幕間・稀少種の捕獲
虚夜宮
「滅却師」
上方の壁にあいた穴から矢を放った石田の姿に、桜色の髪をした破面は狂気の笑みを張り付けて腕を広げた。
「あの売女と戦った稀少種か! ハッ! まさかもう一人がわざわざ出向いてくれるなんてね!」
「…………もう一人?」
興奮した様子の破面がこぼした言葉に、石田が怪訝そうに眉を顰めて訊き返す。
その言葉に破面は石田を煽るような調子でカワキの訃報を告げた。
「あぁ、良い事を教えてやろうか? 君達の仲間に女の滅却師が居ただろ? あっちは十刃の一人に殺されたそうだよ」
「————!」
「……カワキさんが?」
既に室内に居た恋次が瞠目する。石田が信じられないという口調で呟くと、破面は下卑た笑顔で更に続けた。
「丁度回収に向かわせているところでね。稀少種の回収は確実に行うようにと命じてある……もうじき此処へ届くだろうさ!」
「————……いいや、君達は彼女のことを甘く見過ぎだ」
「全くだぜ……藍染から尸魂界でのカワキの様子を聞かされなかったのか?」
動揺は一瞬。二人はすぐに破面の言葉を否定する。その言葉に、破面はピクリと眉を動かして表情を消した。
石田は破面に、お前の無知を教えてやるという態度で笑って告げた。
「“回収”だって? 笑わせる。カワキさんが大人しく“回収”なんてされる訳がない。今に回収失敗の報告が届くことになる」
馬鹿にされたように感じ、怒りで破面の視線が剣呑さを帯びた。だが、二人に怯む様子はない。
恋次が石田に続いて、忠告するかのように言葉を発した。
「せいぜい気ィつけろ……手負いの獣ほど恐ろしいモンはねえぞ」
「……ご忠告どうも。だけど、現実逃避はそこまでにしてくれ」
石田と恋次の発言をただの現実逃避だと切り捨て、破面は会話の主導権を取り戻すように二人を鼻で笑った。
「……何にせよ……」と元の調子を取り戻した破面は、再び先程までの興奮を思い出したようで両手を広げて歓喜した。
「卍解の使い手に! 滅却師が二人! 僕は運が良い!! ヤミーの奴ならスエルテと喚くところだろうな!!」
「そうだね」
「!」
上方に居た筈の石田が一瞬で破面の背後に回った。
己の背後——聞こえる筈のない場所から声を掛けられ、驚愕した破面が振り返る。
「ヤミーってのがどうだかは知らないが」
ゼーレシュナイダーに指をかけた石田の姿が、破面の視界に映った。
石田がゼーレシュナイダーをつがえて弓を引く。
「君みたいに隙だらけの奴と戦えて、僕はスエルテと喚きたい気分さ」
***
石田&恋次…「カワキがそう簡単に死ぬ訳ないだろ」と思ってる。尸魂界篇で白哉を相手に3回突っ込んで行った女への信頼は厚い。
ザエルアポロ…「滅却師! 稀少種じゃないか! 絶対確保して持って来い!」とルドボーンに命令済。お目が高いけど、無茶振りが過ぎる。
カワキ…残りHP4の重傷を負って瀕死。ザエルアポロにめっちゃ狙われてたことは知らない。