少年少女のハロウィン
少女フェリジット「明日はハロウィンだよ!」
少年シュライグ「ハロウィン?」
少女フェリジット「仮装したら他人を脅していいっていうイベントだよ!『お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!』って」
少年シュライグ「言い方」
少女フェリジット「だからみんなに衣装作りたいんだ、シュライグは何がいいかな。ちなみにルガルは狼男で、キットは猫又だよ」
少年シュライグ「まんまだな。フェリジットのその格好は…」
少女フェリジット「一応魔女の服なんだ。ススで黒くなった布地でちょちょっとね」
少年シュライグ「ヘソが出てる」
少女フェリジット「いや〜生地が足りなくてさ…、変かな」
少年シュライグ「かわいいと思う」
少女フェリジット「えっ」
少年シュライグ「指、怪我してるな。縫ったときのか?」
少女フェリジット「ん?あーまあね。大したことないよ」
少年シュライグ「……俺の分はいいよ」
少女フェリジット「え〜っ?」
少女フェリジット「せっかくだからシュライグも参加しようよ〜」
少女フェリジット「行っちゃった…。まあ無理強いすることもない、かぁ…」
少年シュライグ「……」
――翌日――
少女フェリジット「あれ?シュライグそれ、自分で用意したの!?」
少年シュライグ「……見つかっちゃったか。そうだよ、マスクは医者に頼み込んで古いのを譲ってもらった」
少女フェリジット「背中のこれは…」
少年シュライグ「翼なんだ。そうは見えないかもしれないけど一応翼のつもりなんだ…」
少女フェリジット「大丈夫!ちゃんと翼してるよ!鳥人間の仮装だよね?」
少年シュライグ「仮装……、そうだな。そうだよ」
少女フェリジット「……シュライグ、どうしたの?」
少年シュライグ「……俺は一体、なんの気の迷いで鳥人間なんてチョイスしたのかな、ってさ。おかしいよな、ハリボテの翼なんて作って……。結局『仮装』でしかないのに」
少女フェリジット「………シュライグ、ちょっと来て」
―――――――
少女フェリジット「ひえ〜、高い……」
少年シュライグ「じ、自分で来たんだろ……。なんで屋根の上、しかもこんな高い所なんか……」
少女フェリジット「こ、このホウキね……。キットに改造してもらって、飛べるやつなんだよ」
少年シュライグ「おい、まさか……」
少女フェリジット「お姉ちゃんは妹を信じる!うおりゃーーーっ!!」
少年シュライグ「ちょ、まっ―――」
少女フェリジット「ぎゃあーっ!?」
少年シュライグ「―――っ、フェリジットは力抜け!!」
少女フェリジット「ピギャーーーーーーーっ!!」
少年シュライグ「こ――のぉ……!」
………
……
…
少女フェリジット「…………」
少年シュライグ「ぜーっ、ぜーっ、ぜー…」
少女フェリジット「………とととと、とべたでひょ……」
少年シュライグ「………落ち着けフェリジット」
少女フェリジット「すー…はー……」
少女フェリジット「シュライグすごいね!あんなすぐコントロールするなんて!シュライグが一緒に着いてきてくれなきゃ私」
少年シュライグ「そうだよ!もうこんな危ないことすんな!!」
少女フェリジット「………ごめん。ありがとう」
少年シュライグ「はあ…」
少年シュライグ「……初めて自分で飛んだ。推力はホウキ……というかキットのおかげだけど」
少女フェリジット「………私、翼が片方ないシュライグの気持ちはわからないけどさ」
少女フェリジット「補う手助けくらいは…できるよ。このホウキだって、本物の魔女のホウキじゃないけど飛べるもん。作り物ではあるけどハリボテじゃない、ちゃんとシュライグが飛べるような翼だって力を合わせれば…」
少女フェリジット「私思うんだ。例えば機械の翼で飛べたとして、それって生身の翼で飛ぶ以上にすごいことなんじゃないかな。だって感覚もわからない、完全に思い通りにならない翼で。重たい金属の翼で飛ぶんだよ?」
少女フェリジット「キットなら絶対そういう翼作れるし、シュライグなら絶対使いこなせるでしょ。私もできることならなんでもするよ」
少女フェリジット「あったかい翼があってさ。飛んで、私を助けてくれてさ。他の人がどう言うかなんて知らないけど、私にとってはシュライグは立派な鳥人間だよ」
少年シュライグ「………そう、か」
少女フェリジット「はー…、落ち着いたらなんかお腹すいてきちゃった。ダメ元で街行く人を恐喝してみようよ。ワンチャンお菓子貰えるかもよ」
少年シュライグ「言い方」
少女フェリジット「あ、ごめんねシュライグ…、さっき顔怪我してなかった?ちょっと見せて」
少年シュライグ「見せない」
少女フェリジット「あ、マスク着けちゃって…。顔見せてって」
少年シュライグ「見せない」