〇〇屋
ゾウを目指すゴーイングルフィセンパイ号。
その甲板にて。
「おい」
「あれ、トラ男くん?」
「ん?どうしたトラ男」
「に……ウタ屋、身体に違和感は無ェか」
「違和感?うーん……
無いと言えば無いけど、違和感だらけと言えば違和感だらけって感じかな。自分でもよく分かんないや」
「そうか」
「何だトラ男、ウタのこと心配してくれてんのか?」
「おれは医者だ。本来なら義理は無ェが、今のお前らは同盟相手だ。足手纏いを増やされるわけにもいかねェ。
念のため身体の中を見ておいてやろうか?身体さえ慣らせばお前も戦えるんなら、戦力は多いに越したことはねェ」
「だってよ。どうするウタ?」
「それじゃ見てもらおっかな。足手纏いにはなりたくないし、今自分がどんな感じなのかも知っておきたいしね」
「分かった。おいバリア屋、船室を借りるぞ」
「ん!?おいトラファルガー、部屋を借すのはいいが、ウタ先輩に妙なマネしたらタダじゃおかねェべ!?」
「当たり前だ……おれにそんな趣味はねェ」
──────
「…………」
「どうかな?」
「……多少栄養不足の懸念があるが、概ね良好だ。お前も幼馴染に似て頑丈らしいな」
「よかった、問題無いんだね」
「あとは基本的な生活に慣らしていけ。そこまではおれが面倒見るところじゃねェ」
「ありがとう、トラ男くん優しいんだね」
「感謝なんてするな、同盟が終わりゃ敵同士だ。さっきも言ったが、これは戦力を減らさないための……」
「……トラ男くん」
「何だ?」
「さっき、人形屋って言いかけたよね?」
「!?
そ、それは……悪かった」
「ううん、いいんだよ別に。今までもそう呼ばれてたし、すぐには慣れないよね。私だってまだ実感ない部分あるし」
「…………」
「でも、ウタ屋はちょっと安直じゃないかな?」
「……どう呼ぼうとおれの勝手だ」
「ちぇ〜、残念……あ、そうだ。ついでにちょっと見てほしい部分があるんだ」
「どこだ?」
「ここ」
「……喉か?」
──────
「お待たせ〜!」
「おーウタ!どうだったトラ男?」
「しっかり飯を食ってちゃんと生活に慣らしていけばすぐに戻れる。お前らでちゃんとサポートしてやることだな」
「そっか、ありがとなトラ男!」
「どいつもこいつも礼ばっか言いやがって……まったく」
「トラ男くんお礼言ったら怒るんだよ、変なの」
「……ん?ウタ、お前何かさっきより声綺麗になったな?」
「あ、分かる?トラ男くんに喉も治してもらったんだ」
「ついでだ、ドレスローザで無理したせいで少し傷んでた。1曲歌うぐらいなら問題は無ェが、基本は安静にして……」
「よーし!早速歌っちゃお〜!」
「安静にしてろって言っただろうが!!」
「えー、1曲ぐらいいいって言ったじゃん!今さっき!」
「……チッ、勝手にしろ」
「やった!じゃあ歌うね!ねえみんな、何かリクエストある?」
「お、おれが皆様方を差し置いてリクエストなんて恐れ多いべ〜!!どうか皆様方を優先して……」
「ウタの歌か……ドレスローザで聞こえはしたが、カゴを押すのに必死でちゃんと聞く余裕はなかったな」
「でもよォ、あの歌が聞こえたらスーパーすげェ力が湧いてこなかったか?」
「ええ、身体の芯から奮い立つ様だったわ。私はあの歌をもう一度聴きたいけど……皆はどうかしら?」
「おれもそれがいいな!ルフィはどうだ?」
「ああ、おれも聴きてェ!ウタ、頼んだ!」
「りょーかい!じゃあ行くよ〜!
……ってちょっと!?どこ行くのトラ男くん!」
「いや、おれは別に歌は……」
「いいから聴いてけって!連れねーヤツだなお前!」
「チッ……」
「じゃあ、行くよ!」
♪〜〜♪〜〜
♪〜♪〜〜〜♪〜
「おお……」
「こりゃあ……」
「しっししし、スゲェだろウタの歌!」
(…………ベポが好きそうな歌だな……)
──────
「結局4曲も歌っちゃった……喉痛い……」
「言わんこっちゃねェ。嬉しいのは分かるが忠告しといてやる、医者の言うことはちゃんと聞いとけ」
「ごめんなさい……」
「……本来は怒る義理も無ェんだがな」
「え?」
「何でもない。治療は終わりだ、今度こそは安静にしとけ歌姫屋」
「うん……ごめんトラ男くん……
…………うん?」
「何だよ」
「今私のこと何て呼んだの?」
「…………さァな」