帝王と凡人

帝王と凡人

凪翔太郎、御影臨王

「お前がうちの弟とよろしくやってる相棒とやらの兄か?」


「...え、どちら様?」


校風に準えて少しばかり崩した上着を直しながら校門から出ると、少しばかり髪の伸びた紫髪のイケメンが飛び出て来る。服の隙間から見える肌は快活そうに見えて、即座に運動部に所属していることが窺えた。

翔太郎は突然の来訪に目を見張らせながら相手の動向を伺う。よく見れば弟の相方によく似ている。全てが似ているわけではないが、要所要所が彼を彷彿とさせる。白宝高校の学生服を着ているから余計に。


「聞いているのかおい」


「アッハイ、...いやですからどちら様?」


「なんだ、分からないのか」


似ている顔なのになんだこの傲慢さというか振り回し方は。知るわけないでしょうアンタのこと。似ているのに性格似てないんだ。

ツッコミと愚痴を溜めて息で吐き出しながら、もう一度相手を見た。


「知りませんよ。初対面でしょ、貴方と僕」


「だが玲王と関わりがあると聞いてな。それに玲王が気に入っている弟にも兄がいると言っていたから、その兄とやらを見るためにわざわざここにきた」


「...玲王?じゃあ血縁関係者?」


そうだとも言わんばかりの笑みでふんぞり返りながら男は頷いた。なるほど、そりゃ似ているわけだ。何となく子供っぽいところが似てる。


「じゃあお兄さんとか?弟って言ってたし」


「逆になぜすぐに分からない?聞いて理解すれば分かるだろう?」


「僕そんなに頭回んないからー」


リュックの中からスマホを取り出して時刻を確認する。時刻は15:42。5時からのタイムセールにはギリギリ間に合う時間だ。そしていつもなら部活動帰りのシロと玲王に合流する時間になる。

もう一度玲王の兄とやらを見遣る。


「それで、なんか御用?シロのことなら弟に聞けば良いじゃん」


「生憎嫌われたようだ。実際我(オレ)もなんか言われた。部活帰りに会おうとしたら避けられた。」


「何やらかしたのアンタ...?」


自称平和主義の弟に嫌われるor避けられる行動などどうやったらできるのだ。思わず相手を凝視してしまう。驚愕した顔を向けると睨み返されたので、そっと視線を逸らした。


「...まぁいい。それにしても普通だな」


「世間の7割はみんな普通だよ」


「弟の技術や性能はあんなに高いのに?」


「すごいよねシロ。面倒臭がらなきゃ嬉しいけど、そこがシロのいいところだし」


「随分と楽観的だな。いや、格の違いに慄いてるのか?」


「弟の成長は誰だって嬉しいでしょーが」


言動から玲王と彼の兄弟仲はさほど良くないのかもしれないと察する。名誉平凡一般人凪翔太郎、多少の空気は読めるし察しもつく。

もしかしたら、彼にとって玲王とシロの関係が面白いのかもしれない。


「貴方もそうじゃないの?」


「正直鬱陶しい。」


「ありゃりゃ」


全然違った。


「だがまぁ、お前の弟に興味はある」


「そっかー。それにしたってシロって御曹司引っ掛けるの好きなのかなー...っと、ごめん。そろそろ行かなきゃ」


「? どこに行く」


疑問の声を投げかけてきた玲王の兄に自身のスマートフォンの画面を見せる。画面を見た彼は、ますます懐疑な顔をした。


「...タイムセール?」


「一般人のオアシスだよ。カツカツなジリ貧生活を救う唯一の女神」


「何だそりゃ」


お前には分からんだろうに御曹司くん、と内心で毒を吐いて、彼を背後に歩き始める...と、後ろから足音が聞こえてきた。


「...え、なに。どうしたのお兄さんとやら」


「正真正銘玲王の兄だ。それに話はまだ終わってない」


「でも僕用事ある」


「じゃあ着いていこう。お前のような質素な生活を送って怠惰を貪り生きる庶民の糧が気になるからな」


「わぁ語彙豊富ー...まぁいいよ。じゃあ買い物付き合ってね、ちゃんと荷物持ってよ」


「なぜだ」


「主婦たちとの激闘を繰り広げるには体力が必要なの。んじゃあレッツゴー」


着いてくる玲王の兄を背後に買い物袋と小銭を取り出す。ちっくしょう15分オーバーじゃん、と言ちって早歩きで進む。


ー急がねばなるまい。なぜならばそこにオアシス(タイムセール)があるからだー


翔太郎は急いだ。





ーーーーーーー

(スーパー内、会話のみ)


「はいこれカゴに入れて。あとこれ」


「なんだこのシャカシャカいうやつ」


「ふりかけ、弁当に入れるから。」


「というかお前名前なんだよ」


「凪翔太郎」


「地味だな」


「そんなこと言うのやめなさい、親が泣くし僕は気に入ってるからいいの」


Report Page