少年と初代聖女 前編

少年と初代聖女 前編


 教会の小部屋、二人の男女がベッドの上に座り、向き合っていた。数秒見つめあった後、少女が両手を伸ばした。


「いいわよ……来て……♡」


 しんしんと静かな月光が窓を通じて降りそそぐ。微かな光が、かつて竜だった少年と導きの名を冠する初代聖女を照らしていた。

 互いの視線が交錯するも、彼と彼女が見つめるのはドラグマを救うため、666代目の聖女エクレシアを救うためーーそれだけのはずだった。


「っ、ぐ……♡」

「アルバス君、大丈夫かしら……? どこか苦しいところがあったら言ってちょうだいね……?」


 褐色肌の少年は、歯を食いしばって衝動に耐えていた。彼らが取り込んだ媚薬は劇薬であり、芳香だけでも性的欲求が飛躍的に上昇するほどの効能を備えたものだ。


(なんだ……これっ、身体が……!)


 絶望を跳ね除け、諦める事を知らない少年と、絶望の権化たるマクシムスであっても彼女にはただ洗脳を施すしかなかった程の強い心を持つ、絶望に抗った初代聖女。

 劇薬に対しても必死に堪えようとするも、しかし今は耐えてはいけない時なのだ。


「大丈夫よ……初めてなんだもの、私に任せて……♡」

「あ、ああ……」


 初代聖女は、優しげに微笑むと彼の胸板へと手を触れさせた。簡素な寝巻きに着替えたアルバスの、両手を挙げさせると今度は裾を掴む。


「はい♡ ちゃんと脱げたわね♡」


 アルバスの上半身が、夜の空気に晒される。元々露出度の高い服装をしていた彼はあまり羞恥することはなかったがーー


「ふふ♡ おっきくしちゃってるわね♡」

「っ、あまり、見ないでくれ……」


 麻のズボンの中央部、屹立しているテントを見られるのは彼も恥ずかしかった。アルバスは隠そうと身をよじるが、クエムは愛おしげにそれを見つめると、つんっとそれを指先でつついた。


「うあっ……♡ やめてくれ……!」

「かわいいのね♡ それだけ紳士的なら、エクレシアちゃんの時も大丈夫そうね……♡」


 つついた指とは反対の手で、クエムはアルバスの白髪をゆっくりと撫でる。慈しむような視線と掌に、次第にアルバスの緊張もほぐれていくようだった。


「そう♡ あまり緊張してはだめよ……余裕を持って接してあげないとね……♡」


 つついた左手で、そっとアルバスのズボンに手をかける。彼を少しずつ押し倒しながら、もう片方の指もそっと、素肌と下着の間に走らせる。


「えいっ♡ ……わぁ、すごくおっきいのね……♡」


 するりとズボンとパンツを脱がし、クエムは丁寧にそれらを置いた。布の束縛から解放された男根が、大きくそそり立っていた。

 彼の肌と同じ色をしているが、先端はピンク色だ。色素が濃くなっている様子もない。自慰もまともに知らないであろう、とても純真なペニスだ。


「……異性に見られたのは……初めてなんだが……」

「ふふふ、やっぱり可愛いわね……♡ こっちは、こんなに強そうなのに♡」


 肉棒に少し顔を近づけ、クエムはくんくんと匂いを嗅ぐ。とても大きくたくましいが、少し初心な芳香がした。


「これから経験を積んでいけばいいからね……♡ それじゃ、次はあなたの番よ♡」

「え……俺の、番……?」


 再度、両手をアルバスへと差し出すクエム。しかし彼はドギマギとし、何をすれば良いのかが分からないと言いたげな様子だ。


「服が汚れちゃうといけないから……♡ はい、脱がせてくれないかしら♡」

「わ、わかった……!」


 頷いたアルバスは、クエムの黒いワンピースへと手をかける。肩紐に手を潜らせ、外側へと滑らせ、下へと降ろそうとーー


「もう、そこで止まらないの♡ 私に遠慮はしなくてもいいのよ? 一気に脱がせてちょうだい……♡」

「あ、ああ……!」


 胸元まで下ろした所で動きが止まるアルバスの両手に、自身の両掌を添えるクエム。下へと動かすように促すと、アルバスも覚悟を決めたようだった。


「ん……っ!」

「きゃ……♡」


 するりとワンピースははだけ、クエムの大理石のような素肌と、艶やかな2つの乳房、そして優美なブラジャーが晒された。


「ぁ……っ」

「やっぱり興奮してるのが恥ずかしいの? ふふ、これは媚薬のせいなんだから、もっとオープンにいきましょうよ……♡」


 アルバスの鼻と鼻が触れるほど接近したクエムは、彼を蠱惑するように視線を流し、更に下まで手を下ろさせた。


「ん……っ♡ ぱんつ、見られちゃったわね……♡」


 精緻な黒のレースが編み込まれたクエムの黒い下着が、月光に照らされていた。その中心部はしっとりと湿っており、わずかに震えている。


「……その……初めて見たから、勝手がわからない」

「そんな心配しなくてもいいってば……♡ ほら♡ もっと、脱がせてくれないかしら……♡」


 クエムはアルバスへと足を伸ばす。黒いタイツと下着の間、白い太腿が覗いている領域へ指を伸ばさせると、彼がタイツを掴むのを待った。


「あら、タイツや手袋はつけたままの方がいいかしら? そっちの方が興奮するかも……♡」

「いっいやいい、大丈夫だ……っ」


 扇情的に微笑むクエムは、それもそうね、初めてなのだし全部脱いじゃいましょうか、と甘く呟いた。

 続いて、右手のシュシュと左手の長手袋も同じように脱がせる。簡単な事だが、彼に学ばせるためでもあり、同時に自分も性的に昂っていくようだった。


「まだ残ってるわよ……♡ チョーカーも外して……♡」

「ああ……わかった」

「んうっ♡ くすぐったい……♡」


 首元、チョーカーもそっと外させる。続いて頭のベールも脱がせようと、アルバスは後頭部に手をーー


「えいっ♡」

「わっ! く、クエムさん……何を」


 下着姿のクエムは、アルバスにしなだれかかった。ブラジャー越しの乳房が押し付けられ、アルバスの欲情を煽る。

 クエムは、彼の裸の肢体になでなでと指を走らせながら、耳元で囁いた。


「ブラジャーの外し方……♡♡ これも、覚えてもらわないとね♡♡」


 ハグをしながら、彼の肩に顎を乗せる。アルバスにうなじを晒し、ブラジャーの巻きついている背中を指差す。無言で首肯したアルバスは、ホックへと指を走らせた。


「結構難しいから……そこは覚えておかないといけないところで」


 カチャリ。


「えっ」

「で、できたのか……?」


 ホックは解錠され、クエムのブラジャーはふらふらと揺れていた。


「すごい……器用なのね、アルバス君♡」

「あ、ありがとう……機械の操縦とか、そういうのが得意みたいで」


 赤髪の竜とは対照的にとても指先が器用な彼に、にこりとクエムは微笑む。


「じゃあ、ご褒美よ……♡ はい。どうぞ……♡」


 アルバスにブラを掴ませたまま、そっと身体を離すとーークエムの乳房が、ぷるんと揺れた。


「あ……!」

「これも初めてかしら? それとも、エクレシアちゃんのをうっかり見ちゃった事はある……?」


 真白い素肌の中心部、ぴんと桃色の乳首が勃っていた。淫靡に露出されるそれを、たぷたぷと誘うように自分で揺らした。

 指先を伸ばしかけたアルバスを、クエムはそっと押し留める。


「まだだーめ♡ こっちもほら、脱がせてちょうだい……♡」

「……っ、そっちは……」


 ごろんと寝転がったクエムは、両脚を開いてそれを見せつける。ぐしゃぐしゃに濡れた黒のレース、小さなリボンが結ばれた際どい下着。


「っ……!」


 ごくり、とアルバスの喉が鳴るのがわかった。彼の理性も、もう限界に近いのだろうと。


「いいわよ……♡♡ これも、脱がせて……♡♡」


 同時に、クエムの理性も限界に近かった。

 熱っぽく輝く赤い瞳で、アルバスへとねだるように視線を送る。


 アルバスは、そっと下着に手をかけた。

 

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