…………」
このまえ孫の所に遊びに行ったら、すごく楽しそうだったから。
「そうか」
あの子にも、人間の友が出来たんだよ。
「……そうか」
君達が同じ時間を生きてたら、あんな風だったのかなって。
ちょっとだけ見てみたかった。
うん、でもそうだね。もうやめとく。スイッチ切るね。