帰ってきたセクアニビッチ
森の中、2人の男女がキツネを追っていた。女は弓矢を持つ男の後ろに立ち、キツネを狩る彼を見守る。
「師匠、キツネ狩りに何の意味が?」
「トーリカ。命を殺した感覚はありますか?」
「そうですね…弦の振動しか感じませんね」
師匠と呼ばれた女は、トーリカの返答に満足していないようだった。2人は食事を済ませた後、一息ついてから共にベッドに入る。
「トーリカ…今回の仕事はデビルハンターの仕事ではありません」
トーリカと情熱的に結ばれた後、師匠はおもむろに口を開いた。掛け布団から身体を出し、ベッド脇に置かれた棚から彼女は一枚の写真を取り出す。
「この16歳の少年を殺すのが仕事です」
師匠は写真に写る、頭からチェーンソーを生やした少年の姿を、トーリカに示す。
「まぁ。…はぁ、俺はできますよ」
「トーリカ。これから私達は夕食のキツネにした事を、16歳の少年にします」
トーリカの気の抜けた返事を聞いた師匠は表情を消し、デンジ殺害の残酷さを強調するように、一つ一つ手順を述べていく。しかし、トーリカは眉ひとつ動かさない。
「師匠…俺は殺せます」
師匠の手解きで女を知ったトーリカは、ある望みを持った。
「お上の方々が約束してくれた…次の仕事が終われば、師匠はデビルハンターをやめられる…」
師匠は後6年しか生きられないのだから、もっと人生を楽しんで欲しい。思いつく具体例は多くないが、旅行でも食べ歩きでも好きなことをやって、師匠には平穏な余生を過ごしてほしい。
「….トーリカはどうするのです?」
「俺?俺は…独り立ちします。デビルハンターとして」
師匠に守られるのではない、師匠を守れる男に、トーリカはなろうとしていた。
日本にやってきた2人はバーガーショップの店内で、ターゲットの少年を捕捉。多くの護衛に囲まれている少年に、師匠はすれ違いざまに大きな釘で傷をつけた。これは呪いの悪魔の釘であり、代償は重いが4回刺せば相手の生命を奪うことができる。
3回は師匠が既に刺している。師匠は最後の1回をトーリカに任せ、これをテストとした。
「合格すれば私と契約している悪魔達を、トーリカに紹介しましょう」
初めて食べるというハンバーガーの味に喜ぶ師匠の姿を見て、トーリカは何としてでも最後の1回を成功させようと決意した。